あらすじ
電柱といえば鳥,電線といえば鳥.でも,そこで何をしているの?カラスは「はじっこ派」?感電しないのはなぜ?――電柱や電線の鳥に注目したら見えてきた,その知られざる生態,電柱・電線の意外な姿,電力会社と鳥たちの終わりなき知恵比べ.あなたの街にもきっとある,鳥と電柱,そして人のささやかなつながりを,第一人者が描き出す.
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Posted by ブクログ
♪ぼ~くは三丁目の電柱です~♪ 雨の日、風の日、街角に立ち、通りを見てます、眺めています~♪
夕焼け、お~そらは、いわし雲~♪
電柱と言えばこの東電のCMソングが浮かぶ世代です。
それはさておき、春から初夏にかけては鳥たちの子育てシーズン。ツバメは民家の軒下で、スズメは電柱の腕金や変圧器の中で営巣してヒナを育てる。ムクドリが民家の戸袋で子育てしているのに出くわしたこともあるし、シジュウカラが玄関ポストで子育てする様子を追ったテレビ番組もあった。都市で暮らす鳥たちは人間が作った構造物をちゃっかり利用する。
電柱に巣をつくる代表格はザ・普通の鳥、スズメだ。(これ、著者が以前に書いたスズメの本で言っていたこと)
スズメはその小さい体を最大限に活かし、他の鳥では入り込めない電柱の変圧器(ポリバケツみたいなあれ)の中や、それを支える腕金(電柱の横棒)の中に巣をつくる。
カラスも電柱に巣をつくるらしいが、うちの近所じゃ見かけない。カラスは上から巣を見られるのを嫌うらしいから電柱より高い木があれば、そっちにつくる。自分もよくカラスの巣を見つけるけど、だいたい10メートルくらいある木の上だ。
先日、ハシブトガラスが変圧器の下から容器を突っついていた。外からは見えないけれどスズメの巣があるのだろう。ちょっと離れた電線の上で親スズメがジュジュジュジュッと、警戒音を出して、ヒナにジッとしているようにと鳴いていた。
翌日同じ場所を見上げてみたら、虫をくわえた親スズメが変圧器の下でうろちょろしていて、それを10メートルくらい離れた電線の上からハシブトガラスが見てた。スズメからしたら、巣があることを知られたくないという本能から変圧器の中に入らなかったのだろうけれど、残念ながらカラスは頭がいいのでもう場所は覚えてしまって、巣立つ瞬間に仕留めてやろうと狙っていたに違いない。自然は厳しいから、スズメはカラスがいないときに巣立つしかない。
講演などで、著者は電線にとまる鳥は感電しないの?との質問をよく受けるらしいが、ほぼ心配ご無用とのこと。そもそも剥き出しの電線はなく電気を通さない素材で覆われているし、仮に剥き出しでも感電しないらしい。電流は抵抗が少ない方向へより流れやすいため、わざわざ抵抗が大きい鳥の体に向かっては流れないからだ。人間も片手でぶら下がってるぶんには感電しないらしい。(もう片方の手で何かをさわると電気が通ってしまうから感電する)
変圧器や腕金の中で巣は暑くないの?という質問もよくあるとのこと。これは自分も疑問に感じていた。著者の実験によると、中は確かに外気よりは熱いが、3℃くらいしか上がらないらしい。巣を使うのは子育てシーズンは夏前の5月から6月だけで、真夏に金属の中で過ごすわけではないから、蒸し風呂のようなことにはならないようだ。逆に夜は冷えるから、金属でヒナの体が冷えてしまう心配のほうがあるという。
なるほどね。
著者はスズメの本をよく書いている方だから、スズメ愛に溢れた本かと思って読んだのだけれど、どうも電柱愛にも溢れている方のようだ。予想外に電柱に関する記述が多かった。電柱を見る目が変わった。
結構その部分も面白かったので、電線好きタレントで有名な石山蓮華さんのインスタをチェックしてみた。見事なまでに電線の写真しかなかった。電線好きであって、電柱好きではないようだ。自分は鉄塔は好きだが、電柱や電線にはそんなに興味はない。鉄道好きな人も、いろんなところに‘’鉄分‘’を感じるから、電柱好きや電線好きにも、いろんなタイプがいるのかもしれない。
Posted by ブクログ
電柱にとまる鳥たちの研究。
普段何気なく見ている景色だが、言われてみれば百数十年前には存在しなかった景色で、百年後にはなくなっているかもしれない景色なんだな、とそこから感心した。
