山形の無医村で奮闘する女医、志田周子。東京で医学を学んだ周子が、村長である父のたっての願いで山形に帰るところから物語は始まります。
昭和初期、まだ医療観念のない村では女医を簡単には受け入れてくれませんでした。どんなに頑張っても心を開かない村民と、早く東京に戻りたい周子の距離はなかなか縮まりません。歯
...続きを読むがゆさ、苛立ち、胸の中にモヤモヤを抱えながらももがく志田家の人びと。
物語の中に悪人はいません。皆必死なのです。
だからこそ、胸を打つ。
実在の人物であるだけに、あとがきの後日談には更に泣かされました。
知らないだけで、こういう物語はどこにでもあるのでしょう。
美談ではなく、記録なのだと思います。
こういう人がいたからこそ、今がある。
私たちはこの精神を引き継いでいかなければならないのかも知れません。