初読の作家。検索してもほとんど本が見当たらないので、寡作の作家の模様。
海の近くのいなか街で暮らす桐子は、中学の時に母親を乳がんで亡くし、八百屋の父と弟に対して母親代わりで生活する。とはいえ、多感な中学3年から高校2年までであり、友達はどんどん初体験を済ませ、退学処分を受け…。
日記らしく、時に
...続きを読むはライトノベルのように、書き文にも自分の感情を隠さず描くタイプの小説である。裕福でない家柄とは別に、家の外ではミッションの女学校に通ったり、亡き母の病室の友であり、高校の同級生でもあった加代子の裕福な生活と、よくある貧乏に対する恨みつらみという部分が中盤以降出てこないので、かなり読みやすい。
女子高生が、友達にムカついたり弟と言い争ったりするだけだが、読みすすめるほどに友情の変化あり、落ち込んだりと、みずみずしい表現が魅力的に感じてくる。勢いに任せて書かれているようで、かなり的確な表現と適切な無駄が非常に心地よい。
難を言えば、もう少し普通の街の普通の職業の家庭のほうが、感情移入がしやすいところがあったと思う。NHKの朝ドラもだが、貧乏であるというだけのことに感情移入できる世代は、そろそろ引退なのである。
2002年ということになっているが携帯電話も出てこず、それよりずっと前に書かれたのか、昔を回顧して書かれたのか定かではないが、ある程度の歳で書かれたのであれば、高校生になりきれているように見え、なかなかすごい作家なのだなあと感じた1冊。