• 嘘つきは殿様のはじまり 1

    ガチでシリアスな戦国時代活劇

    タイトルと表紙で決めつけてはいけない

    可愛らしい絵柄の表紙とストーリーが推測出来るようなタイトル。
    これだけでお気楽お花畑な出世物語、或いは嘘に振り回されるドタバタコメディー、などと思ってはいけない。
    これはガチでシリアスな戦国時代活劇だ。

    平たく言えば、気弱で臆病者の少年が意に染まず武士の社会に投げ込まれ、その中で逞しく生き抜いていく成長物語。
    これが一貫して物語の主軸なのは間違いない。

    しかし、この作品はそれだけではない。

    史実を巧みに織り込んだ骨太なストーリー。
    脇を固める魅力的な登場人物たち。
    息をも付かせぬこの時代ならではの展開。

    血沸き肉踊る物語が熱く熱く綴られていく。

    「世の中 何が正しくて 何が間違っているかなんてわからない」

    コミックスでは、当時の蘊蓄から作中の元ネタとなった史実の解説まで、感心すること頻りのおまけページ。

    全5巻とコンパクトにキレイに纏まっているので、是非とも読んでみて欲しい。
    この作品がもっと沢山の人に読んでもらえる事を願って。

    0
    2019年09月05日
  • 天空聖龍~イノセント・ドラゴン~ 9巻
    ネタバレ

    手放しの大団円ではないものの

    手放しのハッピーエンドではないものの、収まるべきところに綺麗に収まった良作だと思います。

    基本的にシリアス路線で、人間の業が前面に出ていたり、考えさせられる事が多く割とヘビーな話なので、みんな笑顔のご都合展開で終わる方が却って嘘臭いかと。

    伏線の張り方も見事で、何気ないセリフやエピソードがしっかり効いていて、全9巻にも及ぶ長編ながら飽きさせることなく山口先生の構成力に唸らされます。


    最終話は読者それぞれに想像する余地を残した終わり方で、とても良い匙加減だと思うのですが、伏線や微妙な表情が上手く読み取れずに起こった現象のみを捉えるとアンハッピーエンドに見えてしまうのが難しいところです。

    とても良い作品なので、先入観無しに読んで欲しいので、ここから先は全編読み終えた後の方のみお読みくださいm(__)m

    ---- 以下、ネタバレ



    サニンは、不運な境遇に同情する点は多々あれど、越えてはならない一線をいくつも越えてしまっているので、改心して生き永らえるという選択肢は無いかと。
    終盤でダオから母が自分を見捨てたわけでは決してない事を知り、ラムカの心に自分の存在を刻み付け、カナンが最後まで自分を大切に思っていた事を認識しながら消滅。
    それまでの所業を考えると充分に幸せな終わり方に思います。逆に改心なんかしたら、とても生きて居られないような事をしてきたので、幸せにはなれないように思えます。

    カナンについても 、8巻ラスト以降の記憶が有る限り、カナンの性格からして今まで通りには振る舞えないでしょうし、心の傷が癒えるまで何年も掛かるでしょう。
    それなら記憶を失ってまっさらな状態から再び築き直すのはアリだと思うのです。

    視力に関しては、人間の業の深さについて読者に投げ掛けているのだと解釈しています。
    聖龍の龍力・身体を使いきっても浄化しきれず人間としての視力をも奪ってようやく消える程の業の深さ。また人間の業が溢れた時には、再び聖龍が降臨して浄化してくれるなんて期待を持つな、という警鐘に思います。

    ラタ一行が無事に逃げおおせてサンワの庄に辿り着けていたならば見れたであろう、あの時叶わなかった光景をラムカとカナンが紡いで行く、とても素敵なラストシーンです。

    0
    2017年01月13日