歴史上のブッダは本当はどんな人でどんなことを考えていたのか、というのは、とても興味深い問いで、そういう本はたくさん出ている。そういうのがあれば、わりと読んでしまうのだが、何冊か読む中で大体のところが見えてきた。
で、次なる疑問は、「大乗仏教」はどのように生じたかということで、その辺りの私がまだよく
...続きを読むわかってない領域で、ズバリのタイトルのこの本を読んでみた。
これはとても読みやすい本で、かつ知らないことがたくさんあって、眼から鱗がたくさん落ちた。
一時、仏典と聖書に登場するエピソードに類似するものがあり、それは仏教から聖書への影響があるのでないかという研究が 19世紀にあった。が、調べていくと偶然似ているだけのものもあるだけだったり、テキストとしての成立の時代を吟味すると、聖書より後に仏典に類似したエピソードが追加されたと考える方が良さそうな状況らしい。
で、キリスト教が仏教に影響したのかというより、むしろゾロアスター教が、仏教とキリスト教の両方に影響を与えたと考えた方が自然だと著者はいう。このあたりの論考は、すごく面白い。
で、そこから話しは、より具体的に大乗仏教の成立についての論考に入っていき、歴史的な状況、仏教内部での派閥争い、輪廻概念の変化、空の理論の発見などなどが説明されて、説得力がある。
こういう仏教関係の本は、仏典を細かく分析していくところから議論を進めるものが多く、素人的には大体途中でわからなくなっていくのだが、この本は、テキストも紹介しつつも、当時の時代背景を分析していく中で、大乗仏教が生まれた原因を分析していく感じで書かれている。
あと、仏教における終末論がとても面白かった。仏教の世界観というか宇宙観がわかって、面白くて、ある意味、キリスト教的なところもあると思いつつも、結局、みんな救われるところが面白いし、終末を待たずとも今救済が可能なところがすごいなと思った。