アダルト - ROMANBOOKS作品一覧

  • 悪女
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    「あたしは男好きで、浮気な女よ!」実際、由美子はそんな女だった……。冷たく気紛れで、そのくせ変に優しいところもある「悪女」。何よりもその、ムッチリした官能的な浅黒い肢体、野性的な妖しい魅力が男たちを惑わすのだ……。商業美術家・青柳茂也が同棲しているマネキンの由美子は、現代の妖精だった。一本気で正直な茂也は、そんな由美子の悪女ぶりに困惑し、苦しみ悶えながらも、その見事な肉体に酔い痴れて、ずるずると妖しい世界に陥ち込んでいく。男と女の隠微な世界を鮮烈なエロティシズムの中に描いた表題作ふくむ、全9編を収録。
  • あげちゃいたいの
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    芥川賞作家から官能小説作家へと進んだ大ベテランが、現代っ子OLの性体験をあからさまに描いた官能長編。好評「あたし」小説――あたし、今年やっと成人式を迎えるOLなんです。名前はユリ、自分でいうのも変だけど、グラマーで美人、それにまだ処女なんです。そのせいかしら、新年早々満員電車のなかで、二人のチカンに前後をはさまれちゃった。もちろん会社の男性にもモテモテなんです。陰険な上役の課長には、新宿の飲み屋のお座敷で犯されそうになっちゃうし、スキーバスの中では、マジメ社員の鈴木さんのアレを見せられたり、もう散ザン。でも、あたし、心の中ではヒソカに楽しんじゃってるんです。
  • 紫陽花の女
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    新幹線「ひかり」号で、ふと隣合わせになった、涼子のはかなく冷たい面影は、さすがのプレイボーイの彼の心をとらえて離さなかった。しかし、涼子の前には、黒い雲のように別れた夫が立ちふさがり、最後の別れの晩、涼子は彼の胸の中ではげしく燃えた。そして堪え入った涼子の眼に、紫陽花を濡らす雨のような涙の玉が落ちる――という表題作「紫陽花の女」をはじめ、冷たい横顔の女にふと浮かぶ哀愁の色を繊細な筆で綴る「孤独な嗚咽」「路傍の令嬢」「処女開花」「蜂蜜色の魅惑」「火と氷の女」の6篇をおさめる。傑作短篇集!
  • いじわるな唇
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    隣室に住む洋子の声が時々、那可子の部屋まで聞こえてくる。それは、罵詈に属する言葉である。まだ少女のような女に罵られて黙っている男の気持が、那可子には腑に落ちない。男は、50近い年配である。男がいない時、洋子は、若者たちを呼び入れて不埒な行為をしているらしい。ある日、那可子は、男を自分の部屋に誘い入れた。洋子の不謹慎を男に教えたい気持と、男と浮気したい気持を、那可子は、半々ずつ持っていた。男の技巧は、幼稚だった。と、急に男は、顔を踏みつけてくれと那可子に頼んだ……。変態の男と、男を足拭き程度に考えている女の、奇妙な関係を描く表題作のほかに、8編を収録。
  • 逸楽
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    芥川賞作家から官能小説作家へと進んだ大ベテランが描く、現代の性を追求する異色作7篇――レスビアン・ショウの女役・リカは、相手のカズミが最近、別の女に関心を持ちはじめたことが不満だった。痴話喧嘩の果て、ある夜リカは家を飛びだし、知合いの作家をホテルに訪ねた。リカの類まれな腹の美しさに魅せられていた作家は喜んで招じ入れたが、そこへカズミがもう一人の女を連れてやってきたのだ。女同士の陰湿な嫉妬心と対抗意識から、リカは得意の切腹ショウを演じることになる。やがて、冷たい刃が琥珀色に輝やくリカの腹に細い赤い線を刻み上げていった……。という、戦慄的な美と倒錯的な感動を描く「腹の逸楽」のなど、現代の性を追求する異色作7篇を収録。
  • 色事師
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    すばらしい肢体と美貌が男を惑わすホステスの亜紀。ドン・ファンとして名高い絵描きの伊達は、念願かなって彼女と一夜の情事をもつことになった。その夜の営みのとき、亜紀の見事な肉体に酔い痴れていた伊達が、彼女と一つになろうとした瞬間、亜紀は冷ややかに痛烈な言葉を放った……。色事師の異名をもつ男の奇妙な情事を濃厚なエロティシズムの中に描いて、現代人の欲望の生態と、微妙な男女心理のひだを大胆に抉った表題作「色事師」。他に「裏切られた情事」「情炎の果て」「色っぽい童女」など、北原武夫独特の、現代の愛とセックスを描く力作7編を収録。
  • 色めぐり
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    ジーンズ・メーカー社長の森崎は、30代で独身である。マンションの一室をアジトにして、大胆かつ臨機応変な手法で、次から次へと女を誘惑している。向かい部屋にいた湯川奈美とは、全裸写真を盗み撮りして糸口を作ったし、高校教師の松野輝子のときは、教え子の件で相談を受けたその日にホテルに連れ込むことに成功した。女たちの年齢や職業はさまざまで、雑誌記者、テレビ司会者、高校生などである。ハプニングな性の実現に最大のよろこびを覚え、華麗な情事体験を続ける一人の男を通して、現代人の赤裸々な愛の姿と性の深淵を、巧みなタッチで描く長編。
  • 陰に陽に
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    声優の殿川は40歳、テレビドラマの私立探偵アーチー役の吹替えで人気を得、私生活でもいっぱしのプレイボーイだった。前の細君とはずっと以前に別れ、いまは、娘ほども年の違う流実と結婚している。なのに、平凡な生活では物足りない彼は、次々に新しい女と浮気を重ねた。そして、単なる浮気に飽きたらなくなった彼は、より濃密な刺戟を求めて、やくざのヒモがいるという女と接して、スリルを味わうようになる。一方、流実にも、殿川には悟られてない秘密の時間があった……。性の実現に最大の喜びを覚え、次から次へと女を誘惑して歩く男の、華麗な情事体験を描く異色長篇小説。
  • 美しい獣
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    生暖かい靄の中で、柔かい吐息とともに洩れて来る、優しさと甘えにみちた、切れ切れな女の歓喜の声……。男の巧みな愛撫にに何の反応も示さなかった女の体は、ふとしたはずみに試みた愛のかたちに激しく燃える……。マドリッドからニースへ向かうエールフランス機で見かけた、日本人離れした美貌の女・由利と日本で再会した俳優・足立駿の、官能の極致を唆る、華麗な情事小説「美しい獣」のほか、ファッションモデル・百合の強いられた愛の秘密と、死に至る不倫関係を描く「密室の中の百合」など、女の愛と性を甘美な情趣に包んで描きつくした、官能情事小説全5編を収めた傑作集。
  • 悦楽の傷み
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    綾子は、戸村との結婚を真剣に考えるようになってからのある日、クラスメートの村井に電話をした。彼女は、村井に誘惑してもらいたい気持ちだった。プレイボーイの村井は、彼女が予想した通りに、ことを運んでくれた。千駄ヶ谷の旅館で村井に抱かれたとき、彼女は、その日の冒険の原因になった戸村の浮気など、どうでもいいという気分になっていた。悦楽の中にのめり込みながら、自分の中の女が声をあげていた……。平凡な働く女性の肉体と心の奇妙な交錯を、しゃれた筆致で描いた「悦楽の傷み」の他に、「女体感応」「失神作家」「獣と会った日」など8篇を収めた珠玉短篇集。
