元地下アイドル当事者が書いた本ということもあり、主観に拠った礼讃本か、あるいは裏事情を暴露したスキャンダラスな内容かと思っていた。
しかし、実際はアンケートをベースにした資料となっている。筆者の視点も、地下アイドルだった自分を研究対象として俯瞰して観察しているような冷静さを感じる。
自営業の人が読んでも参考になりそうな、ある意味でビジネス本としても読める内容。
病んでいて周囲とのかかわりが持てない女の子と、下心で近寄るおじさんで成立しているシーンだという偏見があったのだが、浅はかだった。
アイドルになりたい子は、テレビに出て有名になって経済的な成功も目指しているのだと思い込んでいたのだが、青春の1ページとして通過するだけで満足する子も少なくないと知った。ある意味で部活のようなものなのかもしれない。
たしかに高校球児の全員がプロ野球を目指しているわけではないし、高校野球ファンがプロになれな高校生を応援しているのも変な行為ではない。それは感覚的に理解できる。
地下アイドルも「高校球児」に近い存在なのだと仮定すれば、彼女たちとファンの関係も理屈では理解できそうだ。
ファンにとって彼女たちの価値は「存在」なのだ。歌や踊りは付属物であって、若さを燃焼する姿が「価値」なのだ。
<アンダーライン>
★★★★★
「私は両親のアイドルだったから、大人になってもアイドルをやるのが自然だと思った」
私自身も周囲の友人と比べて両親と仲が良かったので、自分の承認欲求の度合いが同世代の友人たちより強い可能性を考えた。
★★★★
ここから得られる帰結は、地下アイドルの子たちが、両親から存分に愛情を受けて承認されて育ってきたといこと
★★★★★
地下アイドルの8割がいじめの被害に遭った経験がある。一般の若者でいじめにあった人は4割
★★★★
アイドルに興味のなかった私が8年も地下アイドルの世界を居場所にしてきたのも、地下アイドルの女の子たちならお互いの傷が分かり敢えていたからもしれません
★★★
承認されたい地下アイドルと、認知されたいファン
★★★
ファン同士は同好の士とした仲が良い
★★★
女の子と距離を縮めるためにお金を払うのがキャバクラ。アイドルとの関係を保つためにお金を払うのが地下アイドル。
★★★★★
彼女たちは、本来自分がいたはずの幸せな空間を、現場に求めているのかもしれません。地下アイドルという他者からの承認を得る仕事をすることによって、居場所を取り戻そうとしているのが、地下アイドルの世界に足を踏み入れてきた女の子たちだと思います。
★★★★★
あまり可愛すぎない子の方が売れるのは、恋愛をしてファンを裏切る可能性が低いから。
★★★★
スクールカーストの最上位にいる子は、地下アイドルの世界に足を踏み入れない
★★★★
何が人気に繋がるのか分からない「正解の無さ」は成功したい地下アイドルの精神を追い詰める
★★★★
「いいね」の数を増やしやすいのが肌の露出
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面白くない仕事は面白い仕事に全くつながらない
★★★★★
何をしたら人気が出るのか分からない中で、誰も喜んでくれないよりは、誰か一人が絶対に喜んでくれることをしたほうが良い
★★★★★
どれだけ応援されても、私ではない女の子が応援されている感覚