“五人で校門を出て帰途を辿るうち、ハンバーガーを食べに行こう、という流れになったのである。
放課後に、クラスメイトとファーストフードに行くなんてはじめてだ。ハンバーガーショップのそっけない内装が、キラキラと輝いて見える。
ハンバーガーとポテトとコーラのセットが、格別おいしく感じるのは、皆で食べてるせ
...続きを読むいだろう。
「ちょっと待ってよっ。鈴木って、寺の息子よねっ。ハンバーガーなんていいのっ!?肉はダメよね!?」
ポテトを食べている結花がはっとして叫んだ。
「あ、やべぇっ!!気がつかなかった。誘ってすまんっ」
松田が顔色を変えた。
「いいんだ。普通に肉食べてるし」
「ああ、そういやそうか。鈴木って、学食でポークソテーだとか、ショウガ焼き定食だとか食べてたよな」”
やっぱり所々が薄いなぁと思ってしまったり。
“「お嬢さん、人間はみんなそうです」
ふいに山本さんが話し始めた。
「え?」
「人はみかけに判断される。みんなそうです。でも、ひとすじなわでいかないのが人間です」
「あの人、煙草を注意した私を殴ろうとしたんです。私は正しいことしているのに、暴力に訴えるなんて品性が下劣すぎるわ」
「正しいことだからこそ、気持ちが割り切れなかったのでしょう。あの男だって、会社ではいい社員で、家ではいい父親なのかもしれません」
「気持ちは割り切れない?」
「人間は割り切れない、というべきかもしれませんね。人間は愚かです。ですが高潔なところもあります。右手で悪を、左手で善をなすのが人間なのです」
(中略)
「人間は素数なのね」
篤子が呟いた。
「ソスウ?ああ、素数ね。なるほどそうかもしれませんね」”