作品一覧

  • 輪廻の思想
    4.0
    1巻1,430円 (税込)
    幼いころに父を亡くした著者は、あるとき、幾晩か続けて大きな蜘蛛が風呂場の天井にいることに気づいた。母にそれをいうと「お父さんかもしれないから、いたずらしてはいけない」と言われてびっくりした、という。かつては、死んだ血縁の者が、場合によっては他の動物になっている、ということを多くの人が信じていたのである。 こうした「業報輪廻」の考えは、仏教思想の中心というよりも、ジャイナ教やヒンドゥー教など東洋の宗教全体の大きな前提になっているという。そして、キリスト教などの一神教がダーウィニズムの挑戦を受けて思想的な見直しを迫られているように、輪廻思想と仏教も、進化論やバイオテクノロジーなどとの対決を迫られている。アレキサンダーの東征や、匈奴の強大化などがもたらした紀元前後の数百年間の仏教の危機の時代を、「阿弥陀仏」という新たな信仰によって乗り切ったように、新たな神話を創生していく必要があるというのだ。 さらに、スーパーマンとしての観世音菩薩、イエスとブッダの説話の類似性、親鸞の仏陀観の変化など、仏教社会の倫理と道徳を支えてきた「輪廻の思想」をめぐる講演と随筆を集成。〔原本:1989年、人文書院刊〕 目次 1 輪廻の思想――インド・中国・日本 2 仏塔信仰と大乗仏教 菩薩の平和思想 ブッダとイエス 3 本願力ということ 親鸞の仏陀観 親鸞における信心の深化 4 マングース物語  人と猿と神 仏教における非神話化 不老長寿  脳死・堕胎・中有 王舎城の温泉 チベットの牧象図 言語同断 蚕と蜘蛛――追悼 抱石庵 久松真一先生 お盆の思い出 海外の三人の師 無相さんと私 武生の雪 木村無相『念佛詩抄』 山頭火と私
  • 般若経 空の世界
    4.0
    「世界に固定した実体は存在しない。あらゆるものは“空”である」。 ものへの執着と、輪廻の恐怖から人々を解放した「般若経」。 1世紀半ばといわれる成立以降、数々の翻訳や加筆により、分散や繰り返しも多く、理解が難しかった大経典に、<空思想>の泰斗が正面から対峙。素朴で力強い思想の魅力を描きつつ、仏教思想史における位置と意味を明らかにする! 本書の原本は二〇〇二年八月、中公文庫BIBLIOより刊行されました。 目次 まえがき 序章 説話と思想 玄沙出家 『ヴィシュヴァーンタラ・ジャータカ』 布施太子の入山 常悲菩薩本生 サダープラルディタ(常悲)とダルモードガタ(法来) 哲学の発生 第一章 大乗仏教への道 シャーキヤ・ムニと大乗の菩薩 出家と在家 ストゥーパ (舎利塔)とヴィハーラ(精舎) 教団の分裂 ジャータカ (本生話)とアヴァダーナ(譬喩) 第二章 般若経の背景」 ボサツと菩薩 僧院の仏教 すべてがあると主張する者――有部の哲学(1) 区別の哲学――有部の哲学(2) 三世実有・法体恒有――有部の哲学(3) 第三章 「般若経」の出現 『八千頌般若経』の成立 過去仏・現在仏・未来仏 アクショービヤ如来 哲人マイトレーヤ (弥勒) 「般若経」の発展 第四章 「般若経」の思想(1) 仏母の発見 菩薩大士 大乗――声聞・独覚の批判 本来清浄――実在論批判 第五章 「般若経」の思想(2) 不二 般若波羅蜜 廻向――ふりむけの思想 巧みな手だて 菩薩の階位 縁起と空 参考文献 内容紹介 たとえば私の目の前にある机という個物は机という本体をもっていない。なるほど私がその前にすわってその上で原稿を書けば、それは机である。しかし私がそれに腰かければそれは椅子以外の何であろうか。(中略)そのようにさまざまな認識とさまざまな効用が起こるのは、その机に机の本体がないからである。机は机として空であり、本体は思惟における概念にすぎない。愛情は凡夫にとっては迷いの絆きずなであるけれども、菩薩や仏陀にとっては有情を見捨てない慈悲である。どうしてそこにただ煩悩という本体だけを認めることができようか。―――第五章「般若経」の思想(2) より
  • 大乗仏教の誕生 「さとり」と「廻向」
    4.5
    1巻1,100円 (税込)
    人びとを救いのない業報の束縛から解放する、恩寵と救済の宗教――大乗仏教は、どのような思想的変転の中から出現したのだろうか。「さとり」と「廻向(えこう)」という大乗仏教のキーワードを軸に、その独自の論理を解明していく。 「マーヤー夫人の処女懐胎」と「マリアの受胎告知」など、ブッダとイエスをめぐる説話に驚くべき類似がいくつも見られるのはなぜだろうか。本書はまず、仏教とユダヤ教、キリスト教など、西アジアの諸宗教の影響関係を聖典文献学から探る。なかでも、ペルシアに栄えたゾロアスター教がメシア信仰や阿弥陀仏信仰、さらに大乗仏教の成立に与えた影響に着目する。 また、自分の積んだ善業の結果を「さとり」という超世間的なものに転換したり、自己の功徳を他人に振り向けたりする「転換の思想」すなわち「廻向」は、「業も果も本質的には空(くう)である」という「空の思想」に支えられている、という。そして、この阿弥陀仏信仰と「空の思想」を両輪として、大乗仏教は育まれたのである。 原始仏教と他宗教を比較する広い視野から、難解な思想を平易に説き明かす。巻末解説を、チベット学の今枝由郎氏が執筆。 『「さとり」と「廻向」――大乗仏教の成立』(講談社現代新書1983年刊、人文書院1997年刊)を改題して文庫化。
  • 完訳 ブッダチャリタ
    5.0
    1巻1,815円 (税込)
    誕生から死、遺骨の分配まで――。ゴータマ・ブッダの全生涯を、仏教詩人・アシュヴァゴーシャが美文で綴った名著『ブッダチャリタ』。1893年に出版された14章までのサンスクリットテキストに、チベット訳、漢訳を丹念に補足しながら全28章を完訳。膨大な経典も編み、仏伝資料としての価値も備えた、もっとも古く、もっとも美しい、仏教叙事詩の誕生!「原始仏典」第10巻『ブッダチャリタ』(1985年)小社刊の文庫化
  • 仏教の思想【全12冊 合本版】
    -
    1巻7,601円 (税込)
    仏教の思想 1_知恵と慈悲<ブッダ> 仏教の思想 2_存在の分析<アビダルマ> 仏教の思想 3_空の論理<中観> 仏教の思想 4_認識と超越<唯識> 仏教の思想 5_絶対の真理<天台> 仏教の思想 6_無限の世界観<華厳> 仏教の思想 7_無の探求<中国禅> 仏教の思想 8_不安と欣求<中国浄土> 仏教の思想 9_生命の海<空海> 仏教の思想 10_絶望と歓喜<親鸞> 仏教の思想 11_古仏のまねび<道元> 仏教の思想 12_永遠のいのち<日蓮> ※本電子書籍は「仏教の思想 1」~「仏教の思想 12」をまとめて1冊とした合本版です。 ※本作品は紙版の書籍から口絵または挿絵の一部が未収録となっています。あらかじめご了承ください。
  • 仏教の思想 1 知恵と慈悲<ブッダ>
    4.7
    1~12巻704~1,089円 (税込)
    インドに生まれ、中国を経て日本に渡ってきた仏教。多様な思想を蔵する仏教の核心を、源流ブッダに立ち返って解明。知恵と慈悲の思想が持つ現代的意義を、ギリシア哲学とキリスト教思想との対比を通じて探る。 ※本作品は紙版の書籍から口絵または挿絵の一部が未収録となっています。あらかじめご了承ください。