  • 欧州色めぐり
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    もの書きを職業としている今井の専門は、「好色」ないしは「女体」である。だから、世間では一応、プレイボーイで通っている。彼が外国旅行をする場合、各所旧蹟にはまったく関心がない。女、動物園、食事、この3つに関心は絞られる。そのうちでも、一番は女である。彼の予定としては泊る数だけ女と寝ることである。ロンドン、ブリュッセル、マドリッド、パリと、ヨーロッパの夜を、次から次へと女を誘惑して歩く男の華麗な情事体験を描いた「欧州色めぐり」の他、「マウナ・ケアなんか」「新・欧州色めぐり」「瘋癲序曲」「沈んだ関係」を収録。心こまやかで冷酷な性の世界を描く魅力溢れる作品集。
  • お菓子の家の魔女
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    芥川賞作家から官能小説作家へと進んだ大ベテランの、妖美異色の伝奇趣味溢れる短編集――妻がお菓子を焼いている間に、男はその会に出席したのだった。4人の驕慢な女性たちの白いお尻が、タイツからハート型に露出して輝いている。男は苦しかった。全く自由を奪われて肉体をもてあそばれているのは、えもいえず快よい。(「お菓子の家の魔女」)…鞍馬の山に鬼が出た、という噂が京にひろまった。雪が消えて炭焼小屋に戻ってきた木こりが、小屋の中に恐ろしいものを見た。髪も髯もぼうぼうとのばしたすさまじい男が、人間らしいものをしっかとかかえこみ、股からむさぼり喰っていた、というのである。(「姫君を喰う話」)…など4編。
  • 落ちる実
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    大町は、ふゆのに誘われて、彼女のアパートに泊りに行く。ふゆのの妹・りえは、ふとんを3つ並べて、先に寝ていた。姉妹の真中に、大町は寝ることになるが、それは、ふゆのによって、はじめから仕組まれた筋書らしくもあった。大町は、あやしい刺激を受ける。そして、彼は、りえが、自分の友人の秋山とも交渉を持っていることに、興奮を新たにするのだった……。セックスの地図をあますところなく踏破して行く男を描くことによって、作者は、生きていることの充実をどんらんに追及する。巧まざる健康なユーモアにあふれた異色長篇小説。「肌色あつめ」第2部。
  • 男たらし
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    芥川賞作家から官能小説作家へと進んだ大ベテランが描く、江戸の町の四季おりおり、大評判のあたし小説決定版! ――この頃めっきり、春めいてきて、砂ぼこりのまじったあったかい風が吹いたりして。桜の蕾も、一雨ごとにふくらんできてるみたい。なんとなく、悩ましくって。女の一人寝がもったいないという気になっちゃうんです。夜なんか、なかなか寝つかれずに、太腿に夜着をはさんで、寝がえりばかり、うってることがある。腰巻をひらいたあそこに、丸めた夜着を、こすりつけるように、したりして、あたしってすごく体がほてる性質なんです。夜這いにくるほど、勇気のある男ってこの長屋にいないのかしら……。
  • 女・色見本帖
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    あの夜の奇妙な情事! 女の隠微な体臭や樹液の味わいまで知りながらも、なぜか営みを果たすことが許されずに終わった、残酷な愛撫……。ただ一度の情事が忘れ難く、女に会おうとしても会えず、その肢体を生々と苛立たしく思い起こしていた男の前に、ついに女が現われた。しかしそれは悪夢のような一幕だった……。第1話「悪夢を秘めた女」から第10話「暁子のついた嘘」まで、現代の「いろ鮮やかな」愛とセックスのかたち、大都会に生きる男女の、欲望にからむ心理のあやを、鮮烈なエロティシズムの中に描き、奔放な愛の世界を大胆に抉った力作。
  • 女ごころ
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    女の心は小さくて、底の浅い盃のようなもの。すぐ一杯になって、他の何も入らなくなるの……。激しく短かかった恋のため、一切を捨て、名門の家庭を去り、社会的にも葬り去られた水枝。奔放な激情の女が、10年前の恋人と再会した。しかし今の彼女には、新しい愛人への灼けつくような恋しい思いだけで、昔を偲ぶ感情も何もなかった。男のように、昔のことをいつまでも忘れずに覚えてはいられなかった。――女ごころの不可思議さと人間の寂しさ・哀しさを鮮やかに抉り出した好短編『女ごころ』、そのほかに『聖処女』『恋の女』など、現代の愛と性を描いた全10編を収録。
  • 女じめり
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    芥川賞作家から官能小説作家へと進んだ大ベテランが、ユニークな文体と軽快なタッチで明るいエロティシズムを描く官能長篇――仮にもあたし、あの人の、義姉なんだもの。あたしみたいなお色気たっぷりで、どこもここもムチムチした女ざかりのからだに、もし徳さんがフラフラとなって手を出してきても、うまくそらして、無事に妹の手にもどしてあげなくちゃ。それでも、もしあの人が、しつこく迫ってきたら、どうしよう。夜なんて、あんなにせまい家に二人きりで寝るんだもの。いくら義理の姉と弟だといっても……。江戸の町の四季おりおり、恥ずかしいことの大好きな大工の若女房がまき起こす、ハプニングの連続。
  • 女体育教師
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    芥川賞作家から官能小説作家へと進んだ大ベテランが、女体育教師の生態をユーモラスに描いた「あたし」小説――あたし、女子体育短大を出たばかりなんです。腕も腿も健康に張りきった、ピチピチの19歳なんです。就職難で卒業後、半年待機させられたけど、都下の中学・高校併設校に勤務することになったんです。でも、体育の先生って思っていたより、ずっと大変。保健体育の授業で、マセタ女生徒たち相手に男性自身を黒板に図解させられたり、体育館で何人もの男の先生たちに床(ユカ)運動ならぬ床(トコ)運動の特訓をさせられたり、結構、勤務はキビシイ。でも、ウブだったあたしも、おかげで女としてだんだん成熟してゆくみたい……。
  • 女の美食
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    岡村は、由紀の体や顔を眺めながら、おこなうのが好きだ。由紀は、歩く時にも、ちょっとした仕種も、ゆっくりとしている。岡村は、由紀には官能の素質があると、前からにらんでいた。それはやわらかそうな体の線や、着やせする小造りの骨細な線、白いきめ細かな肌などから、そう思っていた。愉悦を覚えている由紀の顔の中で、いちばんエロチックなのは、開いた口だ。前歯が覗き、めくれた上唇のまだらな口紅の跡とか、前歯の裏側に当てられている舌の先とかの眺めが、岡村を興奮させる……。性の美食家の目にうつる女の微妙な成長を丹念につづる「美食」をはじめ、「笑いながら」など、傑作6篇を収録。
  • 女の都
