【感想・ネタバレ】ことばは国家を超える ――日本語、ウラル・アルタイ語、ツラン主義のレビュー

あらすじ

英語を初めて学んだ時、文の構造の違いや動詞の活用などに戸惑われた方も多いだろう。しかし世界には、単語を入れ替えさえすれば文意が通じる言語が多数存在する。ウラル・アルタイ語族に属する朝鮮語、トルコ語、フィンランド語、ハンガリー語、モンゴル語などだ。これらの言語は、文の構造ばかりか表現方法、つまりものの感じ方までもが共通している。このことから、言語を軸に連帯をはかろうとする運動、ツラン主義が一九世紀にハンガリーで現れた。それは虐げられた民族からの異議申し立てであり、その水脈は今も生き続けている。

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Posted by ブクログ

ウラル・アルタイ語――ハンガリー語もフィンランド語も、トルコ語もモンゴル語も、朝鮮語も日本語もこの仲間。本書はウラル・アルタイ語の類縁関係の発見と研究の歴史をたどる。英語や印欧語からものを見ることに慣らされてしまった者(たとえば私)にとっては、発想(視点)の転換を迫られる。ウラル・アルタイ語から世界史を見直してみることもできそうだ。
田中「節」は健在。ほかの研究者への棘、ちょっとした脱線、そして個人的なエピソードが織り交ざる。随所に挟まれるトリビア、これが堪らない。
ただ、ツラン主義の章はついていけなかった。本書のタイトル『ことばは国家を超える』はこの章に由来する。
アルタイ語にはラ行が語頭に来る単語がない。あっても、それは外来語。日本語もそうなのか? 早速、広辞苑。ほんとだ。ラ行はカタカナ語か漢語しかない!

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2025年05月07日

Posted by ブクログ

言語学を初めて学習する学生にとっても役に立つ本である。印欧語だけの言語学ではない、ウラルアルタイ語への視点を与えてくれる。そして、国語学、日本語額の学生にも新たな視点を与えてくれるであろう。
 はじめての言語学の本としてもお勧めである。卒論として基本書となるかどうかはわからないが、新しいテーマを探す手段のひとつとはなるであろう。

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2021年09月28日

Posted by ブクログ

言語学についてまったく無知な自分からすると、知らないことばかりなのでトリビアルなおもしろさはあるが、新書の語り下ろしということもあり、雑多な内容ではある。田中本人の学生時代の思い出話や学会でのいざこざなど、それはそれでおもしろいけれども、不要に思うひとには不要だろう。いずれにせよ入門書のようなものなので気軽に読める。

ロシアにはクマを表す単語が実証されていないという話(メドヴェーチと呼ばれるが、これはメド=はちみつ、ヴェーチ=食べる者、を足したものである)、フンボルトの言語類型論(特に屈折系について多く語られる)、田中がモンゴルの学会でクルマースというドイツの言語学者に「外国語の悪口を言ってはいけません」と咎められた話、戦後間もない日本の言語学の思い出話など、いろいろと話題は多岐にわたる。
本題の内容も当然含まれるが、ざっくりした概観を示すくらい。

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2025年07月10日

Posted by ブクログ

言語の系統図を見て、非常に納得した。私が見たかったのはこういう図だった。ハンガリーとフィンランドがヨーロッパでは言語的に飛地になっていることを知った。
ヒトの長い歴史の中で、少数言語話者でありながら、一度も国を持たなかった人々の不安定さが非常によくわかる。今の中国やロシアの周辺にはそういうマイノリティたちが複数いて、私たちもその一つなんだと感じる。

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2022年01月18日

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