あらすじ
「なぜ、朝敵と言われなければならないのか。我らに何の罪があるというのか」幕末、火中の栗を拾うようなものと言われながらも、京都守護職を拝命した会津藩主・松平容保の弟である桑名藩主の松平定敬は、京都所司代として、兄と共に徳川家のために尽くそうとする。しかし、十五代将軍・徳川慶喜は大政奉還後、戊辰戦争が起こると容保、定敬を連れて江戸へ戻り、ひたすら新政府に恭順。慶喜に裏切られる形となった定敬らは、恭順を認めてもらうには邪魔な存在として遠ざけられてしまう。一方、上方に近い桑名藩は藩主不在の中、新政府に恭順することを決める。藩主の座を追われた定敬は、わずかな家臣と共に江戸を離れることに……。朝敵とされ、帰るところも失い、越後、箱館、そして上海にまで流浪した男は、何を感じ、何を想っていたのか――。新田次郎文学賞&本屋が選ぶ時代小説大賞受賞作家が、哀しみを心に宿しつつ、転戦していく松平定敬の姿を感動的に描く歴史小説。
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Posted by ブクログ
桑名中将こと松平定敬。
容保の弟で、慶喜の供をして大阪城を抜け出たことまでは知っていましたが、その後は…?
なんと、会津、仙台、函館と転戦していたんですね!
ただ藩主不在の国許では新政府への恭順、定敬の隠居が決めまれました。
こうなるといつまでも抗戦し続ける元藩主は、迷惑以外の何物でもないですよね。
国家老が函館まで迎えに来て連れ戻されることになりました。でもまだ納得できない定敬は途中で逃げ出し、今度はアメリカの船で上海に渡ります。
最終的には日本に戻り新政府に降伏したのですが。
理由も分からず朝敵にされ、慶喜に裏切られ、藩民からも見捨てられ(定敬とともに戦い続けた家来もいますが)、時代に翻弄され続けた半生が気の毒になりました。
Posted by ブクログ
幕末の戦いは、いつも疑問に思っています。
日本の繁栄を目指しているのは同じなのに、何故、戦わなければならないのか。
憎しみに駆られて、振り上げたこぶしを降ろすすべを見失ってしまったのか。
人は、正義のためには、どこまでも残酷になれると、何かで読みましたが、人の心の狂気の部分を見ているようで、とても辛いです。
時代が大きく変わるその時に、それぞれの藩の人たちの奮闘がとてもリアルでした。
孫八郎の選んだ道も、定敬の選んだ道も、納得のいく読後でした。
子供の手形をお守りにするという話が出てきましたが、とても素敵だなと、自分もやっておけば良かったと思いました。