JRの「みどりの窓口」を開発を担当し、その後も多数のプロジェクトを経験した著者によるプロジェクトマネジメントの解説本
受注、見積、開発、顧客との信頼関係と解説していくが、「体験的プロジェクトマネジメント論」と書かれているとおり筆者の体験や感想、教訓が各フェーズで記載されている。システムの開発工程を
...続きを読むひととおり体験しており、システム開発の困るポイントを押さえている人が読むと教訓やこうすべきと書いてある内容が理解できるけど、システム開発をやったことのない人が読んでも実感が湧かないだろう。
逆にシステム開発で困っている人にとっては筆者のノウハウがてんこ盛りなのが嬉しい。考え方の整理やノウハウのいいとこどりができる。特にシステム提案、見積、契約、受注は上流工程を仕切るPMには重要な工程だが、このあたりを詳しく説明してくれる本は少なく貴重な一冊である。特に「顧客にも同じ船に乗ってもらう」と称して顧客との信頼関係の構築に章を割いているのがPMBOKなどのきれいごとの論理だけでなく顧客や設計者と渡り合わなければならない現場PMの実感を表わしている。他に修羅場となったプロジェクトを担当した経験が多いせいか、デスマーチとなったプロジェクトからの対処法も各工程の中で説明されている。
『真の理解は「心で理解する」こと』とか、『工程とは承認するものではなく指示するもの』、といった精神論に近い内容も散見されるが、当事者として一人称で考えると納得できるものが多い。
プロジェクトの受注前の段階で悩んでいたり、デスマーチからどう抜け出すかを模索しているPMにはおススメしたい。また、PMはどのように考えているのかを知りたい人にもおススメ。
結びに代えてで『前向きに粘り強く、泥沼をかき分けて』とか、『命をとられるわけではない』と書いているが、これがスマートさよりも何が何でもシステムを稼働させようと考えるITゼネコンの日立らしい発想だなあ、と感じた。