【感想・ネタバレ】すばらしい人体―――あなたの体をめぐる知的冒険のレビュー

あらすじ

人体の構造は、非常によくできている。汚い例になってしまうが、私たちが「おなら」が できるのは、肛門に降りてきた物質が固体か液体か気体かを瞬時に見分けて、「気体の場合のみ気体だけを排出する」というすごい芸当ができるからである。

著者は、学生時代に経験した解剖学実習で、大変驚いたことがある。それは、「人体がいかに重いか」という事実だ。脚は片方だけでも10kgほどあり、持ち上げるのに意外なほど苦労する。一見軽そうな腕でも、重さは4、5kgである。想像以上にずっしり重い。私たちは、身の回りにあるものの重さを、実際に手にしなくともある程度正確に推測できる。だが不思議なことに、自分の体の「部品」だけは、日常的に「持ち運んでいる」にもかかわらずその重さを全く感じないのだ。一体なぜなのだろうか? その答えを求めると、美しく精巧な人体の仕組みが見えてくる。

このような人体のしくみを探求する学問、それが医学である。医学は自然科学の一分野であり、物理学、化学、地学、数学、生物学・・・と並び称される学問として、人体の構造や機能、疾病について研究を積み重ねている。医学や人体に関する知識は、身近であるにもかかわらずあまり学ぶ機会がない。学校でも、 ごく一部が理科の授業で扱われる程度で、多くの人が「医学や人体の最も面白い部分」を学ぶことがない。

本書は、外科医けいゆうとして、ブログ累計 1000 万 PV超、twitter(外科医けいゆう)アカウント8万人超のフォロワーを持つ著者が、人体の知識、医学の偉人の物語、ウイルスや細菌の発見やワクチン開発のエピソード、現代医療にまつわる意外な常識などを紹介していく。健康情報として医学を取り上げるのではなく、サイエンス書、教養書として、人体の面白さ、医学の奥深さを伝え、読者の知的好奇心を満たす一冊。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

素晴らしき人体


・体はとても重い、支える筋肉だけでなく、頭を動かしてバランスを取ることで動いている
・視力は網膜の黄斑の一点に集中している、中心窩、ここが損傷するとどうやっても視力は戻らないため、太陽を見てはいけない
・目と鼻は繋がっていて、涙は鼻に流れ込む。普段から鼻に流れているが、泣くと鼻に流しきれず目からも出る。
・おたふくは耳下腺が炎症を起こすが、これは唾液腺の一つ、ここで一日1〜2Lの唾液が作られる。おたふくの怖さはウイルスが血液中に入って全身を巡り様々な臓器で炎症を起こすこと。予防接種で防げる。
・甘いものを食べると、細菌がショ糖を分解して産生された酸が歯の表面のエナメル質を溶かすから(脱灰)。唾液は再石灰化でこれを修復する。かしし頻繁に起こると追いつかないを虫歯のリスクはお菓子の量よりも頻度。キシリトールは細菌が分解できない。
・頭皮は毛細血管が多くすぐ下に頭蓋骨があるため出血しやすい。たんこぶは打撲後に皮膚の中の細い血管が破れ血液が溜まった状態。頭は血が出やすい上に溜まった血液が頭蓋骨に阻まれて内部に広がれないから。大量出血だ動揺するが、表面だけなら多くの場合命に関わらない。タオルで圧迫して止血し、病院で縫って貰えばいい。
・心臓は安静時に毎分5l血液を送り出す。体全体の血液量は5lなので、1分で全身を一周する。運動すると増え、最大で35l/分まで増やせる。
・呼吸は肺が自分で動いているのではなく、底の横隔膜と側面の胸郭が膨張して気圧差を生むことで動いている。
・胃がんの原因で最も多いのはピロリ菌
・大便の茶色は胆汁のいろ、含まれるビルリビンが腸内細菌の作用で茶色いウロビリンに変化、ビルビリンは老化した赤血球のヘモグロビンが分解してできる。胆汁と混じらないと白っぽい便になる。
・膵臓は、胃の裏側にある長さ15cmほどの黄色く柔らかい臓器、腹部に衝撃を受けると断裂したりすることがある。万能な消化液膵液を作る。これが漏れると自分の体が消化されてしまう。ひどい炎症を起こし命に関わる。1日1.5lも生産され、断裂しても作られ続ける。
・外傷で損傷しやすいのは、中が詰まっている実質臓器、特に損傷頻度が高いのが腹部臓器で最大の肝臓、脾臓、腎臓と続く。
・臓器は個人差があり遊びの範囲で長かったりするが、長すぎて便秘になったりら捻れたりと悪影響が出ると病気になる。
・盲腸は大腸の臓器の名前で、いわゆる盲腸と呼ばれる病気は盲腸にぶら下がった虫垂という管の炎症、虫垂炎。一般的にはお腹の右下だが、人によって位置はずれる。
・おならが臭いのは大腸の細菌が食べ物を分解してメルカプタンや硫化水素といった臭い気体を発生させるから。かししオナラの大半は口から飲み込んだ空気。急いで食べるとより多く飲み込むがゼロにはならない。
・お腹の音は主に腸が運動して内容物を運ぶときに出る。空腹時収縮と食後期収縮があるが、前者のが動きが大きく音も大きい。だが空腹時以外も音はなっている。
・食後の便意はすぐに消化されているわけではなく、胃に食べ物が入ると大腸の動きが促されるから。

