【感想・ネタバレ】「生きがい」と出会うために 神谷美恵子のいのちの哲学のレビュー

あらすじ

喪失の時代、私たちを支える「他者」との邂逅

古今東西の哲学者、宗教家、詩人、作家、そして無名の人々の言葉を引用し、「生きがい」とは何かを論じた神谷美恵子の『生きがいについて』。刊行から50年以上読み継がれるこの一冊は、神谷美恵子の生涯や他の作品に照らすとき、作家自身の精神的自叙伝としての姿を現す。誰かのために、何かのために必要とされることこそが「生きがい」であると考えた神谷は、一度は見失った「生きがい」をいかにしてふたたび見いだしたのか――。東日本大震災という「大きな喪失」を経験し、新型コロナウイルス禍という試練のなかにあって、わたしたちが「生きがい」を回復する方法について考える。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

神谷美恵子の「生きがいについて」を解説、解題し、神谷美恵子の思いを共感させる。原本を読むだけでは気づかなかったことを気づかせる。これは、若松英輔にしか書けない本である。

石牟礼道子との共通点の指摘は、やはりそうであったかという直観を後押ししてくれる。圧倒的かつ敬服するバイタリティの二人の女性である。現代において、この二人を取り上げてくれた、この本の有難さを思う。

「クワトロ・ラガッツィ」を書いた若桑みどりも言っているが、人間の価値は自己の信念に生きることである。

今年4月に東村山の国立ハンセン病資料館に行った。知らなかったことが山のようにあった。再版された「いのちの芽」は、生きる喜びと尊さを伝える。生きることを粗末にしない、そういう社会にしなければならないと強く思う。

0
2023年07月28日

Posted by ブクログ

〈本から〉
社会を離れて自然に帰るとき、そのときにのみ人間は本来の人間性にかえることができるというルソーのあの主張は、根本的に正しいに違いない。

自然の声は、社会の声、他人の声よりも、人間の本当の姿について深い啓示を与えうる。

人間に生きがいをあたえるほど大きな愛はない。

一個の人間として生きとし生けるものと心を通わせるよろこび。ものの本質をさぐり、考え、学び、理解するよろこび。自然界の、かぎりなく豊かな形や色や音をこまかく味わいとるよろこび。みずからの生命をそそぎ出して新しい形やイメージを作り出すよろこび。ー こうしたものこそすべてのひとにひらかれている、まじり気のないよろこびで

いかに生きるかではなく、いかに生かされているか

わたしたちが生きることからなにを期待するかではなく、むしろひたすら、生きることがわたしたちからなにを期待しているかが問題なのだ、ということを学び、絶望している人間に伝えねばならない。

生きがいを失ったひとに対して新しい生存目標をもたらしてくれるものは、何にせよ、だれにせよ、天来の使者のようなものである。

0
2022年01月27日

Posted by ブクログ

今月は、若松英輔さん月間にしようと思っています。とはいえ、既に月半ばではありますが。神谷美恵子さんの本はこれまでにも何冊か読んできています。そもそもの出会いが100分de名著で若松英輔さんが解説しているのを見て、読み始めたのがきっかけです。そんな経緯もあり、若松英輔さん月間の始まりは神谷美恵子さんで、と思っていました。
いつもの通り、神谷美恵子さんの文章を若松さんが深い洞察力と読解力で解説してくれています。噛み砕いて言い換えをし、さらに引用し神谷美恵子さんの言わんとしていることを、さらに熱い言葉で言い換えしてくれています。
自分の読解力の薄さを感じつつ、そういうことでいいんだね、そういう観点からか、等を思いながら読み進めました。こうやって読んでいると、次は神谷美恵子さんの本を読み返したくなるが、今回はぐっと我慢して次の若松英輔さんの本を読み進めていきます。

0
2025年09月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

“神谷が精神医学を志したのは、真の意味で「人間」の姿に出会うためだった。しかし、いつしか、精神医学そのものを目的としてしまい、最初の志を忘れてしまったのではないのか”
私も鍼灸そのものを目的としてしまい、志をつい忘れがちになる。

0
2022年01月02日

Posted by ブクログ

神谷美恵子『生きがいについて』の解説本とも言える本。100分de名著版は写真が多く、そちらも良かった。神谷さんの文章は、学者らしい知的さと詩を愛する神谷さんらしさを兼ね備えた文章だと思う。他の著作も読んでみたいと思った。晩年の詩「順めぐり」「同志」が素晴らしい。

0
2022年08月07日

Posted by ブクログ

神谷美恵子さんの「生きがいについて」の解説を、東工大の若松先生が著したもの。「生きがいについて」はそんなに難しいものではないが、やはり専門家の解説があると理解が深まる。「生きがいについて、失うことと、見失うことは違う」「生きがいを見つける人生は、旅行ではなく「旅」である。決まった目標地も日程もない」「生きがいは到達すべき一地点ではなく、旅を進める一歩一歩」「ハンセン病患者という特殊な人間がいるのではなく、それを生きている個々に人間だけが存在する」「生きがいは、しばしば心の熾火となって存在している。消えているわけではない」「生きがいとは「朝」のようなもの。毎日夜が来て朝が巡ってくるが人々はそれに気づかない」

0
2021年05月01日

「学術・語学」ランキング