あらすじ
鬼が跋扈する地、敷島国。鬼の砦に囚われていた少年鉉太は、ある日川で蓮の蕾と刀を拾う。砦に戻ると、驚いたことに蕾は赤子に変化していた。蓮華と名づけられた赤子は、一夜にして美しい娘に成長する。彼女がふるう刀〈星砕〉は、人には殺すことのできない鬼を滅することができた。だが、蓮華には秘密があった。〈明〉の星が昇ると赤子に戻ってしまうのだ。鉉太が囚われて七年、都から砦に討伐軍が派遣されるが……。鬼と人との相克、憎しみの虜になった人々の苦悩と救済を描いたファンタジイ大作。第四回創元ファンタジイ新人賞受賞作。/解説=乾石智子
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Posted by ブクログ
最近読んだファンタジーの中で最も好きだと言える一作。
明教という作中オリジナルの宗教(仏教ベース)に見られるようなオリジナルかつイメージしやすい世界観の設定や、序盤に山場を持ってきながら後半にかけて主人公の少女・蓮華の成長物語に収斂させていく構成の妙に作者の誠実さが伝わってくる。
とても一冊の本とは思えないくらい密度の濃い作品で、読む手が止まらなくなる感覚は久しぶりだった。
関連作の『星巡りの瞳』をこれから読むが、読む前から楽しみで仕方がない。
Posted by ブクログ
第4回創元ファンタジイ新人賞受賞作(2018年)。松葉屋なつみは新人離れをした力量を持った作者だ。巻を置くを能わずという感じで読んでしまった。どうも日本の室町時代っぽい時代の辺境でのファンタジイ。
母とともに鬼に捕らわれて、鬼の砦で働かされている鉉太は、あるとき川底で一振りの刀と流れてくる蓮の花を拾い上げる。蓮の花は赤ん坊に姿を変え、驚くべき速さで娘に成長する。しかし、明の星が上るとたちまち赤ん坊に戻ってしまう。ここから、この鉉太と娘の蓮華の冒険譚が始まる。人の心の悪が寄り集まって鬼を生む。鬼たちが跋扈するこの世界は、現実の世界の象徴なのだ。二人は、人々が安心できる国を作るため奮闘する。星砕きの剣を持つ蓮華の獅子奮迅のというか、滅茶苦茶なというか、その剣さばきが爽快だ。しかし、蓮華には壮絶な過去があるのである。
仏教の考えが背後にあり、「仏はその人に合った姿で現れる」「因果の縁は、これから生じる縁起が結んだもの」ということが物語の肝要なのだ。なんだか、この物語で仏教の核が分かったような気になった。そんな気になっただけかな。仏教の考えって、ずっとずっと深淵だよなあ。とにかくわくわくする物語だ。
Posted by ブクログ
面白かった!
「星巡りの瞳」から読んでしまったが、大丈夫だった。
1冊の密度がすごい。
この人の物語をもっと読みたいと思えるような作者に久しぶりに出会えて歓喜している。
Posted by ブクログ
和風のファンタジーもしっかりした作品が増えたなぁと思う一冊でした。
人間とはどこまでも残酷になれる存在であり、それでいて優しい。
最後にこういう意味かと分かると最初から読み返したくなる作品です。
Posted by ブクログ
「豪族の跡取りである弦太は、幼い頃に鬼に浚われて以来、鬼の砦に囚われの身となっていた。そんなある日、弦太は川で蓮の蕾を拾う。驚いたことに砦に戻ると蕾は赤ん坊に変化していた。赤ん坊は蓮華と名づけられ、美しさと強さを兼ね備えた娘に成長する。弦太が囚われて七年後、ようやく都から討伐軍が派遣され、弦太は蓮華とともに晴れて自由の身になるが……。」
第4回創元ファンタジイ新人賞受賞作。
てっきり、物語の最後に鬼のボスに立ち向かって倒すというストーリーかなと思ったら、意外に始めの方で繰り広げていて、ちょっと驚きでした。そこから、新たなストーリーが始まって解決。また別のストーリーが始まって解決といった具合だったので、一つのアニメ作品を観ているかのような内容が一冊の本に凝縮されていて、面白かったです。
凝縮されているのですが、ちょこちょこ中弛み感があって、思ったよりもなかなか読み進みづらい感覚がありました。
しかし、戦いのシーンは魅力的でした。鮮やかで、美しさも感じられました。
次々とわかってくる主人公とヒロインの出生の秘密。今後どういった道を歩んでいくのか?
主人公とヒロインが友情でもなく、恋愛とは違った「コンビ」感が存在していて、良いパートナーだなと思いました。
それを通り越しての最後は、別の新たな関係が生まれて、気持ちが暖かくなりました。