だいぶ前に『里山資本主義』は読んでいたのだが、本書はしばらく積ん読状態。。
読み始めてみると、自分にとってとても身近な瀬戸内海をメインに取材がされていて、もっと早く読めばよかったと後悔。
今では、澄んだとてもきれいで美しい瀬戸内海だが、高度経済成長の時代には工業排水や生活排水、埋め立てなどの影響
...続きを読むで1年に300回近くの赤潮が当時発生していたとされている。
それが今の状態まで回復してきたのはここ約10年ぐらいである。
公害や排水への意識が高まり、対策がとられてきたのももちろんだが、一番の要因は自然に任せるのではなく、「人が手を加えることで海を健康にし、豊かにするメカニズム」。
西洋的な一神教に基づく考えではなく、八百万の神々を奉ずる多神教に例えて、人間(人為)も自然のシステムの中の一部、八百万の神々の端くれとして機能させることで、自然の中に均衡や多様性を生むことができる、という概念を実証データを基に証明した。
その結果、普段当たり前に見ている、美しい海が瀬戸内に広がっている。
そして海がよみがえると、病を抱えた人もよみがえる効果があった。
お金ではなく、昔ながらのモノが循環する経済もよみがえった。
そしてそれらはこれからの時代の最先端である。
弓削島や因島、向島の例も取り上げられていて、とても身近に感じた。
本書の解説で藻谷さんが引用している『風の谷のナウシカ』の一文がインパクトあった。
「この時代、人は海の恩恵からも見放されていた。海はこの星全体にばらまかれた汚染物質が最後にたどり着く所だったからだ」
たしかに、人が出す廃棄物などの汚染物質が最後にたどり着くのは海である。
そんな状態だった瀬戸内海が、いかに現在の状態まできれいになったのか、本書を読んでとても勉強させられた。