【感想・ネタバレ】彼女は頭が悪いからのレビュー

あらすじ

2019年に上野千鶴子さんの東大入学祝辞や様々な媒体で取り上げられた話題作が文庫で登場!

私は東大生の将来をダメにした勘違い女なの?
深夜のマンションで起こった東大生5人による強制わいせつ事件。非難されたのはなぜか被害者の女子大生だった。
現実に起こった事件に着想を得た衝撃の「非さわやか100%青春小説」!

横浜の3人きょうだいの長女として育ち、県立高校を経て中堅の女子大学に入った美咲と、渋谷区広尾の国家公務員宿舎で育ち東大に入ったつばさ。
偶然に出会って恋に落ちた2人だったが、別の女の子へと気持ち が移ってしまったつばさは、大学のサークル「星座研究会」(いわゆるヤリサー)の飲み会に美咲を呼ぶ。
そして酒を飲ませ、仲間と一緒に美咲を辱める。美咲が部屋から逃げ110番通報したことで事件は明るみに出ることに。
しかし、事件のニュースを知った人たちが、SNSで美咲を「東大生狙いの勘違い女」扱いする。

柴田錬三郎賞選考委員絶賛!
無知な若者を生み出した社会構造と、優越、業といった人間の醜さが、本作には鮮烈に描いてある。――伊集院静
どちらか一方を悪者に仕立て、もう一方を被害者に仕立てがちだが、本作はそんな単純な構図では描かれていない。―逢坂剛
女たちの憂鬱と絶望を、優れたフィクションで明確に表した才能と心意気は称賛されるべきである。――桐野夏生
テーマ性とメッセージ性の際立つ作品、批判をおそれず書かれた力作だ。――篠田節子
平成における最も重要な本の一冊だと私は考える。――林真理子

※この電子書籍は2018年7月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

2016年に、東大生が他大学の女子学生に対して集団でわいせつ行為をした罪で逮捕・起訴された実際の事件をもとにした小説。あくまでフィクションであるとあとがきにも書かれているが、逮捕された5人の東大生の役回りや、サークルの実態、公判で明かされたわいせつ行為の内容などは、かなり忠実に事実に近く書かれているようだ。被害にあった女子大学生や、一番重い罪となった東大生のキャラクターや、周辺の人物の生まれ育った家庭環境などは、作家の想像力が加わっていると思われるが、母親が公判に証人として出廷していることもあり、分かる部分は生かされているだろう。

ありきたりな感想だが、実にいろいろなことを考えさせられる小説である。
この小説では、逮捕された東大生たちは、それぞれ家庭環境や地方出身か東京生まれかなどの違いはあるものの、皆「自分は東大だから人より偉い」と思っている。しかし彼らの思考回路や行動を読む読者は、「本当の賢さや“教養”は、偏差値が高い大学に合格できるかどうかとは全然違うものなのだな」と気付かされる。
特に一番罪が重くなった、被害女性と親密な関係にあった「つばさ」は、裕福な家庭に生まれ、高学歴だが専業主婦の母に世話を焼かれ、自分で自分のものを洗濯したことも、トイレを掃除したこともなく、自分と違う環境に置かれた人の気持ちを想像することもなく、そんな暇があったらかわりに入試問題を短時間で正確に解く訓練を重ねて東大に入った。一方、東大周辺の大学の中では偏差値が低いから、自分たちより頭が悪いと見下されている「美咲」は、高校は一応進学校で基礎学力はあるし、料理も掃除も、兄弟の世話もこなし、男女問わず友達も多く思慮深い。東大生よりよほど生活力があり、感性も豊かだ。
東大生の親たちは、息子を勉強で鍛え、偏差値の高い大学に入れ、頭の良い人しか就けない職業に就かせればそれが幸せだと信じている。つばさの兄は東大の法学部に入り、司法試験を何度か受けたが合格せず、別の道を模索する。親たちは彼を「ドロップアウトした」とみなすが、北海道で新たな道を見つけた兄は、それまでとは別人のように生き生きと自信を取り戻して行くのだ。

上野千鶴子さんの入学式の祝辞でも有名になったように、東大生の親の年収は、圧倒的に平均年収より上だ。生まれたときから恵まれた環境にあり、努力することがそもそもできなかった人たちを見下し、「努力が足りない」と一蹴する高学歴の人たちが、実際に日本の上層部にいるのだろう。そういう人たちが、本当に困っている人のことなど何もわからずに、想像もできずに、貧困への対策や入試改革や男女格差の是正や少子化や物価高や…現代の様々な問題にいくら取り組んでも、とんちんかんな政策しか考えつかないのもうなづける。
東大生がみんなこんな人達ばかりだとはもちろん思わないが、東大生や、偏差値の高い大学に入って満足している人たちが読むべき本だと思う。