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    宮川実は、50歳に手が届こうとしている、情痴小説を書く流行作家である。そのためには、絶えず女体についての研鑽をつまねばならないと思っている。そこで、3度目の妻・周子の眼をごまかしながら、銀座ホステスや女優・タレントたち、高校教師時代の教え子などとの交渉を、セキララに小説にしている。また、天涯孤独の女子高校生・種村津子を渋谷のマンションに住まわせ、その急速な性の開花ぶりに、目を瞠るのだった。しかし、やがて、意外といえば意外、当然といえば当然といえる結末が訪れる……。著者自身と覚しき主人公の行動を通じて、性の深淵を鮮烈に描く爆弾欲情小説。
  • 女歴
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    女性研究家の肩書きを持つ青池妙五は、熱心な実践的女性探求家である。中年男の彼には、20代半ばの後妻と、中学2年になる男の子がいる。しかし彼は、パトロンを持つ夫人をはじめ、スナックのマダム、女子大生、デパート・ガール、バーのホステスなどと、次々と関係を深めていく。好色であり、才能があり、上質の肉体的構造を持っている理想的女性を求めて遍歴する青池妙五の身に、やがて意想外の事件がのしかかる……。「誘惑」に人生の悦楽を、「情事」に人間の実存を賭ける男の、超人的な女性遍歴を、川上宗薫一流の筆致で描いた異色の長編小説。
  • OL日記
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    芥川賞作家から官能小説作家へと進んだ大ベテランが、濃厚な描写とユーモラスな筆致で描く、社内セックス小説。――あたし、高校を卒業したばかりのピチピチ新入OL。今日はいよいよ入社式の日だけど、何か起りそうで、ちょっぴり不安で、ちょっぴり楽しみ。そしたらさっそく人事課長さんたら、あたしたちを並べておいて、上から下へ下から上へ、なめ回すみたいにジロジロジロジロ見るんです。やっぱり何かが起りそう……。研修旅行で坐禅を組まされたその夜、先輩社員との間で起こったアノ事、専務室に書類を届けに行ったソファーの上で、突然専務さんたら……。昼休み、中年社員に連れ込まれたラブホテルでのあわただしいデキゴト……。
  • 渇きの日
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    滝乃の体は、日常にないものへの渇きに、いらだっていた。電車の中で白い指の男を見つけて合図を送ったり、高校時代の教師を呼び出して、その渇きをいやそうとするのだが、やはり、彼女は、体が何かを求めてあぶくを出しながら煮えたぎるのを、どうすることもできないのだった。そんな彼女は、ある日、陽に灼けた上半身をむき出しにして建築現場で働いている2人の労働者と、声を交わした。間もなく2人の労働者と滝乃は旅館へ……。という「渇きの日」の他に、「処女前後」「二度目から素敵」など、全11篇を収めた魅力短篇集。
  • 完全な女
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    芥川賞作家から官能小説作家へと進んだ大ベテランが、愛はどこまで教育が可能であるか、果敢なテーマで「神の領分」に挑んだ現代小説――蘇我と朝子との契約は、互いに侵されることのない対等な、二つの個性の接触という関係を保つことにあった。デパートの女子店員からモデルへ、そして大学進学、雑誌ライターと華やかに転進しながら朝子は、一方的に蘇我の手で、完全な個性としての女性につくり上げられていくが、彼との初夜を契機に、彼女の心に宿命的な「女」が目ざめ、朝子は彼への献身的な愛に埋没しようとする。蘇我にとって、愛の美徳は愚劣にすぎなかった。やがて朝子は彼と別れて、別のボーイフレンドに傾いていくが……。愛はどこまで教育が可能であるか、果敢なテーマで「神の領分」に挑んだ現代小説。
  • 官能の女
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    鳥居恭に、「棚からボタモチ」がころがりこんできた。友人の結婚式で会った、彫りの深いインド人のような美女が、一晩トコトンつきあいたいと申し出たのだ。きけば、気のすすまぬ見合い結婚を前に、相手の男に復讐してやる気になったという。思いがけない一夜の幸運に酔いしれる鳥居だが、それにつけても思いだすのは、毎日通勤電車で見かけるあの女のこと。豊かな胸をもち、歩くたびに腰の部分にポックリえくぼができそうな、つまりはこぼれるような愛嬌がにおってくる、理想のタイプの女なのだ。日頃の空想を実現するため、鳥居は大胆な「行動計画」に着手した……。
  • 官能の気配
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    私は、都心のホテルに泊って、4日目になっていた。最初の3日間は、仕事に打ちこみ、あとの4日間は、女を入れ替り立ち替りそのダブルベッドの部屋に引っぱりこむことを考えていたのだが、不意にギックリ腰におそわれた。ギックリ腰のまま、行為は可能だろうか? 秘策を思いついた私は、ホテルにとじこもったまま、次々と女を呼び入れて行った。白人の外国人スチュワーデス、看護婦、女マッサージ師、巫女……。さまざまな女たちとの奔放なセックスの形を克明に描いた快作「満開ホテル」の他に、異色の官能短篇小説4篇を収録した、鮮烈な作品集。
  • カンバスの中の女
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    一夜の真摯で奇妙な愛の営みのあと、黙って遠くに去って行った女。それを知った男の胸には、歯切れよい、爽快な空白感だけが残り、怨みがましさや未練などの感傷はなかった……。やもめ暮らしの中年の画家・俊彦の許に出入りする雑誌記者・由利子は、爽やかで不思議な魅力のある女。ある夜、酒の入った彼女は、妻ある男を愛し、その子を宿していることを告白してから、俊彦に狂おしく愛撫をせがんだ……。そして、由利子が何も知らさずに去ったあと、俊彦はカンバスに神秘的な女の姿を描くのだった。という微妙な女心とある愛のかたちを描く表題作の他に10編収録。
  • 気が遠くなる
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    癒ることのない肝臓ガンに冒され、顔色もすっかり黒ずんでしまったという中年男・沼崎から、死ぬ前にやっておきたいことが一つだけある、と口説かれた銀座ホステス・敏子は、その願いを叶えさせてあげることにした。これまで男性不信の月日を過してきた敏子は、沼崎によって真の女の悦びを知らされたが、その悦びよりも、悦びを与えてくれた男がもうすぐ死ぬという事実の暗い悲しみの方に、押しひしがれていた。しかし、やがて敏子は、ゴルフ場でこの男の意外な素顔をかいま見てしまった……。という表題作のほかに、「裏切る」「秋のロマンス」など4篇を収録する、著者会心の官能小説集。
  • 危険な日記
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    愛を「肉体でかわす会話にすぎない」と考えている、若き美男の主人公・大河内雄吉の、ストイックではあるが、果敢・鮮烈な「愛」の数々……。美少女・水無子への「切実」な愛を中心に、ショー・ダンサー、ファッション・モデル、服装デザイナー等々の「現代の女」との大胆な「愛」を、主人公の克明・率直な日記で辿りながら、現代的な「新らしい魅惑」の世界をつくる北原武夫の長篇。若きゴールデン・ハンターの、華麗な数多くの女たちとの「肉体でかわす会話」を追うことによって現代の若き「愛と性」の尖端を描いた、北原文学の話題作!
