眞木準氏の著書『ひとつ上のアイディア。[新装版]』は、単なる思いつきを超えた「アイディア」の本質と、それを生み出すための思考法について深く考察した一冊です。
### アイディアの定義と本質
著者は、「アイディア」を単なる思いつきではなく、「情報に吹きこまれた『イノチ』」と定義します。アイディアは、これまで存在しなかったものを生み出し、新たな認識を発見する力を持つ「生命体」のようなものだといいます。この考えは、著作権や特許といった知的財産が重要視される現代において、その価値を再認識させてくれます。
また、アイディアは突然生まれるものではなく、想像、知識、経験などの情報が脳内で結びつき、スパークを起こすことで新しい概念が生まれると述べられています。そして、その語源は、プラトン哲学の「イデア」にあると解説し、単なる概念ではなく、理性によって認識されるべき実在や原型としての意味合いを強調しています。
### アイディアを生み出すための思考法
本書では、具体的なアイディア発想法として「2時間クリエイター法」や「アイディア・リトマス試験」が紹介されています。特に印象的なのは、「日常」「恋愛」「読書」「プチ悩み」「全人生」という5つのフィルターを使ってアイディアを検証する手法です。これは、アイディアがその人が生きてきた人生の情報からしか生まれないという著者の考えに基づいています。
アイディアは「つくりだすものではなく、見つけるもの」であり、そのためには、対象を深く理解し、さまざまな角度から見る「視点」を設定することが不可欠です。アイディアは、論理的に無理やり作り出すのではなく、ポジティブな心と身体のコンディションが整ったときに、自然と「受信」されるものだと述べられています。
### アイディアの目的と価値
著者は、ビジネスにおけるアイディアは「モウカル」ことが求められるが、それはあくまで結果であり、本来の目的は「タスカル」(救われる)ことにあると語ります。また、いいアイディアとは、個人的な作品へのこだわりではなく、プロジェクトの成功、そしてひいては世の中を良くすることに貢献するものであるべきだと主張しています。
いいアイディアは、他者と違うものであり、流行を追うのではなく、自身の趣味や興味から生まれるオリジナリティにこそ価値があると説かれています。そして、本当にいいアイディアは、メモをする必要がないほど強烈なものであると述べています。
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本書は、広告クリエイターとしての経験に基づきながらも、あらゆる分野に通じるアイディアの本質を教えてくれます。アイディアは、単なる「思いつき」ではなく、世の中をより良くするための「イノチ」であるという著者の視点は、私たちに新しい創造へのヒントを与えてくれます。