『冬のソナタ』を頂点とする、日本における「韓流」ブームの流れと、韓国における日本のポップ・カルチャー受容史を概観するとともに、今後の日韓の文化的なレヴェルでの交流についての展望を語った本です。
意図されたものなのかわからないのですが、ポップ・カルチャーの表層的な動向を追いかけていくことに終始してい
...続きを読むるように感じました。ある程度歴史的な広がりはありますが、映画に関する叙述の一部を除いては、あまり立ち入った作品論は展開されていません。韓国の戦後史におけるポストコロニアル的な状況についての指摘はなされていますが、韓国と日本のポップ・カルチャーに関するカルチュラル・スタディーズのような内容を期待する向きには、少しもの足りなさを覚えるのではないでしょうか。
本書の刊行は2010年ですが、その後ブームとしての「韓流」は終息し、韓国ドラマもK-POPアイドルも一定のファンをもつ、ひとつのジャンルという位置に定着したようにも見えます。もちろんネットを中心にさまざまな摩擦はあるようですが、たとえば日本の芸能界でも吉本芸人と東京芸人の軋轢はあるでしょうし、日本のアイドルや声優のファンのあいだでおたがいに罵りあいが見られることを思えば、両国の文化交流もそうしたさまざまな摩擦をくり返しながらもつづけられていくのだろうと思います。