この本の良い点は様々な「笑い」のメカニズムを解説しつつも、ある程度考察の余地を残しているから、自分自身で「笑い」についてより深く考えてみようと思える事だと思う。
筆者は、「笑い」の社会性・知的さ・ユーモアは実に人間らしい部分の表れであり、それ故にどのような笑いを好むかはその人の人間性が表れと考えら
...続きを読むれるとし、ユーモアに欠ける日本の笑いに日本社会の精神的未熟さを指摘しているが、それは間違いではないかと思う。
筆者は素人間でのいじりを優位な立場な人がそうでない人に対して一方的に行われるものとし、否定的である。確かにそういった優越の笑いが場を支配する場面は多く見られる。しかし、社会的マイノリティや身体的コンプレックスを持つ人が、日本のコメディアンたちのいじりを見て、マイノリティさやコンプレックスを人を笑わせる武器に昇華する術を学び、それを武器にして人々を笑わせることで強力な個性として肯定的に捉えられるようになるということは一般的な集団ついても起こりうるし、実際私や私の友人は経験したことがある。これは一種のユーモアな「笑い」の発生ではないかと私は考える。このように日本にもユーモアな笑いの土壌があり、この土壌をどのように育むかが重要だと思う。
上記の様なことを考えようと思えたのはこの本を読んだからであり、内容が正しいかどうかはともかく、普段深く考えない「笑い」について考えられたのはとても良い体験であった。