小説 - アーウィン・ショー作品一覧
-
-かつては映画俳優として華々しく活躍していたジャックは、第二次大戦を経て今はパリで目立たない公務員の仕事を粛々とこなす生活を送っている。ある日、長らく疎遠になっていた映画監督のデラニーに請われて二週間ローマに滞在することになるが、そこでの出会いや目まぐるしいほどの出来事によって、ジャックは若かりし頃の栄光や挫折を振り返り、今後の人生について思いを馳せる。美しいイタリア人女性のヴェロニカ、暴力的だが若く才能のあるブレサック、戦争ジャーナリストのデスピエール、石油王のホルト、それぞれが日常に直面しながらローマの光のなかで織りなしていくカレイドスコープのような物語。表紙挿画─和田誠。
-
4.0無類に面白い短篇小説選集。 1930年代の大不況時代、そして第二次大戦、さらには傷だらけの戦後を背景に、アーウィン・ショーは数多くの短篇小説を書いた。もっとも有名な「サマードレスの女たち」(「夏服を着た女たち」)は「ニューヨーカー」に掲載され〈都会小説〉の名作として日本でも多くの読者を得てきた。しかし、時代順に配列され、まるで長篇小説のように編集された本書を読むとまったく別の像が浮かんでくる。 三十年代のアメリカ人の群像(タクシー運転手、保安官助手、フットボール選手など中産階級以下の民衆)が生き生きと描かれ、第二次大戦下の兵士たちは困憊し、惑乱している。そして戦後――最後に収められた「いやな話」はまるで悪化した「サマードレスの女たち」のようだ。 《「時代」の歩みが、この作家の鋭敏なレンズを透過して屈折し、現実の情報よりも遥かに現実的なかたちで、あなたの胸に像を結ぶだろう》 劇的な構成力と、無類に面白い筋の展開を堪能できる傑作短篇集成、待望の文庫版を電子化!
-
-1964年のある日の午後、第二次世界大戦退役軍人のユダヤ人フェデロフは、息子の野球試合を見ながら過去50年を回想する。移民の息子に生まれ、よき妻に恵まれ、元気のいい二人の息子をさずかった。いまも健康だし、ビジネスもまあまあ成功した。……俺が死んだら、とフェデロフは思った。火葬にしてもらおう。お祈りなしで。俺の灰なんかどこかに捨てればいい。俺が幸福だったところに。ヴァーモントの野球場の芝生に。ニューヨークの街で童貞と処女がはじめて愛をかわしたベッドに。戦時中の夕方、休暇中の軍曹がアメリカの赤毛の美女と並んで佇んだ、パリの家並を見おろすバルコニーに。息子のゆりかごに。晴れわたった夏に泳いだ大西洋の大きな波間に。そして、愛する妻の優しい手のなかに……夏の日の声はいつの時代も同じだった。
-
-