容姿にも声にも性格にも自信がなく、宇宙人と揶揄される高校生兎田晃吉(ウサ吉)。唯一の趣味であるギターを弾くために軽音楽部に所属するものの、部長から文化祭への出演禁止を言い渡され練習場所もなくす。
そんな兎田と偶然出逢った漫研部長の兎毛成結奈は、兎田のギターの実力を知り、彼を表舞台に立たせるために画策
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劣等感のかたまりの少年が仲間の応援の元で、自分の好きなもの自分が打ち込んでいるものに自信を持ち、それで自分をバカにしていた人に立ち向かう。
青春ものの王道のような展開ですが、そこにキャラクターの設定や伏線を細やかに配する構成の妙で独特の世界観を作っています。
ウサ吉のために集まるメンバーは実力者ばかり。しかし実力を認めてもらえなかったり、冤罪により変わり者のレッテルを貼られていたり、家庭の事情で夢を奪われたり、他者から蔑まれていたりと何らかの事情を持つものばかり。
しかしだからこそウサ吉の気持ちをくみ取ることができ、ウサ吉もそんな人たちの言葉だから受け容れることができる。
何度も苦境に立たされその度に乗り越えながらも、求めていたものを手に入れることができない。しかしその先にあるもの。諦めずにがむしゃらになることで掴み取るもの。実に壮快感溢れるラストの盛り上がりでした。
日頃YA(ヤングアダルト)の読み手にライトノベルを勧めたいと思っているのですが、これはまず挙げることのできる作品だなと思いました。いい出逢いをしました。