あらすじ
第二回大藪春彦新人賞受賞作!
今野敏氏「秀逸なラスト」
馳星周氏「突き抜けた何か」
選考会にて両選考委員激賛!
戸籍ビジネスの闇に蠢く半グレを描いた新時代のクライム群像劇!
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身寄りなし。身分証なし。金なし。そんな優良人物をSNSを駆使して探し出すのがマモルの仕事だ。狙うは戸籍。女性を装い言葉巧みに相手の個人情報を引き出して、売買が成立すれば報酬をもらえる。ある日、マモルは上司から不可解な指示を受けた。タクヤと距離を置け。自分にこの仕事を紹介してくれた先輩に、
なにが起きたのか。翌日、タクヤの部屋の掃除を命じられたマモルが見たのは、おびただしい数の血痕だった。もう、タクヤはこの世にいない。悲しみにくれるマモルに一通のメールが届いた。それは、タクヤからのメッセージだったーー。
【作者より】
受賞作の短篇に、その先の物語と背景を描いた書下しの長篇です。舞台は東京。闇ビジネスを背景に、登場人物それぞれの浅はかな「愚かさ」を書いてみました。ある者は運命的に。ある者はちょっとした弾みで、意識のないまま犯罪に手を染めていきます。そんな「愚か者たち」のお話です。西尾潤
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Posted by ブクログ
映画を観てから読んだ。
映画では人物皆が感情的で必死さを感じたが、小説では皆が皆感情を秘めていてあまり表には出さない感じがした。マモルがタクヤを失ったことへの悲しさを表に出しすぎないで、自分の道を淡々と進む感じがまた人間味があって良かった。梶原も自分が運び屋を辞めるためにと言いつつもタクヤのために行動のほとんどが左右されてた。タクヤもまた、弟やマモル、江川などずっと人のために生きていて献身的でただただ純粋に辛かった。登場人物それぞれに深みがあって、続きが気になって読み始めたら止まらなかった。
映画も小説もまたみたいと思った。
Posted by ブクログ
映画を観て衝撃をうけ、登場人物の中でも特にタクヤとマモルの人生や心情をもっと知りたいと思い小説を読みました。
映像作品を見たあとに、表情や声を思い出しながらこちらの原作を読んだため、原作のみ読まれた方とは解釈がちがうかもしれません。
戸籍売買、臓器売買、闇バイト
ニュースや記事で目にすることも多いそのフレーズに慣れすぎてしまっていましたが、実態を知りあまりの深刻さに胸がえぐられる思いでした。
そして構造としては加害者側である彼らにも、そうならざるを得ない生い立ちや環境、明日を生きるためには選択せざるを得なかったという現実に、やるせなさを感じ苦しいです。
命は平等に大切だなんて、ただの綺麗事にしか聞こえない世界があるということ、そんな世界にいとも簡単に足を踏み入れてしまえることが恐ろしいです。
犯罪に加担したことは許されることではない(と、どうしても言いきれない…)と思いますが、代償があまりにも大きすぎる。
救いを必要とする人が、正しい救いをうけることができるように祈りながら彼らのことを考え続けてしまいます。
続編も読みます。
Posted by ブクログ
映画を観る前に原作読んどこう…!と意気込んだものの、もし映画でも同じ描写があるのであれば、私はきっと目を背けてしまうだろう…
軽い気持ちで犯罪に手を染めるのがいかにいけないことか、戸籍がなくなるなんて想像しただけで怖い
マモルとタクヤの話かと思いきや、タクヤと梶谷にスポットライトがあたってからはそっちがメインに思えた
タクヤと梶谷のその後が気になる
Posted by ブクログ
戸籍の売買というあまり想像できない違法ビジネスの内情を知っていくと、明日は我が身のようなリアリティがあって引き込まれた。ヤクザではなくて半グレ組織というのがポイントで、様々な事情で切羽詰まった人々が、お金欲しさに気軽に犯罪に手を染めてしまう様子が描かれていた。始まりは出来心かもしれないが、抜け出すのは容易ではないのだ。
一時期増えた押し込み強盗も、このような若者たちがやっていたのかもしれない。
章ごとに語り手が変わるのがよかった。特に第四章でこれまでの時系列がわかり全体の話が繋がり、第五章で逃亡劇となるのが抜群に面白かった。
第二回大藪春彦新人賞受賞のデビュー作。映画化も決まっていて、これは面白くなりそう。
Posted by ブクログ
1本の長編として読んでたら、連作短編集と解説にあった。このまま続編が続いてもおかしくない、というか続きが読みたくなる流れ。タイトル通り、堅気と極道のはざまに生きる「愚かな」登場人物たちへの作者の目線がやさしいおかげで、けっこうな修羅場もわりと安心して読めマス。
Posted by ブクログ
話題になっているから読んだら再読だった。
再読しても、2000万恭子にとられた江川がかわいそう…まぁ、本人は悪銭身に付かずと諦めているから(
諦めるしかないから)。
Posted by ブクログ
初見を映像で見るには中々勇気が必要そうだと知り、原作を読み始めました。
章ごとに主人公が切り替わる短編集。ストーリーが全て繋がっているというわけではないですが、同じ世界で生きている愚か者とそれに関わる人々の話です。
どこかで伏線が回収されたり、どーん!と解決するのかな?と思っていましたが、そんなことは起きず。まあ、どうにかできる力があるならば愚か者にはなっていないよなと。
それでも、ひとつひとつの章で彼らはこれからどうなるんだ?と思わせる引きと魅力がありました。特にタクヤと梶谷のこれからが。
落っこちたおにぎりの埃を払い、何食わぬ顔で新しいおにぎりを渡して自分は落っこちたおにぎりを食べる。そんな些細で、あたたかな優しさを持つ人でもほんの少しの間違いで犯罪を犯す。
人生をやり直せていたらいいなあと願いながら、映画と続編を期待して待ちます。