読んで気持ち悪くなること必須だが、読む価値のある一冊。
被害女性「美咲」の大学の先生が、美咲に寄り添ってくれたシーンが良かった。

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2025年08月15日

匿名

ネタバレ 購入済み

どのグロい本よりも悍ましく恐怖

私は40前後の女、おばさんだけど、
女子中時代に男性教諭から猟奇的なことをされ
学校にもみ消され
結局退学することとなった。
性被害も受けたことはある。

そして私の身内に、つばさと同じ大学の人間がおり
どこか似ているような発言を昔していたことを思い出した。
ただ私の身内の場合は、女の子を偏差値では判断しないし
尚且つ究極にモテない人間だったし
運動部にも所属していたので
本の中のような男女がわいわいするサークルとは無縁ではあった。

‥あったけど、私自身は
つばさに対しても美咲に対しても
どちらに対してもどこか共感できる感覚があり
それは読めば読むほど
辛くて読むことをやめてしまいたくなった。

前半の下りが長いというが、私はこの前半こそが辛かった。
あらすじで、これから何が起こるか知っていたし
これからする人間がこんな考えで生きているのかということ。
そして終盤の、加害者たちの両親の言葉や対応。
最後の一言。

絶望しかなかった。
だけど、この本はもっと多くの人に読まれて
こういうことが
本当はそこかしこにある、美咲は逃げて警察に言えたけど
言えなかった子も必ずいることを
もっと世に知られてほしい。

これは東大にだけ起きた話ではなく
現実はどこへ行っても蔓延る人間の愚かな差別や区別が描かれています。

辛い本ですが、ぜひ読んでもらいたいです。


#深い #怖い #ドロドロ

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2024年11月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本当に考えさせられる胸糞悪いお話。
本の題名の意味がわかる。
人間そんなふうな状況にいたらどっちの身にもなれるとおもう。それが怖いな。
身近に東大生がいるので、まさか、、君も?とか考えてしまった、、、
裁判官や検察官とかも東大生だとやはり東大生の味方になってしまうのか??と怖くなった。
悪い事がわるいと思わない人を見下す東大生、、
胸糞悪かった。
だからこそ、みんなにも読んでほしいと思った。

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2025年09月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

苦しかった。とにかく終始感じたことは、「男子ってほんとバカね」ということだった。
どんなにお勉強ができても、バカなんだ。
女の子たちにわざと答えられなそうな問題を出して、答えられなければ酒を飲ませ、答えられたらもっと意地悪な問題を出す……。大昔自分が通ってた塾の先生との会話で、地域にあった、偏差値は低いが農業科のある高校について私が無意識に見下すような発言をしてしまったとき、その先生は「偏差値が低いからって馬鹿にしてはいけない。数学の難しい問題が解けたって、作物の育て方や牛の世話の仕方はわからないでしょ。あそこの文化祭で売ってるクッキーはおいしいんだよ」と話してくれたことを思い出しました。東大生の彼らだって、特につばさがお兄さんの言葉をうまく理解できなかったように、自分の狭い世界のことしか知らないのに、彼女は頭が悪いなんて、よくも言えたもんだなと。
ツルツルのハートだからなのかな。そういう意味で、人には挫折が必要なのかもしれないな。

追記
自分もそういえば仕事の関係で、東大生にバカだとSNSに書き込まれたことがあったのを思い出して沸々と怒りが。笑
私立一貫校出身だと、世の中には色んな人がいて、色んな仕事があるのだということも知る機会が少ない。ツルツルのハートを持つ、世間知らずの坊やたちなのだわ。

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2025年09月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最後のつばさのひとことに全て折られたような気分がした。
この本で語られていた、つばさや美咲の作者が語った全てがその一言で更地に帰ってしまった。
かれのように”ぴかぴかな心“を持つ人は瑣末なことに思考を割かず過去を顧みることもないのだろう。

本全体に散りばめられたミソジニーに心が引っかかる瞬間が何度もあった。何が正しいのかは分からないけれど、漠然と女性というものには家庭的、従順、弱いイメージがあるものなのだなとひしひしと考えさせられる。


朝倉、南。アニメのキャラのように偶像化された、彼らにとってはただの器でしかない女子マネ。専業主婦だかえあ料理をする、掃除をする、息子の世話をする、そんなことを母含め家族全員が当たり前になんとも思うことなく受けいれているつばさの家。

しかしこれだけでなくバリキャリな母親やミソジニーを身に経験してきた教授、自由に生きる山岸遥などさまざまな女性像が含まれていることでさまざまな角度から考えさせられる。


性に加えてもうひとつ大きい軸として語られているのが社会階層だ。
エリートの子はエリート。蛙の子は蛙。
階層の中にもまた上下の意識があって、美咲のような「ふつうの子」がエリートと世界を交えて関わることはない。明日香ちゃんはどうせ明日香ちゃん。美咲が麻耶になることも、ないのだ。

一介の大学生として、偏差値に基づく大学館のプラド意識や(インカレ)サークルに渦巻く男女模様なども当たり前に聞いたことがある話だった。きっとどこかでこんなことが今も起こっているのだろうと思うとやるせない。