  • 危険な娘たち
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    郊外の分譲地で、ふとしたキッカケで知り合った男に、惹かれていく房子。夫婦のトラブルで苦しむ義兄によって、ふしぎな女心に目ざめる玲子。ペンフレンドへの手紙に、大胆にセックスの渇きを訴える紀子。中学時代の先生への淡い憧れが、ライバルの出現によって、燃える恋にかわるたまえ。ベッドにしのび込んできたいとこの、幼い愛撫に傷ついたゆき。5人の思春期の娘たちは、愛と性の危険な時間を、どう受け止めただろうか。……性の万華鏡を描くことによって、男の女の原質を捉えようと試みる作者が、若い季節の秘密に、新しい手法でメスをいれた、異色青春小説である。
  • 黒水仙の夫人
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    小説家・土岐亮は、仕事の疲れをいやすため、不意に思い立って京都を旅した。紅葉した東山の辺りから南禅寺へ向ったある日の午後、山門に佇む哀愁をおびた美貌の人妻・理恵に出会い、その魅力のとりことなった。その象牙色に冴えて冷たい光沢を放つ肌との肉体の会話に、土岐の炎が激しく燃えた。一方、理恵と4つ違いの腹違いの娘・暁子も、若さの魅力を武器に、土岐との情事に身を灼くのだった。熱く燃え沸る官能の炎、激しく求め合う水底の叫び、華麗な情事の構図と愛欲の翳りに、鮮烈な性の深奥をえぐる傑作「黒水仙の夫人」のほかに、「女の恥辱」「もの言わぬ官能」など4編を収録。
  • 獣の悦び
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    芥川賞作家から官能小説作家へと進んだ大ベテランが、人間の獣性を眼をそむけずに追求した異色作ほか8篇――アルバイト学生の公雄は、高校時代からの友人・信也の「どれい」だった。「どれい」の屈辱に耐えながら、信也の行状を、アメリカにいる彼の母に書き送り、その謝礼として、多額の送金を受けていた。傲慢な信也は、公雄の女を、公雄の見ている前で犯した。セックスの支配と裏切りを通じて、二人はそれぞれ、獣のような、倒錯した悦びを感じ始めていた。……という表題作「獣の悦び」は、人間の獣性を、眼をそむけずに追求した異色作。本書には、同じような姿勢で、仮面の裏側に挑んだ短篇「柘榴」「飢えと怒りの夏」「光と風と恋」「雪女の贈り物」など、計8篇を収録している。
  • 恍惚の刻
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    深夜の長い坂道の上で、夏子は、車のエンジンをとめた。サイドブレーキを戻すと、車はそのまま走り出した。その中で、夏子は、大町に挑んできた。夏子と大町は、狭いシートの上に、重なって倒れた。運転者の姿の見えない車が、しだいに加速しながら、滑って行く。わずか3分間ほどの、恐怖を伴った異常な興奮は、すばらしかった。それは、セックスの園を長くさまよいつづけた大町にとっても、はじめての経験であった。……「肌色あつめ」「落ちる実」の連作として書かれ、底の知れないセックスの世界に、この作者ならではのメスをいれたユニークな長篇小説。
  • 好色演戯
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    中年のテレビ俳優である足立家に、ひょんないきさつから、夫婦だと称する若い男女が、住み込みのお手伝いとして同居することになった。この若い網夫婦、仕事は朝から交代でよくするのだが、なにしろ一つ屋根の下に赤の他人の二つ夫婦が寝起きするのだから、なにやら妙な雰囲気だ。男盛りの好きものである足立には、若いカップルの夜が気にかかってしようがない。ある夜、足立は、網夫婦の寝室を秘かにうかがおうとした。ところが、敵もさるもの、網夫婦も足立夫婦の夜をぬすみ見ようとしていた……。意表をついて展開する好色コメディの表題作、ほかに傑作短編3作を収録。
  • 色名帖
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    宇津は、同窓生の初枝と久しぶりに会い、そして彼女の部屋に泊ることになった。初枝が、マリリン・モンローと同じ方式で、眠りの仕度を始めたので、雰囲気がしだいにおかしくなってきた。ちょうどその頃、小見山は、会社勤めの郁子を誘い出すことに成功していた。カメラマンの小見山は、彼女を写真のモデルに使いたいと言ったのだが、ほんとうの目的は、他にあった。小見山は、公園で声をかけた未知の女性でも、その日のうちにモノにできる自信を持っていた。……この小説は、二人の男の行動を通じて、作者が、女性ハントの秘術を語り尽した、長編小説である。
  • 痺れる女
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    秋山が、芸者・菊丸と逢引きしたり、ヒモつきの女の体のすばらしさに、うつつをぬかしている頃、大町は、レズビアンの女・美智子を、自分の情事の相手・りえに引き合わせていた。秋山は、大町が主宰しているコンボのドラマーだ。二人の男の情事の進行には、音楽喫茶モンクールでの、気の合った演奏のような、あやしい雰囲気のハーモニイがあった。秋山は、ヒモの男にあるアパートへ拉致された。大町は、二人の女を同伴旅館へ連れ込むことに成功し、彼女らの愛し合う様子をつぶさに観察する段取りをつけた……。円熟したセックス描写が冴えてきた快作「新・肌色あつめ」の第2巻。
  • 十三夜
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    貝がもだえるような感覚につつまれ、小さなふるえに身をゆだねながら、男の体は次第にたかまってゆく。処女かどうかの自覚さえもない程度の性知識しかない女子大生の圭子……自分の娘のような年齢の彼女に、女関係の豊富な小沼は、新鮮な興奮をおぼえた。骨細でふっくらとした肉体の内部に秘められた微細な構造、その並々ならぬ素晴らしさが、小沼をとらえて離さない。連続十三夜にわたる、若い娘と初老の男の肉体のドラマを通して、次第に開花して行く女の性のかたちを鮮麗に描いた傑作「十三夜」のほか、「いつしか連夜」「白粉の気配」など、官能傑作小説全5篇を収録した異色の短篇小説集。
  • 好きで上手で(上)
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    芥川賞作家から官能小説作家へと進んだ大ベテランが描く、色香溢れると評判のあたし小説――あたし、深川で芸者をしていたんですが、今の旦那に見染められてお妾ぐらし。でも五十男の小商人の旦那、商売に頭を使いすぎるせいか、あっちの方が強くないんです。それで、あたしはいつも、女ざかりのからだをもてあましているんです……。旦那がくるので、入れ混み湯にいったんです。そこで幼な友達の源さんに会ったんです。源さんのものすごくりっぱなんで、あたし……。湯上りに旦那と二人でウナギを食べにいったんです。そこへ花蝶院さまという高貴な女性がいらっしゃって、ウナギが花蝶院さまのあの部分にもぐりこんで大騒ぎ……。<上下巻>
  • 砂に濡れた女
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    「あんた、わたしが好きなんでしょ、だったら、抱いてもいいわよ」自分のヌード写真に陶酔しながら、亜矢子は気軽にそう言い放った……。写真家・織本信吉がヌードを撮った新進女優・原亜矢子は、美しい肢体の持主だった。少女のあどけなさと年増女の爛熟味を兼ね備えた身体! その妖しい肉に酔い痴れた信吉は、彼女と婚約するが、ヌード写真が評判になり映画の主役に抜擢された亜矢子は、信吉を裏切る。その後、映画に失敗した亜矢子が、失意の彼の前に現われ、信吉は再び欲情の虜となってしまう……。現代の愛と性、女の哀しい虚栄を鮮烈に描いた表題作ふくむ7編を収録。
