あらすじ
★★★★★第52回メフィスト賞受賞作★★★★★
ある夕方、保育園から榎本千夏子に一本の電話が入った。
「夏紀ちゃんがいなくなりました」
なんと、千夏子の子が保育園から消えたという。
不安を募らせる千夏子のもとに、二本目の電話が。
その電話は<彼女>からのものだった――。
4人の女性が抱える「女」としてのジレンマを鮮烈に描き切った究極のサスペンス!
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
中盤までは女のドロドロですごく嫌な感じがするな、と思っていたけど、それぞれの独白が始まってから一気に印象が変わり、最後は感動してしまった。
結婚前、結婚後、妊活、子育てから復帰の悩みとか、ありとあらゆる女性の悩みが言語化されていて、すごくリアルだった。いろんな形の家族があるけど、どれも当たり前のことはなくて、今を大切にしなきゃいけないと改めて感じさせられました。
Posted by ブクログ
読み始めは、ハラハラしちゃう展開が予測できて億劫になったけどどんどん面白くなってくる。
人の弱さと、自分を守るために他人に攻撃する脆さが主観的によく描かれていて、それぞれの登場人物の行動と気持ちに納得ができる。
一見関係ないと思われた女たちが最後はそこでつながるのかという展開は圧巻する。
不妊であったり、モラハラであったり、見えづらいけど絶対に被害者加害者が近くにいることをストーリーのきっかけにしている。傷つけ傷つけられてる、でもその裏にはそれぞれの人のそれぞれの事情があることを説得力を持って描くことで読んでる側も救われる気持ちになる。
これがデビュー作とは驚くほど、人の心に寄り添った深い話だった。
Posted by ブクログ
現代の、特に女性が抱える問題がてんこ盛りだった。
著者の人間観察力と女の解像度がえぐいので、登場人物が生き生きとしている。癖のない綺麗な文章。
でも名前を覚えるのがちょっと大変だった。
子供が欲しい、欲しくない、産んで後悔している・・・それぞれ立場は違うから、誰かの欲しいものを他の誰かが持っていて、羨ましがる。自分では「何がそんなに羨ましいの?」と思うことでも。
これはよくあることで、なぜか自分に敵意を向けてくる人がいるなと思っていたら、自分はその人の欲しいものを手に入れていて、でも自分にとっては当たり前だから気付かない。そして自分にだって持っていないものは沢山あって、それゆえに悩んでいる・・・。
それが他人からは見えないから分からない。
羨ましいと思うことは自由だけど、嫉妬心や嫌悪感を相手に向けるまでいくともうヤバいと思う。人の足を引っ張る人は落ちるとこまで落ちる。
p.266
人を思いやるって簡単ではない。
自分の言動が、人を傷付けていると認めない人がたまにいる。自分が同じ経験をしてやっと気付く。
想像力や共感力がないと、人の気持ちが分からない。
だから小説を読んだり映画を観て疑似体験するって思いの外大切なのではと思う。
この物語ではどの人物もがんじがらめな状況だったけど、結局柚季という唯一自分の軸を持った人物がいたから周りの考えも変わった。
他人を羨ましがるということは、他人基準で自分の幸福度が変わってしまうということ。ただでさえ女性は結婚や出産というきっかけで生活が大きく変わる。
けれど自分の幸せとは何か、を分かっている人は強いのだ。
柚季の心の内を読んでいると泣きそうになってくる。
それでもやっぱり現実では柚季のようなできた人間はそんなにいないから、ラストは都合が良すぎるかなと思った。
特に千夏子のパターンは夫とも子供ともやり直せないタイプだと思う。子供への態度が酷すぎる。夏紀より自分優先と思ってしまっている。「夏紀に捨てられそうになって」じゃなくて先に千夏子が夏紀を見捨てたのに。あのままだと将来本当に捨てられていたと思う。
それがあっさりラストに夏紀を受け入れて、八つ当たりしなくなって、気難しい夫とも話し合えて・・・そんなうまいこといくもんだろうか、と思ってしまう。
p.289
「彼女が幸せだろうと不幸だろうと、自分の人生には何ら影響はない。なのに、何がこんなにも苦しいのだろう。」
p.315
「自分が欲しいものを持っている相手が、自分の中に欲しいものを見ている。」
自分の行いは誰かが見ているけれど、見ていて「くれている」誰かがいることは幸せなことでもある。
20250322
Posted by ブクログ
読むのに時間がかかってしまったが面白かった。
子供がいない女性の秘密、子供がいる女性の秘密、
偽りの自分を人に見せていることに対する葛藤など胸が締め付けられる。
正直子供を育てていい大人ではないと思う人物もいててイラっとしながら読む描写もあった。
Posted by ブクログ
単行本で既読。
仕事辞めたい、結婚したい、子どもがほしい、女の子(男の子)がいい、働きたい…一つの欲望が叶えられるとすぐまた次の欲望が湧いてくる人生のサイクル。
「自分が欲しいものを持っている相手が、自分の中に欲しいものを見ている」関係で繋がった5人の女性たちの心の苦しみが生々しい。
夏紀を傷つける千夏子の暴言やミポリン先生の悪質さはかなり不愉快だったが、母親の身勝手な葛藤の犠牲になっていた子どもの気持ちが報われたラストは再読でも思わず涙腺が緩んでしまう。子どもから寄せられる愛情の尊さを思わずにいられなかった。
Posted by ブクログ
男と女っていう描写が多くてあまり言いたくない問題だけど差を感じさせられた、途中嫌な気持ちというか少しイライラするところがあったけど、最後はよくおさまったのかなと思う。でもそんな簡単に受け入れられるのかなとも少し疑問。
結婚や友情も拗れてしまうと難しいし、大変だなと思った。人は周りの人と比べて自分よりも優れていると妬むけど実際は違ったりお互いそう思ってたりする。そんな些細なことで何かが崩れてしまったり自分が壊れてしまうくらいなら、自分は自分で生きていきたい(これは理想で案外難しいことだけど)。他の人と比べてもあまりいいことはないのだろうかと思う。