教養もある元伯爵夫人が持ち前の人脈と誠実な人柄を武器として、「結婚仲介人」を仕事としている。そのフェザーストーン伯爵夫人の元に、名うてのプレイボーイである侯爵が花嫁捜しにやってきた。
彼は「持参金を持った令嬢」とすぐにでも結婚したいのだという。
愛ではなく金のために結婚するのだと広言してはばからない
...続きを読むイケメン侯爵に、伯爵夫人ベリンダは激しい嫌悪感を覚えるが、、、
実はベリンダが覚えたのは嫌悪感だけではなく、当の侯爵ニコラスも同じで、共にひとめで惹かれ合ったということになります。
結局、ラストで二人は結ばれ、他人の金を当てにせず、自らビール醸造業で身を立てようとするニコラスに、ベリンダも愛情だけでなく敬意を抱くようになります。
ニコラスは幼いときから父親であるランズダウン公爵の過干渉を受けてきて、夢も理想もすべて打ち砕かれてきました。放蕩者の仮面を被るのは、父親への精一杯の反抗だとベリンダは見抜きます。
一方、ベリンダはアメリカ人の資産家令嬢で、かつて侯爵と同様、金目当ての夫に言葉巧みに誘惑され結婚したという過去があります。そのため、二コラスを亡くなった夫と同類の女性の敵のような男だと見なすのですが―。
無垢なアメリカ人令嬢たちを財産目当てのニコラスの毒牙にかけてはならない―と、彼の結婚をことごとく邪魔する中に、自分の心の中にそれだけではないニコラスへの思慕が混ざっていることに気づき、、、
スートリーそのものはこみ入っているわけではありません。単純明快で、これだけの―四百ページを越える分量を費やす必要があるのかとの疑問もよぎります。
ただ、その分、ページを費やしているだけ、ゴールに至るまでの二人の心の有りようや変化がとても丹念に描かれているともいえます。
結局、ニコラスはベリンダの前夫のような男ではなかったわけですが、男気があって優しい人柄は個人的にもとても好感のある男性のように思えました。
へリンダも最初は不幸な結婚をして早々と寡婦になったわけですから、今度こそは幸せになって欲しいと思います。
起伏があまりない反面、好感のもてるキャラたちに惹かれ結末の知りたさに読み続け、かなり読むのに時間がかかってしまいました。