「旅先でドラッグを楽しもうとする者は、政治と宗教に細心の注意をはらっておかねばならない。どちらも『カネ』では済まないからだ」と書いてあるように、著者は政治や宗教に詳しい。私にとってドラッグの情報も新鮮だが、アジア・中近東の政治や宗教事情も同じくらい新鮮で楽しかった。
また、自慢したいファッションな奴
...続きを読むほど尻尾をつかまれてすぐ逮捕されると書いていたが、著者の文章にはつまらない自分語りや誇示がなく、読みやすい。
好きな文章
・しばらくそうしていると、僕の脳みその前頭葉が、紅葉しはじめた。
・アユタヤに限らず、遺跡にはマリファナがよくあう。
・不安も恐怖も感じない、まるで母の子宮のぬくもりのなかに漂っているような、けだるい気分が続いた。僕とヘロイン以外に、何もなかった。
・峠に降り立って、今、自分はアレクサンダーや玄奘が踏んだ地面を踏んでいるのかもしれないと思うと、アジアの歴史の深さが靴の底から染みこんでくるような気がした。
・世界を旅する貧乏旅行者の間で、よく次のようなフレーズがささやかれる。「歴史のアジア、冒険のアフリカ、金の北米、神秘の南米、女のヨーロッパ」。
アユタヤ遺跡でマリファナを吸う話が一番印象的だった。「のんびりと煙を吐いていると千年前にタイム・トリップして、当時生きていた人々が隣に座っているような錯覚に陥る」という表現にはゾクゾクした。旅行の移動中にこの本を読んでいたというのもあり、今すぐに吸いたいという衝動に駆られた。
最近、大人になっていく自分自身をひしひしと感じている。それと同時に凝固していく自分に怯えている。固定化した意識を揺さぶり、無意識の部分を解放する体験が私にも必要だ。