あらすじ
人はかくも業深く、古都はかくも偉大なり
古都・奈良。三つの世界遺産を擁する日本を代表する観光地。
売れない漫画家、マイルドヤンキー、パンクス、やる気のない野球部員、冒険のパーティーからそこはかとなくハブられている航海士、街頭で奈良の崩壊を訴える謎の男……名所旧跡で繰り広げられる若者たちの群像劇は、やがて人間の業を深々とえぐり出し、世界の虚を暴き出す衝撃の展開へ――
「トーチweb」連載時から話題騒然! 若き無頼派が到達した「リアリズム漫画」の最前線
第1話 西大寺
第2話 東大寺
第3話 法隆寺
第4話 唐招提寺
第5話 飛鳥寺
第6話 興福寺
第7話 ドリームランド1
第8話 ドリームランド2
第9話 ドリームランド3
第10話 ドリームランド4
第11話 平城宮跡
第12話 猿沢池
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この「奈良へ」という作品を読んでまず思ったのは、これは途轍もない傑作だ、ということで、私は読後、暫くの間、虚脱していた。(解説:町田康)
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感情タグBEST3
Posted by ブクログ
まさにとんでもない傑作。
東京、奈良、ファンタジーの世界を舞台にした群像劇なのだが、次々に登場する人物が、解説の町田康曰く、作者の分身ならぬ「分魂」となり物語が語り継がれフィクションと現実の境界も飛び越えられる。
笑いの要素も自然とそこにあり一気に読み終えた。
Posted by ブクログ
古都・奈良を舞台に、勝者の側に回ることができない、いわば「冴えない」人々を通して、無常観や人間の弱さ、人間世界の虚しさを描き出す。
地味で悲しい(しかしどこか一瞬だけ美しさを持つ)世界の描写が続く中で、作中作として、まさかの異世界転移モノが挿入されたときは目を疑った。そしてその異世界においてさえ、相変わらずの人間の弱さ、醜さが徐々に徐々に零れ出してくる構成に目を見張る。
Posted by ブクログ
沁みったれた現代のつげ義春的などん底青春譚かと思いきや、凄い方向にカーブしていって目が離せなくなって、あっと言う間に読み切ってしまった。
すごい。すごい!
空の思想。
Posted by ブクログ
絵はガロ系、つげ義春を彷彿とさせる。ストーリーは、一言では表せない。仏教の輪廻転生を想起させる場面がある。過去・現在・未来。夢か幻か。読後、脱力感に襲われる。
Posted by ブクログ
この著者の作品は初めて読みました。
書店で装丁が気になったのと、町田康さんが解説されていたことがきっかけです。
自虐的とも言える辛辣なセリフがあり、思わずクスッと笑いました。
あぁこの著者は生きづらそうだなぁと想像しながら、共感する部分も多かったです。
全体的に独特のリズムがあり、テンポよく読めます。作中作の漫画、ドリームランドの章に差し掛かると、リラックスして読んでいた筈が、いつの間にか死生観、善悪、不条理な社会についての思いを巡らす事になっていました。
あとがきの中で、つげ義春さんや中島らもさんの影響は受けていると語られていて、とても符に落ちました。
次回作も楽しみにしています。