あらすじ
警察庁長官狙撃事件は、なぜ解決できずに時効を迎えなければならなかったのか。濃厚な容疑を持つ人物が浮上していながら、なぜ、オウム真理教団の犯行に固執しなければならなかったのか。日本警察の宿命を説く第一線捜査官による衝撃の手記。
文庫版で「第九章 エージェントD」を加筆!
単行本刊行後、「協力者」から手紙が届いた。「元刑事」となった著者は、協力者との接触を図る。本当の意味での「捜査完結」に向け、緊迫の場面に臨む――。
1995年3月30日朝、東京・荒川区において、國松孝次警察庁長官が何者かに狙撃された。警視庁は、当時の社会情勢等から、オウム真理教団による組織的テロと見て、警察の威信をかけた大捜査を展開、2004年に至り、オウム真理教関係者の逮捕にこぎつける。しかし、被疑者らが起訴されることはなく捜査は迷走し、2010年3月、多くの謎を残したまま事件は時効を迎えてしまった。
実は、この捜査の陰で、濃厚な容疑を持つ人物が浮上していた。その人物は民兵組織の結成を目指した「中村泰」。中村の内偵を進めた原氏は、徹底抗戦する中村の取調べを継続し、ついに中村から、警察庁長官を狙撃した自供を引き出す。そして、その供述は、現場の状況に合致して迫真に富み、犯人しか知り得ない内容に満ちていた。原氏が率いる捜査班は、幾多の困難を克服しながら中村の捜査を推し進め、多くの証拠を蓄積していくが、中村が立件されることはなかった。
なぜ、中村の捜査は封印されたのか。警視庁幹部、警察組織、現場捜査員、被疑者、社会情勢等、様々な「宿命」が絡み合い、葬り去られた事件の真相に迫る。
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Posted by ブクログ
稀代のローンウルフ型の被疑者の記録,
捜査一課と公安の捜査手法がわかる。
捜査一課側からの視点が強いが、Wikipediaでは公安側の論点もわかる。
大変だね、警察は、、怖いな。
最終章での、担当捜査官の感想で被疑者は、「自分の欲望を公義にすり替えて行動したのだろう」というのが印象だった、これは犯罪行動や行動の規定になるのだろう。
科学論文のIntrductionの書き方もそうだ。
特筆すべきは、ローンウルフ側のエージェント協力体制の気づき方や入手経路。
もうちょっと違う方向(科学研究等)にこの突破力を使ってもらえればな、、
この人が読んでいたという、チェゲバラ日記、ジャッカルの日また、交友があったという野村秋介の回想録なんかも読んでみようかな。
欲望と公義が重なると、ネジが外れた行動につながるのかもしれないな。
Posted by ブクログ
★★★
今月12冊目。
オウムのサリンから10日で警視庁長官が撃たれた。世間はオウムの犯行と思っていたが実は違う犯人だった。
公安はオウムのせいにしたいし犯人は自供してるにも関わらず立件できず時効。
こりゃ凄い事件でした。
Posted by ブクログ
原雄一『宿命 國松警察庁長官を狙撃した男・捜査完結』講談社文庫。
元警察の第一線捜査官による衝撃の手記。文庫化にあたり『第九章 エージェントD』を加筆。
結末の無いノンフィクションは全くもってつまらない。結局のところ警察組織にとって不都合な悪人は野放しにされたのだ。
オウム真理教が生物兵器によるテロを計画していることを掴んでいながら、未曾有のバイオテロを実行させてしまった警察組織の威信は潰れ、警視庁長官狙撃事件はさらに警察組織を危機的状況に追い込んだ。こうした状況に於いて、組織内での対立と面子を優先させたことが事件を闇の中に置き去りにしたのだろう。冤罪事件と全く変わらぬ構造は警察組織の愚かな選択の結果である。
オウム真理教による地下鉄サリン事件の直後に発生した國松警視庁長官狙撃事件。警察は当初、オウム真理教による地下鉄サリン事件の捜査妨害のためのテロ事件と思われたが、捜査線上に民兵組織の結成を目指した『中村泰』という何から何まで真っ黒な人物が浮上する。しかし、警察はオウム真理教による犯行に固執し続け、多くの謎を残したまま事件は時効を迎える。
本体価格800円
★★★