展開の模倣をした?
君のためのカーテンコール、初回から作画の方が好きな作家で、携わっていることが嬉しくて欠かさず読んでいた。
話自体も好みで、二人でのサクセスストーリーと理解して、この作品のテーマについても考察しつつ楽しんでいた。
特につばめに落ちる影が好きで、とても興味深く更新を見ていた。
ところで今回更新の「つばめがただ登場するだけ」という劇の演出だが、別の劇を主題にした小説作品がほとんど同じ展開で読者にインパクトを与えている。
「存在感がものすごくある振る舞いをするキャラクターが、客席から舞台上に現れて普段と全く異なる演技をする」というものだ。
恩田陸のチョコレートコスモスという名作の作中劇に登場するこの演出を想起せざるを得なかった。
よくある展開だと思おうとしたけれども、傍観者という立ち位置も、脚本家がその演出を見てゾッとするところもその小説の展開と被るところがあって、今回の更新だけは手放しに面白がることができなかった。
他の回は本当に魅力的なものばかりで、特に「あなたが空を飛ぶ姿を見たときから」という桜のモノローグは思わず涙が滲むほど魅力的に映った。
つばめのどこか悩みながらも人前では優しくあろうとする姿も好きだった。
けれどチョコレートコスモスにあった展開の模倣で、これからもこういう話が出るようならきついなあと思ってしまった。チョコレートコスモスにおけるおぞましいまでのインパクトを見せる演出のいくつかが削られていたので完全な模倣とは言い切らないけれど、同じ演劇作品を参考にして脚本を書くのならば、そこに「この作品ならでは」の何かがあって欲しかった。
ただパクリと言われないようにいくつかの部分を削っただけかもと思って悲しくなった。
本当に好きな作画担当なので、脚本の方はきちんと自分ならではの個性を出して作品を描いてほしい。
そのための力がこの作品に欠けていると、何かを模倣しなければ力強く書けないとは自分は思えないからだ。