初めて読む作家さん。
<昭和ミステリールネサンス>と銘打って、昭和50年~60年代の作家陣の短編集を出しているらしいのだが、その第四弾。
読者の想像力を試される、場面転換の多い作品だった。
様式美というか形式美というか、このシーン、このやり取り、この図、この結末を描きたいための作品というものも多い
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小説というよりは、何かの映像作品の少し詳しめのコンテや戯曲を読んでいるような、なんとなく前衛的な匂いがプンプンする。この頃はこういう実験的作品が多く、個性豊かな作家さんたちがたくさんいたのだろうなと思う。
編者によるあとがきを読んでいると、作家さんは寺山修司氏と同人誌を発刊したり、前衛的な作品や戯曲を発表したりしていたらしい。納得。
最初の作品『ゴウイング・マイ・ウェイ』は組織のボスを殺して海外逃亡を図る青年の話だが、乱歩先生から随分と高い評価を得たらしい。ただミステリーというよりはハードボイルドかなと思える。
ミステリー寄りの作品なら『狂熱のデュエット』がなかなか良かった。元も子もない言い方をすれば、誰も彼もが自分のことしか考えていないし誰も彼もが救われない話なのだけれど、なぜかセンチメンタルな余韻に浸ってしまう不思議な作品だった。
似たような構図で言えば表題作もそうかも知れない。
全体的に言えばピカレスク、ハードボイルドを超えてバイオレンスな感じのするものも多くて、付いていくのが苦しい作品も多かった。
なんとも刹那的なような、でもこれがこの作家さんの味なのかも知れない。