【感想・ネタバレ】八月は残酷な月~昭和ミステリールネサンス~のレビュー

あらすじ

幼少より慈しみ育ててくれた組織のボスを射殺し、海外逃亡をはかる無軌道な青年(「ゴウイング・マイ・ウェイ」)、市民や学生のデモ隊が街にあふれ騒然とする中、外相の首を狙う孤独なテロリスト(「陽光の下、若者は死ぬ」)など、強烈なジャズ・ビートをバックに描く反抗的、反俗的な青春群像! 和製ハードボイルド小説のパイオニアとして名高い著者の傑作短編集!!

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Posted by ブクログ

河野典生『八月は残酷な月』光文社文庫。

何とも懐かしい作家ではないか。日本のハードボイルド小説のパイオニアにして、SF小説の旗手でもあった河野典生の傑作短編集。男と女、憎しみと哀しみ、ジャズと犯罪、暴力が懐かしい昭和初期を舞台にいかしたサスペンスを紡ぎ出す。8編を収録。

『ゴウイング・マイ・ウェイ』。独特の味わいのあるハードボイルド・サスペンス。組織のボスを殺害し、逃亡者に成り果てた若者。多くを描かず、読者に結末を連想させるというプロットは好みだ。

『陽光の下、若者は死ぬ』。無軌道なテロを描いたサスペンス掌編。信頼と裏切りの果てに……

『狂熱のデュエット』。男女の痴情の縺れとサスペンス。ジャズと昭和の香りが漂う。

『殺人者』。嫌になるくらい単純で、あっさりと描かれる暴力。昭和初期らしい。

『八月は残酷な月』。表題作。男女という2つの性がある限り、憎しみと哀しみが存在し、サスペンスを造り出すのか……

他に『アスファルトの上』『青い群』『海鳴り』を収録。

本体価格920円
★★★★★

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2019年10月30日

Posted by ブクログ

初めて読む作家さん。
<昭和ミステリールネサンス>と銘打って、昭和50年~60年代の作家陣の短編集を出しているらしいのだが、その第四弾。

読者の想像力を試される、場面転換の多い作品だった。
様式美というか形式美というか、このシーン、このやり取り、この図、この結末を描きたいための作品というものも多い
小説というよりは、何かの映像作品の少し詳しめのコンテや戯曲を読んでいるような、なんとなく前衛的な匂いがプンプンする。この頃はこういう実験的作品が多く、個性豊かな作家さんたちがたくさんいたのだろうなと思う。
編者によるあとがきを読んでいると、作家さんは寺山修司氏と同人誌を発刊したり、前衛的な作品や戯曲を発表したりしていたらしい。納得。

最初の作品『ゴウイング・マイ・ウェイ』は組織のボスを殺して海外逃亡を図る青年の話だが、乱歩先生から随分と高い評価を得たらしい。ただミステリーというよりはハードボイルドかなと思える。

ミステリー寄りの作品なら『狂熱のデュエット』がなかなか良かった。元も子もない言い方をすれば、誰も彼もが自分のことしか考えていないし誰も彼もが救われない話なのだけれど、なぜかセンチメンタルな余韻に浸ってしまう不思議な作品だった。
似たような構図で言えば表題作もそうかも知れない。

全体的に言えばピカレスク、ハードボイルドを超えてバイオレンスな感じのするものも多くて、付いていくのが苦しい作品も多かった。
なんとも刹那的なような、でもこれがこの作家さんの味なのかも知れない。

0
2020年01月08日

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