「 シ ュ ワ リ ズ ム 宣 言 ! ! 」
映画愛を叩き込んだ、叩き込みすぎた傑作Web漫画が遂に書籍化。
映画をネタに話す漫画は最近では「木根さんの一人でキネマ」や「おやすみシェヘラザード」など。どれも面白いが、今作の特徴は群を抜いて濃すぎるキャラクター達だろう。
「シュワルツェネッガーは
...続きを読む最高だ! コマンドーやT2だけじゃなく他のも見ろ!!!」
「走るゾンビなんてゾンビじゃねぇんだよォォォォ!!!」
「黒澤やキューブリックを理解できないやつは死ねばいいんだよなァ…」
「パンツァー・フォーーーーッ!!!!」
彼らはダベり、話に頷き、ときにぶつけ合い、楽しむ。各々が意見を持ち皆が自身の体験を楽しんでいる。登場する作品たちを知らなくても解るぶつけ合いは楽しい。まるで本当に彼らの横で話を聞いているかのようだ。もちろん、知っているタイトルがあればもっと楽しめるだろう。
しかし本作の主役は彼らではない。映画の話題も、彼らの物語も違う。主役は、彼らが語る思いだ。彼らが……いや、我々が映画を見た感想や考察、その思いが本当の主役なのだ。
彼らの感想は様々で、否定的な意見もある。作品が貶されて不快に思う事もあるだろう。例を挙げると「村山」というキャラだ。こいつは非常にムカつくヤツで、ダベって話している時にふらりと現れてはイチイチ否定的な意見をぶつけてくる。否定的だけならまだ良いが、自身が信仰する映画と比較しては俳優から監督から全てをボロクソに貶すこいつは、現実でもブン殴られるであろう事は想像に難くない。
だがコイツのおかげで「そういう意見をもつ人間も居るよな」と思い出させてくれる。
自分が感じた心を改めて確かなものにしてくれる激辛のスパイスのようなやつだ。出る度に脳内でボコボコにするキャラクターだけど、愛すべき馬鹿の一人でもある。ムカつくけど。
彼らを通して我々の思いがそこに溢れてくる。ついニヤリとしてしまう寝られた構成も映画愛の賜物だ。きっとお気に入りのエピソードが見つかるはず。画風も相まってやたら濃いのは……彼らは我々。我々は彼らだからだ。馬鹿な我々がそこにいるからだ。
そうそう、忘れちゃいけないのが一つ。本作は現実に即した世界観だが、ときおり崩壊し、映画のネタをやりきるための荒唐無稽なエピソードもある。映画愛に溢れた良い意味でアホな、最高の妄想。
そのせいで映画ネタ漫画の中では最もぶっ飛んでしまうが……それは二巻のお楽しみだ。
「二巻で戻ってくるぜ」