・口から入った異物には反応しないよう免疫を抑制する仕組みがある。一方皮膚のバリアを突破して侵入したものは遺物とみなす。食物アレルギーは、周囲にある食べ物が皮膚を通して異物と記憶を植え付けられることで起こる。
・がんが増殖する理由の一つが、T細胞の攻撃をがん細胞がT細胞の一部を結合させて弱めてしまうことだ。この弱まりを抑制するため免疫チェックポイント阻害薬が開発され、免疫の力でがんを撃退する第四の治療法ができつつある。これで本庶佑はノーベル賞を取った。しかし、これにより別の部分も攻撃し、免疫疾患の副作用も起こす。
・抗生物質は生物に対抗するために作られた物質で、アオカビが細菌に対抗するために作った物質から作ったペニシリンが最初。微生物による感染症に劇的な効果を発揮した。しかし最近側も抗生物質に対応した変異をしていくため、いたちごっこになる。
・ウイルスは細菌より1/100ほど小さく、全く異なる微生物。最近と異なり自力で生きられず、DNAやRNAと包み込むタンパク質のみでてきたシンプルな構造。他の生物の細胞を乗っ取り増えていく。
・ウイルスを死滅させられる薬は少ない。多くは増殖を抑えて軽くするもので、治療薬がないものも多い。最大の予防手段はワクチン。
・血糖値を下げるホルモン、インスリンは膵臓で作られ血糖値を一定に保つ。糖尿病はインスリンの不足やインスリンに対する反応が鈍くなることが原因。水が血液に取り込まれて尿に排出されていく。血糖値の高い血液が徐々に体を蝕んでいく
・痛み止めとして爆発的に売れたアスピリンは胃の副作用が強かったサリチル酸のアセチル化が成功することによって作られた。それでも副作用は残る。
・炎症のプロセスを促進する方向に働くプロスタグランジンを産生くる酵素を阻害するのがアスピリン。

・血液型は赤血球表面の抗原の種類で、O型はab抗原どっちもない。違う型の血液を投入すると凝縮してしまう。O型の血液は相手がどれでも凝集しない。
・食中毒は新鮮さと関係ない、元々菌類と共生しているから。
・多くの病原体は75度以上、1分の加熱で死滅する
・かすり傷は水洗いで良い。細菌とは矯正するため消毒はしても逆効果。
・全身麻酔は、鎮静・鎮痛・無動の三要素を別々の薬で実現する。効果が短時間な薬を使い調整するし、最後自力で呼吸できるかを確認してから手術室を出ていく。無意識下であっても痛みはストレスのため鎮痛する。
・X線を使うCTに対して、MRIは磁場を利用して水分の含有量の違いでコントラストをつける。優劣の差はなく見たい臓器などにより変わる。

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2024年08月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かった。人体にまつわる不思議や病気を始めとする医学・医療の歴史などを短い言葉で紹介している。読みやすく、興味深かった。もっと学びたいと思えるようになる入門書であった。

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2024年05月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

体って面白い!と純粋に感じさせてくれる本。医学書まで専門的な知識は載っていないし、知っている内容もそこそこあるけれど、ちょこちょこ出てくる具体例が秀逸。「海賊が眼帯をしている訳」とか。

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2025年11月07日

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