あらすじ
30年ぶりの同窓会で再会した男女の心境は? 人生の哀歓を描く秀作集。連作短編12編。人生をそよがす風の妙。大人の寓話――中学時代、ほのかな恋ごころを燃やした美少女がいた。都会から田舎の中学へ転校し、再び都会に去った少女に対して、少年は一度だけ直接話しかける機会があったが、結局、何も話せない。そしていま、30年ぶりの同窓会で、男は女にそれを語ってみると……。時は風、風は人生。さまざまな人生の哀歓を巧みに描き出す、大人の寓話集。
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Posted by ブクログ
阿刀田 高の【風物語】を読んだ。
12の短編を収めた短編集。
阿刀田 高はどうしてこんな綺麗な文章が書けるのだろう?言葉の選び方、ストーリーの展開、技法、す
べてに洗練された大人のセンスの良さが際立つ。
短編の名手である。
けして心に竜巻を起こすような物語ではない。そよ風のような心地よさがスッと心の一部分をかすめ、揺
らす物語だ。それがとても心地よすぎるので阿刀田作品を度々読みたくなるのだろう。
阿刀田 高の描く作品に登場する人物は大人である。それはつまり、人生の深みを知っているということ
だ。好いた惚れたの甘い恋愛だけではなく、幾多の山を越えてきた大人だからこそ感じる男女の哀愁があ
る。30歳を越えて阿刀田作品に触れると「そうだよな」「わかる、わかる、その気持ち」と頷く自分が
いるのだ。
本書でも、そんな場面が次々と描かれる。切ない恋心だったり、淡い想い出だったり・・・。
カバー裏に「時は風、風は人生―さまざまな人生の哀歓を巧みに描き出す大人の寓話集」とあるが、まさ
にその通りだ。
疲れた心にそっとなびく、そよ風を・・・そんな時、手に取りたい1冊である。