ユーザーレビュー

  • 完訳 ブッダチャリタ

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    今作『ブッダチャリタ』は1~2世紀頃にインドで活躍した仏教詩人アシュヴァゴーサ(馬鳴)による仏伝です。漢訳では曇無讖によって『仏所行讃』として翻訳されています。

    現在語られるブッダの生涯の大元となったアシュヴァゴーシャの『ブッダチャリタ』。物語としても非常に面白い作品でした。

    漢訳の『仏所行讃』は私達日本仏教においても大きな影響を持っていたことでしょう。浄土真宗の開祖親鸞もこの作品を読んでブッダに思いを馳せていたのでしょうか。ロマンがありますね。

    0
    2024年08月23日
  • 大乗仏教の誕生 「さとり」と「廻向」

    Posted by ブクログ

    歴史上のブッダは本当はどんな人でどんなことを考えていたのか、というのは、とても興味深い問いで、そういう本はたくさん出ている。そういうのがあれば、わりと読んでしまうのだが、何冊か読む中で大体のところが見えてきた。

    で、次なる疑問は、「大乗仏教」はどのように生じたかということで、その辺りの私がまだよくわかってない領域で、ズバリのタイトルのこの本を読んでみた。

    これはとても読みやすい本で、かつ知らないことがたくさんあって、眼から鱗がたくさん落ちた。

    一時、仏典と聖書に登場するエピソードに類似するものがあり、それは仏教から聖書への影響があるのでないかという研究が 19世紀にあった。が、調べていく

    0
    2024年03月15日
  • 大乗仏教の誕生 「さとり」と「廻向」

    Posted by ブクログ

     大乗仏教の話なのだけれど、自分には宗教を求める人間の観点からその歴史を文献と今の自分を撚り合わせて辿るような本だと感じた。 

     前半部分で、キリスト教に出てくる話とジャータカの話の類似性についての研究の歴史がある。文献学と史学的な確かさから影響をしあったことはないようだが、検証の過程で人間が宗教を求めていくことを確かめていて、それは同時に読んでいる自分の中を確かめるようでいて学術的な表記以上のものがある。

     ゾロアスター教(拝火教)との関連性に言及したり、初期仏教からの経典の解説もあり、これは浄土教以外の仏教諸宗派、修験道の方が読まれたらどんな印象なのだろうと思った。視点がたくさんあって

    0
    2021年07月31日
  • 輪廻の思想

    Posted by ブクログ

    分かりやすかった!
    構成的にも、最初は難解だが後半からどんどん学習したことが出てきてとても読みやすかった。
    著者が淡々と説明される前半から、詩に関して著者の半生も踏まえて説かれる後半は対比的に情緒的でグッとくるものがあった。

    とはいえやっぱり難しいー!でも読み終わった時の達成感もすごい

    0
    2025年11月27日
  • 輪廻の思想

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    輪廻をめぐる講演と随筆を集成したもの。


    なるほど、と、読みました。

    「いままでは道徳を支えていたのは神であり、業報輪廻であり、家や国家の絶対性であった。それらの支えがなくなったいまは、道徳は倒れ、したがって人間も倒れてしまった。人間を猿と区別していたものは、尻尾の有無ではなくて、道徳の有無だったからである」

    0
    2025年08月01日

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