まっすぐに育ってきた美咲が、年齢なりに恋に苦しんで悩んで、長女ありがちな他人に迷惑をかけまいとする心、素直な心を持つばかりに事件を巻き込まれるのが心苦しかった。口下手なお父さんがお酒を飲んで陽気になってしまうのが好きな美咲が、それに似てお酒を飲んで場を盛り上げようとしてしまったあまりに、、というところで心がギュッとなった。


世間には様々な事件があって、毎日ころころとニュースやネットで報道されて行く。一つ一つを見極めて何が正しいか何が悪くないかを見極めるなど極めて難しいことだ。過程を定めるのは難しいが、「しょうがないこと」「怒ってしまったこと」と流すのではなく結果に善悪をつけることも必要ではないかと感じた。そのために、立ち返り物事をよく知って見定める力と心意気を持っていたい。




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2025年08月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

東京大学誕生日研究会レイプ事件に着想を得た小説。

東京大学に通う男がヤリモクでインカレを作る。バカな女を見下しながらヤリたく、お茶の水女子と大妻女子とで飲み会をしまくる。

加害者側も両親や兄弟に至るまで細かく掘り下げる。事実なのかな…

被害者側、心理描写なども掘り下げる。事実なんかな…

事件は、加害者の一人が一瞬付き合ってその後セフレ状態の女の子を呼び出して、レイプ…とまでいかず、裸にひん剥いて転がして蹴ったり、隠部にドライヤーを当てたり、カップラーメンをぶっかけたりする。
逃げ出して通報して発覚。

ただ、被害者側がノコノコ東大生の家に行く時点で…などと叩かれる。

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2025年11月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

文章とか表現があまり好みではなかったー。
被害者・加害者の家族や友人がバンバン出てくるし、その中で意外と接点がある人たちもいたりして、ごちゃごちゃしてる。どんな人たちに囲まれて生きてきたかを書きたかったんだろけど、分かりづらかった。
それと、ラブリーな女性なのだ。とか、つるつるぴかぴかのハート(しかもこの表現お気に入り)とか、作者の表現がなんというか、うん、私にはしっくり来なかった。

この事件については全然記憶になくて、
この本を読む前にネットニュースを見たし、
この本がフィクションだけどほぼノンフィクションであることも知っていたから、展開はだいたい分かってた。
分かってたからこそ、(いい意味で)平凡な人生辿ってきた美咲のことを知れば知るほど、(特に家族とおふろの王様行って、その後みんなでドイツビールのお店なんか行っちゃうのよいじゃん、、)
もうすぐあの事件が起こってしまうのか、とつらくなった。

私は頭良い人が好きで。(突然)
単純に「色んなことを知っていて面白い」し、
やっぱり成績表でオール5を取る人って、私がちょっと休憩〜とか言って漫画読んでた時間も勉強してたのかと思うと、ほんっとに尊敬する。
けど「頭が良すぎる」と人間として大事な部分を失っている人もいるのかも、と、この本で知った。

現実の「東大の三浦様」を調べてみたところ、
東大と言うだけで女の子がホイホイついていっちゃうくらいだから、とても雰囲気のある方なのかなと思っていたら、んんんんん?となる方でびっくりでした。そんなに東大効果ってありますぅ、、?

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2025年11月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

男たち、性欲がなかったとして、その上で服を脱がせ蹴っていたのはもはやそっちのほうが恐ろしいということに本人たちは気づいていない
女の子、どうか幸せを掴んで欲しい。誰かに縋らずに。

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2025年09月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最後の一文で鳥肌が立った。
どういう感情か自分でも説明できないけど、
諦めに近いような、心を無くした加害者を哀れむような。

以下、自分の思考整理のために感想をダラダラ書く。

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追記:

登場人物たちの、東大生ではない他者を見下したい欲求が全ての根源かのようにされるメッセージについて、ワタシは共感できなかった。

小説を読む時、登場人物の容姿や話し方、動いてる様子を具体的にイメージして、時には実在する知人と重ね合わせながら読むんだけど、この作品の登場人物は全く描けなかった。

ずっとのっぺらぼうが空間のどこかで話しているような。それは、登場人物たちが、私が知る数少ない東大生や高学歴の人たちと重ならなくて、あくまで架空の存在に感じられたからだと思う。こんな人たちは本当に実在しなくて、ノンフィクションでしかない、なんて幸せなことならいいんだけどそんなことはないんだろうなと思う。

頭がいいとか悪いとか、そういうことよりもワタシがこの小説を読んで感じたのは、性犯罪の恐ろしさだった。加害者が相手の感情を勝手に都合よく解釈し、被害者の心の傷や尊厳を踏み躙っていることに気付かないまま、その人を深く傷つけてしまうという行為や考えの残虐性が、改めて恐ろしいと思った。

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2025年08月07日

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