あらすじ
いまこそ一番注目すべき経済道徳の真髄を、渋沢栄一の言葉から学ぶ。大著「青淵百話」より、その正義の実業哲学を中心に再構成。
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Posted by ブクログ
渋沢栄一は単なる実業家ではなく「近代日本の礎を築いた人物」としての栄一の姿が鮮明に浮かび上がりました。渋沢は天命論や社会奉仕の思想を説きながら、忠義・信頼・敬意といった道徳的美徳を、実業の現場でいかに実践すべきかを具体的に示しています。その思想は単なる理想論ではなく、実社会で役立つ生きた規範として読む者に迫ってきます。
特に27歳で徳川昭武に随行しパリ万博を視察した経験は、彼にとって決定的な転機だったように思います。欧州諸国の制度や社会の在り方を直接見聞したことが、その後の日本における実業の方向性を決定づけたと言えるでしょう。帰国後は「商法会所」の設立、大蔵省での国づくり、そして第一国立銀行の創設へと続きます。この時代こそ、渋沢が最も大きく飛躍した時代であり、日本の近代化を牽引した原動力となったと感じました。
同時に彼は「道徳経済合一説」を掲げ、利益を追いながらも社会に奉仕するという理念を貫き、生涯に約500もの企業に関与しました。そのスケールの大きさと一貫性に圧倒されます。
現代においても「利益と倫理をどう両立させるか」は大きな課題です。本書を通じて、栄一の信念と時代を超えたビジョンの力強さを改めて実感しました。