  • それはないよ
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    かなり大きな出版社の出版部門の部長である茂木は、通勤の地下鉄電車の中で、ユキ子に声をかけた。小柄で、やわらかそうな肉付で、構造も当然小さめ……と茂木は確信していたのだが、いざラブホテルで二人っきりになってみると、意外に楽々と彼は迎え入れられていた。こうしたゆるめの構造に、彼は弱いのだ。〈それはないよ〉という気持で、茂木はユキ子と別れたが、半月ほどたって、二人がばったり再会したのは、会社の廊下でだった。彼女こそ、会社の噂の女であったのだ……。という表題作のほか、「男の初夜」「手切れ金」「バラの日々」「色細工」「すぐ眼の前に」の5篇を収録する官能小説集。
  • 多角関係
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    みかけによらず浮気な女の、鳥飼の細君・冴子は、夫に秘密で、他の男の子供を生んだ。しかし鳥飼は、冴子に疑いを抱いていない。子供も自分の子だとばかり信じこんでいる。そのことを、冴子は楽しむように小坂に話した。小坂は、鳥飼たちが結婚する前、冴子と交渉があった。しかも、鳥飼に冴子を紹介したのは、小坂である。ようやく、鳥飼が、冴子に不審を持つようになった。そして、小坂を呼び出し、小坂と冴子の以前の関係に、さぐりを入れてくるようになった。――官能と肉体の神秘を求め、文学の性的世界にユーモアを導入して、新機軸を築く、川上宗薫の傑作短編集。
  • 食べられたいの 見習い看護婦日記
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    芥川賞作家から官能小説作家へと進んだ大ベテランが、現代っ子看護師の若さ溢れるお色気をコミカルに描いた、大評判「あたし」小説決定版――あたし、ピチピチした19歳の看護師見習い。外科のほかに、産婦人科や泌尿器科のある大きな病院につとめているんです。でも、その病院、とってもヘンな病院。産婦人科の老先生や泌尿器科の綺麗な女医先生、それに患者さんたち、みんな、とってもエッチなんです。精密検査を受けにきた男の人には特別に念入りなマッサージをさせられたり 盲腸で入院している中学校の先生にはムリヤリ処女を奪われちゃったり、もう散ザン。でも、あたし、心の中ではヒソカに楽しんじゃってるんです……。
  • 耽溺
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    芥川賞作家から官能小説作家へと進んだ大ベテランが、現代人の性をさまざまにとらえた力作8篇――私は子供のころから警官の凜々しい姿に憧れていた。あの逞ましい肉体と鬱屈した精力の匂い。そんな私も人並みに恋をした。相手は同じ大学の秀才で、尖鋭な学生活動家だった。偶然の機会から彼女の秘所をかいまみた私は、いっそう愛慕の念をつのらせていった。デモに参加したのも、ただ彼女の軽蔑を恐れたためだった。角棒と放水、罵声とシュプレヒコールの渦のなかで、警官は堂々と動き、彼女は美しかった。そのとき、脳天に鋭い衝撃を感じて私は気を失ったのだが……。という、被虐的な悦びを大胆に描く「耽溺」のなど8篇。
  • 血の聖壇
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    芥川賞作家から官能小説作家へと進んだ大ベテランの力作8篇――「最近の同人雑誌のなかには性描写が露骨になってきたものが多い。この風潮についてご批判を頂きたい」との依頼を出版社から受けた作家のもとに何冊かの同人雑誌が届けられた。商業雑誌の小説のなかには金をめあてに書きとばされたものもあるだろうが、同人雑誌の小説は一字一字が血の一滴だと思いながら、同時に、その血の滴で書かれたに違いない性描写というものを読んでみたい誘惑に駆られる。共感できない作品のなかに一編だけ心にひっかかるものがあった。戦後新聞を賑わせた暴行殺人事件をテーマにしたらしく「血の聖壇」という題名であった。……という表題作など8編を収録
  • ティヴォリの情炎
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    5月の暑いローマで、人妻となった耀子と再会した信介の胸にあざやかによみがえったのは、6年前のある夜、東京の青山の深夜スナックで、はじめて顔を合わせ、その後ともに過した夜の苦い思い出だった。日本人離れした妖艶な美貌と、奔放で大胆な姿態は変わることなく、ローマの郊外ティヴォリで、誘われるままに、白昼夢のような甘美な一時を持った。マロニエの街並に消えた日本娘への思慕。若く美しいパリジェンヌとの快美な情事。異国情緒を豊かに散りばめ、海外に材を得て展開する華麗な情事の飛跡……。他に「トレドの遠い夢」など4編を収録。<「パリは今日も雨降る」改題作品>
  • トルコ日記
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    芥川賞作家から官能小説作家へと進んだ大ベテランが、ソープランドに就職した童貞ボーイにつぎつぎと起こるハプニングの連続をユーモラスな筆致と色香で綴る官能長篇――就職口がなくて、ボクは毎日、就職ニュースを読んでいたんだ、と、ボイラーマン募集、好遇、という三行広告が目に入って、張りきって出かけて行ったんだ……。ところが行った先はソープランド。毎日毎日、最低5人のノルマでソープ嬢の技術向上の実験台をさせられたり、新規入店の主婦アルバイトの美人を指導したり、そのうえ、スカウト係に任命されて田舎娘の初体験の相手までして、体がいくつあっても足りないくらい忙しい。ボクはチン上げを要求したいくらいだ……。 (注)現在ではソープランドと呼ばれている特殊浴場を昔は皆がトルコ風呂と呼んでいました。本作ではその時代を表す意味でも文学性からも昔のママの表現を使っております。
  • 縄目の快楽
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    芥川賞作家から官能小説作家へと進んだ大ベテランの、倒錯の性の世界を華麗に描く伝奇趣味横溢の物語集――作家である私は、人に顔を知られるのを好まない。私には強い変装趣味があるが、変装は私の官能世界を密度のあるものにしてくれる。私の仮面が見破られた唯一度の例外は、その男に会ったときだ。男はヨット仲間の爽やかで比類のない愛の交歓を告白したのだった。(「縄目の快楽」) 酔いのまわった老検校はうっとりして語る。「いや、昔は遊女にもよかおなごのおりましたな。優しゅうて、男にようつくしてくれて、男が踏んでくれといえば白か柔かか脚で踏んでくれ、蹴ってくれと頼めば優しゅう蹴ってくるるごとおなごの」(「花魁小桜の足」) など、倒錯の性の世界を華麗に描く伝奇趣味横溢の物語集。
  • 肉体演奏
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    紺野は、あるパーティの席で、樹良を知った。樹良は、国際的スチュアデスである。ひと目でその性的魅力の虜となった紺野は、あと一歩のところでスルリと身をかわす樹良を、執拗に求めつづけた。これまで女に肉体的価値しか認めなかったのが、恋情を抱くようにさえなった。そして、彼はついに、樹良を陥落させたのである。その夜、二人は激しく燃えた。ことに樹良の燃え方は、さすがのプレイボーイ紺野も驚くほどだった。しかし、次に会った時、樹良はきっぱりと拒絶したのである。あれほど燃えた樹良の拒絶する理由が、彼にはさっぱりわからなかった……。という衝撃の表題作など、全6編を収録。
  • 脱いで試して ―デパート店員日記―
