日本野鳥の会が出していて、とっておきの野鳥の授業というタイトルに惹かれて読んでみた。
結論、知らないことばかりでとても面白かった!!
鳥を守ることは自然を守ることにもつながる。豊かな自然を人間の都合だけで荒らしてはいけない。
素敵な鳥たちの生態を通じて自然を守る精神を広めていくのは良い取り組みだと思った。
野鳥たちへの愛と知がたっぷり詰まった一冊だった。
↓特に面白かった話
オシドリ夫婦なんて言われるが、オシドリは毎年つがいが変わる。ワシ類・ツル類・ハクチョウ類は一度形成されたつがいが何年にもわたって続く。一夫一妻制の鳥もいれば、一夫多妻の鳥もいる。鳥にも同性愛(?)がある。
鳥の鳴き声には方言がある。ウグイスの鳴き声は地域によって微妙に違う。
シジュウカラの鳴き声には文法がある。パターン化された鳴き声を組み合わせて、周囲を警戒したり移動したりする。
オナガサイホウチョウという鳥は、その名の通り裁縫のような方法で巣を作る。大きな葉っぱに穴をあけ、蜘蛛の巣を絡めた草を接着剤のように使って器用に編む。この“編み物”をするため、他の鳥と比べて足が長い。
カッコウは自分の托卵を成功させるため、托卵する相手の卵に似せた模様の卵を産む。ホトトギスもウグイスの巣に托卵する。孵化したヒナは他の卵を背中で押し出して巣から落とし、親鳥からもらう餌を独り占めする。カッコウのヒナは鳴き声でヒナの数を誤魔化し、餌を多くもらおうとする。ジュウイチという鶏のヒナは、翼にヒナのくちばしの様にみえる模様を持ち(翼角)、それによってヒナ数を誤魔化して餌を多くもらう。
モズは自分がとった餌を自分の縄張りの木の枝などに刺して保管する習性があり、これをはやにえ(早贄)という。はやにえはオスがメスに対して求愛の冬の歌唱をするためにとっておくもので、はやにえをたくさん食べて早く歌える元気なオスほどモテる。そんなはやにえを食い逃げするメスもいる(笑)
渡り鳥の研究は進歩しているが、課題も多い。研究対象の鳥の足や体などにGPS送信機を仕込んで追跡する(誤差数メートル)。ただ、GPS送信機は小さいものでも20gほどあるため、小さい鳥にはGPSの仕込まれていないジオロケータという2gほどの機器をつける。GPSは一台30万円ほどと多額の費用がかかる。ジオロケータは一の精度が非常に低い上、機器を回収できないと何の情報も得られない。小さくて高性能で安価な機器の開発が求められている。
海鳥は①羽ばたかずほとんど潜水しない滑空タイプ(アホウドリ)、②羽ばたきと滑空飛行・ほとんど潜水しない基本タイプ(カモメ)、③羽ばたき飛行・潜水タイプ(ウミスズメ)、④飛行しない・羽ばたき潜水タイプ(ペンギン)、⑤羽ばたき飛行・足蹴り潜水タイプ(ウミウ)、⑥飛行しない・足蹴り潜水タイプ(コバネウ)に大きく分けられる。飛行に重きを置くタイプは翼や体の軽さに特長があり、潜水に重きを置くタイプは羽が小さく大きな水かきをもつなどの特長がある。
鳥は人間が見ている3原色(赤・青・緑)に紫外線を加えた4原色の世界でモノを見ている。そのため、人間から見れば雌雄の見た目に差がない鳥でも、鳥からしてみれば違う見え方をしていることがある。この視覚の違いを利用したものとして、カラスに荒らされにくいゴミ袋(カラスには中身が見えないが、人間には半透明に見える袋)がある。
絶滅危惧種に指定されるほど数が少なくなると、そこからまた増加しても、遺伝子多様性の確保が難しい。日本で絶滅した生き物を海外から輸入するのも、遺伝的にはもはや別種と言うべきなケースもあるので、推奨されない。
タンチョウやフクロウなど絶滅の危機に瀕している鳥たちを守るために様々な研究・取り組みが行われている。個体数の調査、つがいの数の調査、餌場や巣の環境調査、渡り鳥の調査の場合は、国同士の調整なんかも関わってくる。調査結果によっては、他の国で乱獲するのをやめてもらうようお願いしたり、人工的に餌をまいたり巣を用意したりする。鳥たちが安心して生活できる環境を整えるために森を買い取って維持管理している。
数が増えた鳥たちが人間の畑を荒らしたり、道路に出てきて事故の原因になることもある。そういう時にはレンジャーたちが表に立って、畑を荒らさないように鳥たちを見張ったり、道路に出てきにくい環境を積極的に整えるようにしている。