前作で人類が消滅した世界はどうなるかを解明しようとした筆者による、人類が存続できる世界を維持するにはどうしたらいいか? が主題になった著書。
最重要に位置付けられているのは人口問題。
20世紀初頭には15億程度だった世界の人口は、100年と少ししか経過していない現在では70億。このままの増加傾向が
...続きを読む続けばあと半世紀で世界の人口は100億を越えると予測されている。
そうなった場合どうなるかは実際のところわからないんだけど、暗い見通しのほうがまあガチ。
とはいえ、統計だけを見てああだこうだ言うよりも、実際に世界中の社会の中でどういうことが起こっているかミクロ視点で丹念に洞察しながら疑問の答えを追求していこうというのが本書の基本的なスタンス。
「法律が守ってくれない以上、頼れるのは家族しかいない」「少しでも子供を多く作ることが、自分達の身を守ることに繋がる」と語る、パレスティナのある女性の姿を皮切りに、先進国も途上国も含めた各地の社会で生きる人々の声を拾い上げていく。
読んでいて好感を持ったのは、特定の誰かの声に肩入れしようとするのではなく、あくまでも人々の姿を出来る限りありのままに映し出そうと試みている点。それぞれのチャプターはノンフィクション群像劇のようで、点景の記述は(多少論旨の明確さやテンポを犠牲にしつつも)冷徹な姿勢で為されている。
人口問題といえば基本的には多いか少ないかという話でしかないんだけど、そこに至る導線がどういうものなのかは地域によって様々なのだなあということを思わされる。
若干疲れるけど、読み応えのある一冊だった。