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『日本古代女帝論』をダイジェストにして、時代の変遷を重視して再編成したような書籍である。「王権史」という題名に合わせてのものであろう。
ただ、議論の重点は皇位継承に置かれており、「王権」そのものに関する叙述を期待すべきではない。
ジェンダー論の視点から先行研究の問題点を暴くといった手法を垣間見ることができ、刺激に満ちている。
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古代の女帝における皇位継承の背景を再検討し、後世とは異なる男女双系の継承原理を明らかにする内容。天皇権力の確立過程における女帝の重要性、直系継承への悪戦苦闘と父系社会への転換過程の詳細が非常に興味深い。
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これまで日本の古代史について無学だったせいか、本書で別の視点が提供されるのにはとても興奮させられた。単にイメージとしてぼんやりと天皇や古代について理解はしていたつもりだったけども、それについて明確に考え直す知識と理解を提供してくれたように思える。
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「性差の日本史」で参考文献に上がっていたので読みました。なるほど、元々家の概念に男女の区別が無く、一族で有能な人がトップに立つというやり方で有れば、女帝がこの時期に集中するのも納得ですし、中継ぎだったら推古帝が死ぬまで35年もやるわけないじゃんと前から思ってた疑問も解消しました。男系になっていったのは当時の国際的スタンダードに合わせたからというのも納得性が高いです。にしても古代史は、ここ30年ほどで色々な分野で常識が変化しているなぁと改めて感じます。
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著者は、古代の女帝は臨時的に即位した「中つぎ」であるとする通説的理解を退け、古代王権における女帝の立場を明快に論じています。6世紀末の推古天皇や7世紀の皇極天皇(重祚して斉明)、持統天皇は長老女性の立場から即位、その持統は初めて太上天皇となり年少男性の軽皇子(文武天皇)と「共治」し、それは元明・元正と首皇子(聖武天皇)の関係にも引き継がれたとするなど、古代王権の中で女帝が主体的な役割を果たしていたといいます。個人的には持統天皇の王権の性質に関心があるので、興味深く読みました。
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女帝は皇位継承の中つぎの役割であった、古代の孝謙=称徳天皇以降、江戸時代の明正天皇まで女帝が出なかったことから、それが歴史の常識として受けとられてきた。そのような考え方に著者は真っ向から異を唱える。
中国の父系社会とは異なり、日本は双系的親族結合を基本とする社会であったこと、王には群臣を心腹させる統率力/個人的資質が必要であったことから、男女を問わず、年齢的にも成熟した有資格者の中から王が擁立されたのだと著者は言う。
古墳における男女の首長の存在を明らかにする考古学的知見、史料において用いられている語のその当時における意味の厳密解釈その他様々な証拠から、女帝が男子臣下からサポートを受けていただけでなく、独自の指導力を発揮していた事実を証明していく。
隋書倭国伝に出てくる倭王、多利思比孤に関わる「ヒメ」、「ヒコ」の解釈や、当時天皇は外国使節に直接会うことはないのが倭国の慣例であったなどとする著者の説について、その当否を論ずる能力はないが、後代に確立された父系直系継承を当たり前の仕組みと見ずに考えるならば、著者の論証にはかなりの説得力があると思われる。
主要人物の父方、母方の関係が入り組んでいるのが古代の特徴だが、政争の敗者として敗れた者たちの背景も系図を見ていると、良く理解できた。
創られた伝統によって半ば閉ざされた眼を覚ましてくれる、とてもスリリングな本である。
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<目次>
序章 古代双系社会の中で女帝を考える
第1部 選ばれる王たち
第1章 卑弥呼から倭五王へ
第2章 世襲王権の成立
第2部 王権の自律化を目指して
第3章 推古~王族長老女性の即位
第4章 皇極=斉明~「皇祖」観の形成
第5章 持統~律令国家の君主へ
第3部 父系社会への傾斜
第6章 元明・元正~天皇と太上天皇の”共治”
第7章 孝謙=称徳~古代最後の女帝
終章 国母と摂関の時代へ向けて
<内容>
古代の女性天皇に関する歴史書。歴史学会では、「女性天皇」はありなのだと思うが、この本は意外と現在の政治的要素を排除して、淡々と記する。「父系」の伝統は明治以降なのは、学界では自明の事実で、それを「伝統」と呼ぶのはおかしい。「伝統」と呼ぶなら、この古代の「双系」(or「女系」)の方が伝統であり、中国の諸制度をまねながら、「父系」だけは取り上げなかったところが「伝統」なのだろう。