教授と生徒の対話形式で展開されるあるある技法だが、この本中身がコレでもかというほど濃い。背景知識と分析結果に基づいた、深い示唆を得られる内容になっている。かなりの意欲作、とてもおもしろく読めて学びが深い。
世界は成長の限界を迎えているにもかかわらず、無理な成長を実現しようとしてつじつま合わせにリス
...続きを読むクの高い劇薬的な施策を打っているのが今。
長年の歴史の中で一部の富のために虐げられてきた国や宗教、民族によるテロリズムの表出が今のイスラム国。
相当な背景知識がないとこの本は掛けないなと、読後に唸る感じ。
■読書メモ
・砂糖はイギリス人が奴隷貿易でアフリカから連れてきた黒人奴隷を酷使して作った賢者の石
・先進国のための食料や原材料の生産地にさせられ、資本投下を猛烈にされた結果、社会や経済がゆがんでしまう、これを低開発化という
・近代世界システム論においては先進国を中核、低開発化地域を周辺としている
・1~3次産業全てで優位になった国家…ヘゲモニー国家(オランダ→イギリス→アメリカ)は同じような発展と崩壊のパターンを描く。農業、工業が優位になり生産力が高まる→商業が発展する→金融が発展する→生産力が落ちる→商業が崩壊→金融が残る
・このような状況をなんとかつじつまを合わせようと、成長できない世界を無理やり成長させようとしたり無理なリターンを生み出そうとして社会が歪む。その結果我々はコレで大丈夫なんだろうかと不安に襲われる
・シニアが昔の約束通りのカネを受け取ることが既得権益になっていることに気づいていない。
・日銀の黒田総裁がやっていることは、インフレのムーブメントを作ること。期待を上げようとしている。これをマネタリー・シャーマンと呼ぶ
・金利は将来のお金の割引率、金利が下がれば株価は上がる
・経済成長が当たり前でなくなった世界で、経済成長が前提だった世界の常識を持ち込もうとするから無理がある
・人類は物質エネルギー、産業、金融という3つの循環にッサ得られている、持続可能性はこれらがバランスを取りながら持続できること、成長は持続可能ではなく、定常的な社会、経済を目指す必要がある。江戸時代にはそれができていた
・支配階層が腐敗しなかったことがその要因、武士のほうが清貧を求めた
・日本の戦争は、白人の欧米の世界システムに対抗しなければ賢者の石化していくアジアを憂いて、リーダーとしての行動だった。これが敗戦後に塗り替えられた
・銀行は物理的にお金を擦れるからお金を増やせるのではない。銀行は信用創造機能を持ってお金を増やす
・借用書、債権・債務が貨幣の本源
・アメリカの経済学がここ20年ノーベル経済学賞をほぼ独占し、中央銀行がインフレを作れるとするマネタリストが権威付けられてしまった
・市場に対して大きすぎるポジションを持っていると、途中経過でいかに儲かっていても利益が確定できるかどうかは不明
・およそ100年前、イスラムの大国、オスマン帝国を第一次世界大戦で滅ぼすにあたり、イギリスがアラブ、ユダヤ、ロシア、フランスの3者と矛盾する約束(サイクス・ピコ協定)をした。その結果クルド人は分割され、イラクやシリアのような腎臓国家が生まれ、ユダヤ人の国イスラエルが生まれる伏線となった
・そもそも聖地エルサレムをイスラム教徒に占領されて、巡礼ができないとしてキリスト教徒が十字軍を結成し戦争を仕掛けた。十字軍はエルサレム奪還にあたり、イスラム教徒のみならずユダヤ教徒も女子供も全て皆殺しにした
・ユダヤは一神教、砂漠の宗教であり戒律が厳しい
・多神教は自然が豊かな国で育まれる森の宗教
・キリスト3割、イスラム2割で世界人口の半数を占める
・経済的な利権や権力の拡大を目的とするキリスト教側がイスラム教側を1,000年にわたって賢者の石化してきたという恨むつらみが根源的な対立の背景
・イスラム国が生まれた因はイラク戦争でアメリカがフセインを排除し、その後の統治に失敗したため。イラクはシーア派とスンニ派とクルド人が同居する人口国家。フセインの独裁政治は経済発展に大きく貢献していた
・アルカイダは冷戦時代にソ連のアフガニスタン侵攻の抵抗勢力としてイスラム原理主義勢力にアメリカが武器を供給し戦闘を教えたことで生まれた。イラクも元々はイランとの戦争時アメリカと近い関係だった
・イスラム国はシーア派のアサド政権を攻撃してくれているため、容易に潰せない
・ロシアは一方でシリアのアサド政権指示のためイスラム国を攻撃する理由がある。かつ、アメリカの弱さを世界に示す一石二鳥
・一方、イスラム国がなくなると対立するクルド人勢力が大きくなり、これを嫌がったトルコがロシアに戦闘を仕掛けた
・インターネットバブルの崩壊を、違う形のバブルで穴埋めした世界は、結果的にリーマンを引き起こした。緊急避難として中央銀行が劇薬の量的緩和をし、残る成長が期待されるカードは中国をはじめとする新興国のみとなった
・江戸時代後期には日本人は豊かな成熟社会を作り、暇な時間を有効に使って趣味や文化的な活動に花を咲かせた豊かな時代を作った。経済成長が限界を迎える今、我々が目を向けるべきは次なる成熟社会の在り方へのシフト