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    芥川賞作家から官能小説作家へと進んだ大ベテランが、現代っ子デパート店員が売場狭しと繰りひろげる性態を描く「あたし」小説! ――あたし、若さ溢れるデパート店員、自分でいうのも変だけど、グラマーで美人、とても魅力的な女の子なんです。デパートにくるお客さま、とてもオカシナ人が多い。女の人が試着した水着を好んでペロペロなめるおじさんがいたりして面白いんです。あたしも、下着売場の試着室で、お客さまに失礼のないように体まで使ってサービスしてあげたり、オモチャを買いにきたサラリーマンには小さな戦車で恥ずかしいことをされたり、結構、勤務はキビシイ。でも、あたし、心の中ではヒソカに楽しんでるんです……。
  • 脱いで診たいの 看護婦寮日記
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    芥川賞作家から官能小説作家へと進んだ大ベテランが、現代っ子看護婦の若さ溢れるお色気を描く大評判「あたし」小説決定版――あたし、ピチピチした19歳の看護婦。自分でいうのも変だけど、グラマーで美人、とっても魅力的な女の子なんです。こんど研修学校に通うことになって寮に入ったのだけれど、そこでひどい目にあった。入寮1日目から、先輩のお姉さまたちに寄ってたかってヘンな身体検査をされたり、刑事に追われて逃げこんできた過激派の学生と反対セクトの女性活動家がフロ場で裸になってセンメツしあったり、もう散ザン。でも、あたし、心の中ではヒソカに楽しんじゃってるんです。<『食べられたいの』続篇作品>
  • 脱ぐ
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    内外航空のパイロット・吉原は、美人で評判のママ・真田光と、自由で気ままな情事を続ける一方、勤務で外国に行くと、精力的に女性を求め、スチュワーデスや外人女性と一夜のアバンチュールを楽しむことも忘れない。愛人の光のほうも、吉原の留守中は、その豊満な体をもてあまして、客の山崎と浮気をしたり、女優の枝村昌子とレズビアンを演じたりする。こうして、吉原と光を中心とする情事の輪は、だんだんと広がってゆく……。綿密な取材にもとづいて、パイロットという特殊な職業をもつ男の、日常と愛欲生活をみごとに描いた、魅力溢れる傑作官能小説。
  • 濡らされたいの
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    芥川賞作家から官能小説作家へと進んだ大ベテランが独身OLの性生活を描いた、評判の「あたし」小説――あたし、初体験をすませたばかりの新入社員OLで、名前はユリ。いろんなことに興味がありすぎて、好奇心のカタマリみたいな女の子なんです。このあいだも、遊びに行った千葉の家で、義兄にハダカを見られちゃったり、夜は夜で義兄夫婦の声で眠れなかったり、とっても楽しかった。それに夏の海水浴。途中の電車の中や海の家で、男の人にネラわれちゃった。あたしって、男の人の欲望をとってもそそるみたい。いろいろと危険な目に会っちゃって、あたし心も身体もだんだん成熟してゆくんです。独身OLの性生活を描いた評判の「あたし」小説最新作。<「あげちゃいたいの」続編>
  • 濡れて飛ぶ―スチュワーデス日記―
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    芥川賞作家から官能小説作家へと進んだ大ベテランが、スチュワーデスの性態を若さ溢れるお色気で描く「あたし」小説!――あたし、女子高校を卒業したばかりのビューティフルな女の子。憧れの航空会社の試験を見事にパスして、スチュワーデス見習いになったんです。でも、スチュワーデスの仕事って思っていたよりずっと大変。初めてのフライトでアフリカのジャングルに飛行機が不時着したり、怖いことも多い。それに、飛行機のお客さま、みんなとてもエッチなんです。ヘンなサービスを求められたりして、体がいくつあっても足りないくらい忙しい。でも、あたし、いろんな初体験のお蔭で、オンナとしてもだんだん開花してゆくみたい……。
  • 伯爵令嬢の妖夢
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    芥川賞作家から官能小説作家へと進んだ大ベテランが、波瀾に満ちた展開のなかに現代の性の本質をさぐる異色の長篇小説――旧伯爵家の令嬢という噂と、大学でつねに首席を占めているという評判が、奈緒子の美貌に、さらに神秘的な色どりを添えていた。非の打ちどころない婚約者との結婚も間近だった。しかし、彼女の体内にはもう一人の女、野卑への期待と自由への憧れが秘かに育っていた。結婚式の当日、奈緒子は安定した「幸福」から衝動的に飛び出した。その時から、奇妙な性の冒険がはじまる。静岡、神戸、松山、福岡と、予想もしなかった旅をつづける奈緒子を襲う、倒錯した欲望の奔流、そして彼女を慕う男たちの必死の追跡。
  • 肌色あつめ
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    女に声をかけて、親しくなる。さり気なく胸のふくらみの反応を、指でたしかめる。大町の指にかかると、女は、間もなく、ホテルの一室で、服を脱ぎ始める。女が裸になって行くときの顔を見るのが、大町は好きだった。女体への冒険旅行にのみ生き甲斐があると信じている大町だったが、あるとき手に入れた女に、彼は、ひとりの男の影がまとわりついていることに気がついた。そしてその影が、親しい仲の男であることを知ったとき大町は、ふしぎな快感をおぼえるのだった。……性を通じて、男女の心理のメカニズムを、あざやかにえぐり出した「失神派」の快作長編!
  • 春の渇き
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    郷子は、手島によって、女としてめざめた。郷子が結婚したあとも、手島は「会いたい」といい、彼女もまた、会いたくなるのだった。郷子の中の「女」は、彼女の意識を離れて、1匹のけもののように、生きていた。そのくせ彼女は、夫の小池との間を、なんとか平常の形で保っていきたいと努力していた。そんな郷子が、手島との違和を感ずるときが来た。彼女のからだは、小池でなく、渇きを充たしてくれる第三の男を求めるのだった……。セックスと心理のひだひだを、まさぐるように描いた「春の渇き」の他に、「不妊の歌」「犬と情熱」「声と楽器」など、全9篇を収めた珠玉集。
  • 薔薇色の門
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    性の歓びを知らない日本の妻。緒方敬子もその一人だった。小麦色のすばらしい肢体の持主である敬子は、並はずれた羞恥心と、みどり児の素直な魂をもち続ける。幼女期のお医者さん遊び、少女期のS、女教師の倒錯的な愛撫、そうした性の歴史も、敬子の心を歪めることはできなかった。戦争で失った清純な恋。粗野な夫は、彼女を肉の塊としか見てくれない。初夜と変らぬ屈辱と嫌悪にまみれた日々……そこに愛の不在を見ぬく年輩の商業美術家・三村に、敬子はいつしか惹かれていく。きわめがたい女の性の機微を、幼児期から克明にたどり、幸福への門戸を開く異色の傑作長篇。
  • ひっぴい先生遊蕩日誌
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    美しく魅力的な教え子と結婚したいという、ごく簡単な動機から、安永は、都心から1時間ほどの所にある公立高校の英語教師となった。女の子の数は、たしかに多い。しかし、どこか生ぐささの感じられる女子高校生たちは、安永の趣味には合わなかった。そこで、「ひっぴい先生」と異名をとる彼が、みずからの好みに忠実に繰りひろげる遊蕩日誌に登場する美女たちは、教え子の姉でデパートガールの田原泰子、他校の英語教師・徳山紀子、ボクシング部の猛者のうら若い義母・末松広子、喫茶店のウェイトレス・西田葉子など……。健康で豊艶なエロスあふれる、現代風ユーモア連作小説。
  • 痺楽
