「神々の父オージンは、いつも賢くて、正しいわけではなかったんだ」
オージンは、すべての神が彼の話には耳をかたむけるほどの“神のなかの神”。しかし、別の神が誤って人間を殺してしまい、遺族への賠償をするとき、神が持つ知恵を与えればよかったのに、それを惜しんでお金による取引で済ましてしまう。神が金で物事
...続きを読むを解決した以上、金に執着する強欲女でも神の国への入国を拒否できなくなる。
また、ヴァーニル神の一人フレイは、神と敵対する巨人の国の娘にひとめぼれし、その娘を得るために神の国を守るための大切な武器となる剣を手放してしまう・・・
永遠の平安を願うのは、神々も私達も同じ。
だが神々のちょっとした行為が、その時は自分や周りも正しいと信じ、何事もなく過ぎても、実はその行為をしたのは間違いで、完全無欠なはずの神々の運命に、痣(あざ)が徐々に広がるように不吉なきざしが覆い、ついには寒波などの天災を契機に勃発した“神々のたそがれ”(=最終戦争)としてすべての不吉なきざしが初めからそうなるはずだったかのようにひと固まりに結合して神々への大きな厄災として降りかかり、神の国は滅ぶ。
完全無欠でない私達人間も、日々失敗を繰り返し、それが時には大きな悪い結果として自分の身にふりかかり、自分の運命や巡りあわせなど、自分の力でどうしようもない因果を呪ってしまうのだが、神々の多くの所業からも、生きる以上は不可避な業(カルマ)の存在を読み取ることができる。
この本の物語はある意味ファンタジーだが、そのエッセンスには、等身大の人間の所為が詰まっている。
(2009/9/13)