【感想・ネタバレ】風船 ペマ・ツェテン作品集のレビュー

ペマ・ツェテン / 大川謙作

映画監督としても注目されるペマ・ツェテンの小説家としての魅力、そしてチベット文学の魅力を伝える作品集。

草原に暮らす羊飼いの家族たち。その穏やかな生活のなかにある、秘められた葛藤と孤独を描く表題作「風船」のほか、仏教的世界観と近代的価値観が混じり合う現実を生きるチベットの人々をユーモラスに、幻想的に、時にリアリスティックに描いた短編6作品を掲載。ほか、自伝的エッセイと、訳者解説も所収。

[ブクログ · ★★★★★]

ペマ・ツェテン監督の、羊飼いと風船という映画の、元になっている、監督ご自身による小説。他の短編も映画化されているものがあり、映画にモチーフやエピソードとして登場する、映画監督ペマ・ツェテン氏の引き出しのような短編集。チベットの昔からある世界観、チベット仏教に基づくDNAに紐付けされているかのような人生菅世界観と、中国の下教育や政策により広がる新しい価値観やものの見方、人それぞれの受け止め方が、繊細だがおおらかに描かれていて、独特のユーモアや言い回し、表現方法も面白く、チベットの今を知る良い作品集。映画羊飼いと風船も素晴らしい作品。