最初の方の電柱そのものの解説がかなり細かく感じられて、鳥の話まだか??と焦れったかった。あとの話で用語が出て来たときに理解しやすかったので筆者の優しさではあると思う。
あとがきで書かれているように、いずれ博物館や歴史館で「いまはなき電柱と鳥の関係」といった展示がされていると想像するとワクワクする。
Posted by ブクログ
こんなに電柱・電線のことを知れたのは初めて
電柱に種類があるなんて知らなかったし
変圧器や碍子の役目もわかった
この基礎知識は思わぬ収穫でした
鳥にとってもまだ新しい文化ともいえる電柱
その割には あらゆる部分を
自分の都合のいい様に使い
使われない様に工夫する電力会社
知恵の戦いが面白い
Posted by ブクログ
110ページ程の薄い鳥類学(?)の本なのに、第1章で25ページも使って電柱と電線の説明に費やしている。
普通なら「早く鳥の話をしろ!」とイライラするところだが、ここが最も興味を惹かれ役に立つ知識となった。
「電信柱」とは電話線を張り巡らせるための柱だが、「電信柱」という単語は街で見かける電柱を誰も「電力柱」とは言わない程に浸透してしまった。
子供の頃から現在まで、犬や酔っ払いオヤジがおしっこするのは「電信柱」だ。
この本を読んでから意識して電柱をじっくりと観察する日が続いている。
「電力柱」や「共用柱」でない正真正銘の「電信柱」も何本か見つけた。
私は鳥が好きなので普段から街を歩くときは鳥に眼が行く。
カラスは電線というより電柱や腕金に止まっており、スズメは特に場所は選ばずに電線のどこにでも止まっているイメージがある。
ハトは地面をひょこひょこ歩き回っているイメージが強く、電線に止まっている姿はあまり見かけない(気がする)。
電柱に作られた鳥の巣も見かけないのだが、電柱の鳥の巣の撤去数が日本全体で年間に17.5万個もあると知ってびっくり。
確かにカラスは金属のハンガーをたくさん使って巣を作るので、停電防止のために撤去は必要ですね。
電力会社vs鳥達の攻防戦の話題は面白かったです(電力会社の方ご苦労様です)。
散歩する時に、様々な鳥対策をした電柱・電線を見つけるのが楽しみになりました。
Posted by ブクログ
地味に配電系統周りの説明が非常に簡潔でわかりやすく、よかった。わりとのほほんとした感じで、鳥の電線への止まり方や、電柱への巣の作り方などが紹介されている。他方、鳥の巣に対して苦心する電力会社の様子も描かれていて、そちらも楽しい。本書と関係ない話だが、そういえばスズメって今めっちゃ減少しているんじゃなかったっけ。電柱の地中化も影響しているのかな。
Posted by ブクログ
ちょっと物足りなさは感じるけれど、非常に面白い本でした!
自分が電柱好きかもしれないって事が発覚。
鳥が好きだから読んだはずなのに、なぜか電柱の方にドキドキしてしまった…。
Posted by ブクログ
「現代の鳥たちは、人間が150年かそこら前に作り出した構造物を普段使いの足場としているのです。」電線をふとみあげると「かあ~」という鳴き声。ちゅんちゅんという鳴き声にふと視線をあげるなじみ深い光景。
電柱があらわれるまではなかった光景だと思うと感慨深い。第1章の電線と電柱の基礎知識には、…知らなかったということも多々あり。
すべての鳥が電線にとまっているのではなかったのね~とびっくりしました。カラスやスズメがどこに止まるのかまで観察されていて面白い。
自然災害が多い日本では今後、電柱が地下に設置されるのかと思ったり。まだ先のことかもしれませんが、電力会社と鳥との共存を目指す工夫などが紹介され何気ない日常風景がおもしろくなりました。
Posted by ブクログ
電線に鳥が止まっている、と言う風景は、長い地球の歴史の中においては、たかだか200年(この先電柱は地中化され、姿を消してしまうかもしれないから)。ほんの一瞬の出来事。
その貴重な風景が見られる時間に私たちは生きている、という視点が斬新すぎる。衝撃的ですらあった。
Posted by ブクログ
面白かった。タイトルがとてもすばらしい。が、申し訳ないことにP1〜25の電柱と電線の基礎知識のところが一番興味深かった。もちろん、本題の鳥との関係や、鳥の巣、電力会社の鳥との戦いなどとてもエンジョイした。ヴォリュームはとても少ないが、気分転換的にとてもリフレッシュになった。
Posted by ブクログ
街に住む鳥についての本。内容は電柱:鳥=1:1ぐらい。電柱、電線に対する鳥の営みとそれが引き起こす問題、人間の対応、過干渉への問題視について書かれている。
