単行本『江戸・東京の都市史』を新書向けに加筆・リライトした本書、江戸から明治へと変わる時代の転換期に、江戸が東京へと変貌していく様を、各種行政資料、文字記録、写真、古地図などをベースに考察していく。
江戸時代、大半が武家地だった江戸が、どのように開発され、近代文学に出てくるような芝や下谷、神田とい
...続きを読むった地域が一般住宅街へと変わっていったのか、皇居の周囲にできた各種役所の移転の経緯や、大名華族達のお屋敷の拝領、四谷などが貧民窟になっていった辺りの流れがわかる(資料を元に考察している)良い本でした。
ついでに、本書のあとがきでも触れてますが、同じようなテーマで、横山百合子著『江戸東京の明治維新』ってのが同時期に出版されてまして、そちらを先に読んでたのも本書の理解が捗って良かった。横山本の方は、市井の名も無き人々から見た明治維新という出来事が「江戸・東京」に、そして身分制に及ぼした影響について論じた本で、そちらでざっくり出てくるイベントを理解した後、こちらの本を読むことで行政側から見た細かな裏事情…みたいなのが汲み取っていけて良かったです。
例えば8章ででてきた、大名華族が自分の東京のお屋敷の土地の一部に宿舎を建てて、同郷の学生が帝大に通うための下宿にしてた辺りの話など、正岡子規はじめあの時代の文豪や編集者の名前が色々浮かんできて「なるほど、宿舎を建てて世話してた大名側の事情ってのはこういうことか!」という気付きもあり、他の章もあちこち「へぇ」という気付きがあって面白かったです!