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    芥川賞作家から官能小説作家へと進んだ大ベテランが、性の世界をダイナミックな筆致で追求し、赤裸々な人間群像を描く異色作品集――高校の時間教師や家庭教師をやり、喰うだけの生活を送っていた主人公が、未亡人クラブへ勤めることになる。小金を持った未亡人を集め、パーティや男性の紹介をし、豪華な宣伝雑誌を編集して、事業へ出資させるクラブは、繁昌した。主人公は、そこで働く若い女事務員と交渉を持ち、一方、70歳近い女社長から出張先で夜中に奇怪な愛撫を受ける。醜悪な交渉に慄然とするが、以後、社長邸でその愛撫が続く。女事務員との激しい愛欲……そして妊娠。やがて破局がやってくる……。
  • 不倫の巡回
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    早田は、友人の野村の家へ遊びに行って、そのまま泊りこむことが多かった。朝、早田は、野村を車で駅へ送る。そして、野村家に引返し、野村の妻の左知子と、熱い情事に耽るのだった。早田は、左知子との不倫を軸にしながら、さまざまな女と、ハプニングな交渉を持つことに、生き甲斐を感じていた。人妻、女子大生、舞踊家、女優などと、早田の愛欲の対象は、めまぐるしく変わった。早田は、そうすることによって、女たちに、何ものかを与えているのだと、信じていた。……これは、セックスを描くことで現代人の虚無感を追求しつづける作者の、野心的な長篇小説である。
  • プレイ・ボーイ日記
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    膃肭獣(オットセイ)を思わせて、ぬめぬめと光り、しなう葉子の肢体。……官能の異常な深さも、これほどとは! 土岐は賛嘆し、溺れる……。だが、次には、あっけにとられた……。銀座でプレイ・ボーイの虚名を頂戴する洋画家・土岐も、足許にも及ばぬ見事な「チョコレート色の獣」葉子。という、甘美な性と陶酔のうしろに、現代の不毛をのぞかせた表題作のほか、独りの愉しみに溺れる若い妻を描く『告白の夜』、地下酒場の鋭い性を秘めた少女を描く『青春の穴倉』、飢えた美しい妻が燃える『背徳の目ざめ』など、現代人の性の生態を余すところなく描いた5編を収録。
  • 魔性
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    直美は、姉の夫である坂庭に、女として初めてのからだを開いた。人間にはあらゆることが起こり得るという、悪魔的な期待が、若い彼女の心をくすぐった。そのくせ、愛は、どこかで自分を待っていると信じていた。そんな彼女の前に、純情なボーイフレンドやシニカルな中年男の、熱く光る眼差しがあった。ある日、陶酔する官能と乾いた心の背反の中で、直美は義兄への殺意を抱く。自分をなにものかに証明するように……。という、女の深部にひそむものを、繊細な手つきで、あますところなくえぐり出した著者の代表作「魔性」の他に「悦楽」「消えた表情」「傾く旅」を収録。
  • 魔女日記
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    たくましい男の手が、繊細巧緻なテクニックで、私をやさしく愛撫する。とろけるように甘美な快感。私が長い間探し求めていたのは、フランス人の人妻を愛人にしている、この背徳を恐れない男だったのだ……。大学病院の助教授を夫にもつセクシイで背徳的な魔性の人妻・野口麻里子の、あくなき男性遍歴。年下の若くたくましい男、中年の落ち着きを見せるテクニシャンの男、金色のうぶ毛が光るアメリカ人……。さまざまな男性との交遊ぶりを、濃厚なエロティシズムの中に描きながら、現代的な愛と性を鋭く追求した、北原武夫の力作長編。
  • 真昼の天使
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    33才の美男の、しかも売れっ子のデザイナー・椿安利は、その圧倒的なドン・ファンぶりで、この世界の注目のまととなっている。彼は、数多くの女たちを、独特のドン・ファン哲学の実践により、その豊富な「体験のアルバム」に冷酷にくり込んで来たが、ふとしたことで、著名な画家の娘で、銀行の前途有望な課長・結城章吾の貞淑な妻・千賀子に魅せられて行く……。この現代のドン・ファンの恋愛哲学および実践と、この上なく美しくやさしい人妻・千賀子の恋愛を描いて、真に現代的な意味で、「人生を洒落て生きるコツ」を鮮やかに浮彫りにしている傑作。
  • 幻の美女
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    「ああ,あなた……」桂木夫人は、恍惚として甘い喘ぎを洩らし、白磁のような光沢を帯びた白い肌をうねらせて、なお、求めつづける……。プレイ・ボーイと自他ともに許す具象画家・九鬼竜彦が、パリから日本にもどって初めて出会った硬質陶器の肌の女、高雅な白肌が醸し出す夢幻の官能味……。九鬼は、ビロードにも似た柔かく熱い感触の中に吸われ、酔い痴れていく……。現代の性と愛を描いては第一人者の著者が放つ、快心の表題作『幻の美女』のほか、妖しくも甘美な同性の愛の世界を描く『レスビアン日誌』,その他『甦った女』など、好短篇全7作を収録!
  • 魔楽
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    芥川賞作家から官能小説作家へと進んだ大ベテランが描く、ある日本人の異常な逸楽の世界を伝える表題作ほか、現代人の性を描く力作6篇――5年前にインドに来たとき、私は将来を嘱望された商社員だった。しかし、この国の物憂い空気は私の気負いを次第に蝕んでいった。ムドウライに出会ったのはそんなときだった。この舞踊一座の少年の美貌は、たちまち私をとらえてしまった。彼の足を抜かせるために公金を横領し馘首された私は、やがて二人だけの愛の巣をもった。生活のために彼は外人男の夜の相手をし、私は嫉妬に苦しめられながら帰りを待つ。そんな腐り果てた生活も、私にとってかけがえのない幸福なのだ……。という、ある日本人の異常な逸楽の世界を伝える「魔楽」のほか、現代人の性を描く力作6篇を収録。
  • 見事な獣
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    美しく悪賢い、見事な獣が、狂おしく昂ぶり、あえぐ……。溶ろけるように深く柔らかな肌に、熱く絡み合った男の復讐劇! 12年前、友人に妻を奪われ、心の傷手を負った佐伯信吾は、その友人の女遊びの話を聞いた。冷ややかな好奇心に駆られて、女に会いに行った信吾が見たのは「見事な獣」だった……。繊細でエキゾティックな感じと野性的な妖しさが入り混った不思議な魅力……。友人をとりこにした女・房江は、信吾を一夜の情事に誘い、陰湿で奇妙な復讐を信吾に果たさせるのだった……。愛憎とセックスの世界を鮮烈に描いた表題作のほか10編を収録。
  • ミモザ夫人
    -
    「ああ…」亮の口から嘆声がもれた。貴族的な、と呼びたいほどの繊細で優雅な夫人の、なんと官能味あふれる裸身であろう。歓喜に酔う亮の耳に、夫人の前夫、洋画家・津村の教える「暗喩」が甦える。……亮は思いきって、そこに唇を触れ……息をのんだ。――激しい恍惚に身をふるわす象牙色の肌、とめどなく洩らす甘美なすすり泣き。しびれる頭の中で、亮ははじめて知った。女体に秘められた、妖しくも狂おしい異様な性! 大南部コンツェルンの御曹子、美貌の青年・南部亮の華やかな女性遍歴を通して、作者はここに、大胆に「現代の性」を抉り出す。話題の力作長編。
  • めざめる女