期待していたよりも内容が薄く(後書きを読む限りわざと薄くしている?)、物足りなさを感じる。
著者の電柱と鳥の関係が気になるという視点が独特かつ奇異であり、まだ明らかになってないことが多いのかもとも思ったが、鳥目線からしたら単に3次元的な移動が可能な生き物として都合が良い構造物を利用しているだけで、電柱や電線だからといって特に特別な事はしていないのでは。著者もどちらかと言えば、鳥の行動よりも人工物に鳥が細工することで人間側が対応せざるを得なくなっている点やその対応の地域差などの方に興味があるように感じる。そのせいで本書のメインが人間側の営みにあるように感じ、タイトルの「鳥類学」との齟齬が生じ、内容が薄く感じたのかも。
Posted by ブクログ
電線にとまっている鳥の写真(あー可愛い)、電線の鳥の巣が撤去される様子(あーかわいそう)、電線を絶縁する部品である可愛い玉碍子の写真(??)、まえがき、とつづき本文は「1 電柱と電線の基礎知識」で電柱についての解説から読むことになり、あ、そこからなんだ…という衝撃が心地よい一冊。
私は鳥に関する本を読むのが好きなので、タイトルに惹かれて手にとってみた。
電柱と鳥類の関係を明らかにする学問、それが電柱鳥類学という学問だけど、じつはそんな学問はこの世にないらしい。この本によって勝手につくられた言葉だ。どうしてそんなことを研究するのか書かれたまえがきがとても良いのでそこだけでもいろんな人に知ってほしい、ポピュラーサイエンス系の本を読むひとにはそこだけでも共感できると思う。それを読むと、「なんでそんな役に立たない研究をするんだ」とか言われて肩身の狭い思いをしていた研究者たちや、「役に立たなければ研究してはいけないのか」とか言って世界の秘密を追い求めてきた人たちに思いを馳せることができておおいなる気持ちになれるのだ。
「鳥類が電線と出会ったのは19世紀の中ごろ、そして電線はいずれ地中に埋まって消えてしまうかもしれないことを考えると、我々は電柱・電線と鳥が一緒にいるという貴重な時間を生きていることになるので、そんなものはぜひ見ておかなければならない。」とのことなのである。偉大な発明も世紀の大発見も、日常に潜む小さな不思議を見逃さなかった人たちによってなされたのだ、と思わずにはいられない。まえがきでこんなに感動してるのは私だけなのではないかとも思わずにはいられない。
全体的な内容はちょっとあっさりめだなと思う部分もあるけど、なにぶん新しい研究分野なのでそんなもんかとも思う。論文が引用されてる硬い文章が苦手な人にはむしろ読みやすいはず。合間にあるコラムがけっこうたのしくて、なかでも著者が「難しいものを何かに例えて噛み砕いて説明する」ことの危うさを書いているところは何回も読み直した。
「ミクロな物理現象を、目に見えるものや形あるものに置き換えて理解するくせをつけると、いつか理解の限界がきます。(略)わからなくてもそのまま飲み込ませる教育も必要だと最近強く感じるようになってきました。そういうものだと無理矢理飲み込んで思考を重ねていると、ある時、ふっと理解できる瞬間が来るからです。」
外山滋比古さんの「乱読のセレンディピティ」で知ったことだけど、昔の日本の国語教育は、まだひらがなの読み書きができないうちから「天網恢恢疎にして漏らさず」なんてものを暗唱させていたらしい。最初はもちろん意味なんて分からずただ覚えるだけだけど、時間がたつにつれて理解が深まっていったという。読んだときにはほんまかいなと思っていたけれど、いまは思い出したらすんなり受け入れることができてしまった。おお、ふっと理解できる瞬間とはまさに今この瞬間のことなのか。
Posted by ブクログ
<目次>
第1章 電柱と電線の基礎知識
第2章 鳥、電線に止まる
第3章 感電しない鳥たち
第4章 鳥、電線に巣を作る
第5章 電力会社、鳥と戦う
エピローグ 電柱鳥類学の将来
<内容>
なるほど、こんなことも学問になるし、電力会社や鳥たち(おそらく)にも感謝されるだろう。でも誰もやっていないので、データがない。著者は、学生たちを使いながら、できる調査を集めて、電柱の原理・原則も踏まえて、いろいろとアドバイスがはいる。天下の岩波なので、そんなに変な話ではないし、こんなことも研究になるんだということを、子どもたちに教えたい。