【感想・ネタバレ】警察庁長官を撃った男(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

1995年3月、日本中を震撼した国松孝次警察庁長官狙撃事件。特別捜査本部を主導する警視庁公安部がオウム犯行説に固執する一方、刑事部は中村泰なる老スナイパーから詳細な自供を得ていた。だが、特捜本部は中村逮捕に踏み切らず、事件は時効を迎えてしまう。警察内部の出世とメンツをかけた暗闘や、中村の詳細な証言内容など極秘捜査の深層を抉るノンフィクション。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

久々にこれ程面白い本を読んだ。
と言うか、これ程興味を引かれる人物はなかなかいないだろう。
東大在籍時に極左思想に染まり、ノーベル賞級の頭脳の持ち主と教授に謳われながら、共産党の地下組織に潜伏し犯罪者として服役。出所後も革命運動に参加すべくニカラグアに渡航、秘密工作員として訓練を受け、国内で武装蜂起を図る私設軍を秘密裏に組成。オウムによるテロを未然に防ぐべくサティアン爆破を企図するも、地下鉄サリン事件が勃発。警察の威信を掛けたオウム壊滅へ誘導すべく実行された諜略としての長官狙撃。
こんなマンガのような人物の存在も日本の闇の一面だが、公安部と刑事部の暗闘によって、政略的にその真実が葬り去られたというのが事実であれば、その闇は更に深い。

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2014年09月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

オウム真理教による集団サリン事件に揺れる中で起こった国松警察庁長官狙撃事件。日本の司法のトップを狙ったこの大胆な犯行は、当然のようにオウム真理教による陽動だと思われた。警視庁公安部はオウム犯行説に固執するが、物証も自供も得られずに迷宮入りの様相。

そんな中、刑事部は中村泰という老スナイパーから詳細な自供を得る。

結局、自説に拘泥する公安部並びに米村警視総監らのメンツを守るために、この事件はオウムの犯行を思わせるが立件できない、という恥辱にまみれた幕引きとなる。

それにしてもこの中村泰という人物の特異さには驚かされる。

頭脳明晰にして、東大に現役合格するが、共産党に入党、暴力革命を志し中退。その後は革命のための資金集めのために武装強盗を繰り返し、巧妙な手口でアメリカから大量の武器を買い付け、蜂起の時を待つ。

しかし思うように同志は集まらず、革命の機会を失ったまま歳を重ね、革命戦士としての自分を全うできない事への焦りが募ってくる。

そしてオウム事件に対する警察の対応のまずさに対する怒りを、警視総監狙撃という凶行によって社会に知らしめようとする。

この異様な執念。日本において既に死に絶えたと思われた革命思想と、おそらく他に類をみない武装能力。もしも仲間に恵まれたなら、日本赤軍以上の戦闘集団になっていただろう。

フォーサイスの「ジャッカルの日」をも上回るような、テロリストの物語。しかもこれは実話なのだ。

不謹慎だが、面白い。

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2012年07月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

特別義勇隊を自称する謎の老スナイパー。コトの真相よりも保身がすべての警視庁・警察官僚。上層部の思惑とは別に地道な捜査を続ける現場の刑事たち。公安により何度もでっちあげられる狂った証言。メディアに「公開」される情報の裏で握りつぶされる、犯人にしか知りえない「秘密の暴露」の数々。そしてすべては闇に。

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2012年07月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

國松警察庁長官射殺未遂事件もすっかり風化したかに思われたところで手にした一冊。物的証拠以外は真っ黒け。情況証拠だけでも十分立件できるだろうに、、、歯がゆい思いで読んでいると、そこには全くもって醜い上層部のメンツをめぐるゴタゴタがあったというね、いやはや。
ただ、この中村という男も、立件してくれと意気がる割りには、肝心な点については一切口を閉ざすという不可解さ。
どうも後味の悪い思いをした。

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2012年08月02日

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