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    音楽茶房「モンクール」にレギュラー出演している、クインテットのメンバーの大町と秋山は、それぞれの持ち味と方法とで、女体の探検をつづけていた。ある夜、大町から秋山に電話があった。店によく来る中村房子というグラマーの女性が、処女を捨ててしまいたいと言っているので、その相手役をつとめて欲しいという話であった。大町が房子に執心していることを知っている秋山は、その奇妙な申入れにたじろいだが、やがて、ぞくぞくとした快感に包まれるのだった。……無限の拡がりと変化をもった色の道を、円熟の筆で描破した長篇小説。「新・肌色あつめ」の第1巻としておくる。
  • 夜行性人間
    -
    はじめて会った女性と、その日のうちに肉体の交わりを持ち、名も知らぬままに別れた経験が、高原にはあった。彼は、それを「完璧の情事」と呼んだ。そんなことは一度だけだったが、魅力を感じた女性を、自分のものにするために、高原は、あらゆる努力と術策を、惜しまなかった。相手が、良家の夫人であろうと女子高校生であろうと、彼は、いつも成功するのだった。社会的に産業デザイナーとして通っている男が、夜行性の超人として、ラブ・ハントのあらゆるテクニックを展開する……。都会の小ぎれいな生活の中から、裸の人間をシニカルにえぐり出した、個性的な長編である。
  • 夜光蟲
    -
    夫の部下・栗原に誘われて以来、岡村妙子は浮気の快楽を知り、建築技師の小松、テレビタレントの白石、そして、バンドリーダーのフィリビン人と、次々に相手を変えていく。一方、夫の岡村は、喫茶店のウェイトレス・片倉晶子、芸者・花代、クラブの女・リサ、会社のアルバイト高校生・諸岡とき等と、浮気を重ねている。妻は夫の、夫は妻の浮気を、互いに承知していながら、暗黙のうちに、それすらも一つの刺激材料として、より神秘な官能の深渕を求め、ふたりの性の要求はとどまるところを知らない……。人生永遠の課題ともいうべき性の可能性を、柔軟な筆致で描いた異色の長編小説。
  • 憂愁夫人
    -
    季節はずれの山中湖畔で、作家の雨宮が会った眉子は、どこか沈んだ暗さはあるが、しっとりとして、情感的ムードが漂っている女だった。激しく官能をゆすぶられる、一夜の情事。翌朝、女は雨宮に黙って立ち去った。忘れられずに思い悩む雨宮の前に、やつれはてた眉子が1月後、突然現われた。異常なほどに昂まった営みのあと、眉子は、ひきとめる雨宮を振り切って、霧雨の中に消えて行った。その夜、眉子は自殺した……。夫と恋人との間で数奇な運命に弄ばれた女を、哀愁をこめて艶麗に描いた表題作『憂愁夫人』のほか、『妖艶な残り香』など、全7編を収録。
  • 誘惑者の手記
    -
    ある日、私は、「全ての点で慎重に手入れされている」美貌の人妻・重任麻耶の魅力のとりこになる。私には長いつき合いの情人・早苗のほか、数多くの女たちがいるが、私は、私の頭からはなれない麻耶を征服するために、まず彼女の長年の友人・立松洋子を「囮」に使おうとする。この「囮」が、私を愛しはじめているのを知っての上で……。ケイリイ・グラントばりの魅力の持主で、生来のドン・ファン=黒田竜夫の秘められた、女たちとの「肉体で交す会話」を「日記」で辿ることによって女の性のはかり知れない深奥を、かってない強烈な迫力をもって描いた、北原武夫の傑作長篇。
  • 誘惑の午後
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    挿絵画家の井野は、ニコチン中毒者が、細くて白い煙草へ、つい手を伸ばしてしまうように、女に手をのばすのだった。まず、女に近づくためのさまざまな作戦があり、そして、それが成功したあとは、女体を征服し味わい尽すためのさまざまな試みがあった。井野は、しかし、女の体の上に重なりながら、たまらなく虚しくなることがあった。その虚しさに耐えきれなくなると、また街へ出て、他の女をさがし求めるのであった……。現代のもっとも異色的な作家として、あくことなく「性」を追求しつづける作者が、人間の原質を追求した、本格的長篇小説である。
  • 誘惑の森
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    <羊の眼>を侑子に教えてくれた男があった。それは、細毛が器官をくすぐる性具だった。バーに勤め出して3年になる侑子は、さまざまな男によって性の秘術を知った。そんな体験を繰り返しながら、侑子は、心の中で何かを求めていた。画家の福田が、そんな侑子にとって、特別な存在となった。ホテルで美しいけもののように燃えた翌朝、侑子はふと涙ぐんだりするのだった……。という、性のひだひだをあやしく描きつくした「誘惑の森」の他に、「魅惑の罠」「よろこび」「バッハと偶発」「失神派」「密議」「夢うつつ」の6篇を収録。著者の円熟ぶりを示す好短篇集である。
  • 夜ごとの肌
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    梶岡は、3日に1度媾合しないと、体の調子がよくなかった。父と一緒に歯科医を開業していて、生活には困らなかったが、独身なので、その3日目が来ると、患者の治療よりも、会うべき女のことばかり考えるのだった。若いということと熱心なことのために、彼は、その3日おきの要求をを充たしつづけた。あるときは、少女時代に彼にツンとしていた女と再会して、その日のうちにホテルへ連れ込んだし、あるときは、友人の妻と、その友人が眠っているそばで重なり合う幸運にもめぐりあった……。この長編小説は、夜ごとにかわる女の肌をなでるように描いた性のまんだらである。
  • 夜の果実
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    「私」は、深い眠りにおちている裸身の絵津子に、カメラを向けた。長い時間をかけ、すこしずつ変わるポーズを、可能なあらゆる角度から狙っては、シャッターを押しつづけた。そして、「私」の行為に気づかない彼女に向かって、一人きりの愉悦に浸った。絵津子は、かつての「私」の教え子であり、忘れられない女であったが、彼女が結婚したあと再会したとき、「私」は、自分の中に何かが失われていることを知った。「私」はその何かを取り戻そうと必死になっているのだった……。肉体のふしぎなからくりと、心の中の荒涼たる風景を、細密画の手法で、執拗に追求した、ユニークな長編。他に、短編「残存者」を収録。
  • よろこび
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    芥川賞作家から官能小説作家へと進んだ大ベテランが、現代のエロチシズムのありようをユーモラスに活写する、お楽しみ長編小説――本当の「よろこび」って、どんな感じかしら。あの気持ちは、みんな同じなのかしら。あたしのからだ、男の人に気にいってもらえるかしら。あたしたち、女3人で、自分の体験した感覚のすべてを正直にしゃべりあうことにした……。教えあおうと……。3人とも、とっても好色! あたしはホテルの宝石店の新入社員。逞しい外人に先ず誘惑されて……。スチュワーデスのあけみは凄い! 若い男の子では、もう物足りないらしい、恥しいくらい! さまざまな性のテクニックを奔放に告白しあう女3人を通して、現代のエロチシズムのありようをユーモラスに活写する、お楽しみ長編小説。
  • 歓ぶ女
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    大町が道をたずねるために立ち話をした人妻は、印象的な美人だった。彼は、偶然を装ってその人妻と再会し、数時間後にはホテルへ連れ込むことに成功していた。女の道にかけて、大町には、不可能ということがなかった。そのためには、相手の女につきまとう若い男に殴られて、失神することにも耐えた。一方、彼の友人の秋山は、芸者の菊丸にネツをあげ、「お座敷旦那」になっていた。菊丸には、すくなくも10人の男がいて、それが秋山の悩みのタネだった……。二人の男の色道修行を追いながら女の百態を描き尽した、魅力ある長編小説である。「新・肌色あつめ」の第3巻。

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