【感想・ネタバレ】新・資本主義論:「見捨てない社会」を取り戻すためにのレビュー

あらすじ

分断と対立を克服するための処方箋

各国の社会は今、ナショナリズムやマルクス主義といった古びたイデオロギーやポピュリズムに流される低所得・低学歴層と、グローバル化する世界で利益を追求して豊かな暮らしを謳歌する高学歴エリート層とに分裂し、対立している―。そんな溝を埋め、資本主義をふたたび多くの人びとに豊かさと希望をもたらすものへと軌道修正していくにはどうすればよいのか。著者は、資本主義が本来もっていた責任感と義務感に基づく「助け合いの精神」の復興を説く。そして、そのためにはデジタル化の進展で希薄になり、価値観の相異から内部に対立さえ抱えるようになった国家や地域社会といったコミュニティの住人としての、アイデンティティーの回復が重要だと指摘する。
開発経済学の分野を牽引してきた第一人者ならではの深い洞察をベースに、かつて鉄鋼業で栄えながら深刻な状況に陥って回復の途上にある英国シェフィールドの労働者の家庭に育った個人的な体験も交じえながら、資本主義の倫理的・道徳的側面に着想を得た方策の数々を平易な言葉で述べる。グローバル社会を生きるあらゆる世代に向けて、未来への指針を具体的に提示した野心作。

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Posted by ブクログ

岸田新政権のスローガンも「新しい資本主義」であり、興味深く読んだ。非常に参考になる考え方であるが、都市生活者のレントに課税して再分配に回すというのは政策立案の過程で相当緻密な制度設計が必要になるように思う。この点についてはどうなのだろうか?

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2021年10月05日

Posted by ブクログ

 資本主義のあり方をもう一度考えようとすることに親近感を覚えながら読み進めていくうちに、書かれていることはものすごく当たり前でその通りなのだという感想を持つばかりなのだが、その当たり前のことを考えるためにこれだけの時間を費やさなければならないということもまた現実だと思い返す。
 何が問題なのかと問うと、これはやはり手段が目的になってしまって、それが「普通」なのだと無意識に刷り込まれてしまっていることにあるのではないだろうかと思う。
 本書が焦点を当てるところは1945年から1970年の25年間。これはどんな時代だったのかを振り返ってみる。ここに重要な要素があるのだと、そして読み手はここに意識をはたらかせる。
 資本主義を否定するものではない。少し軌道を外れてしまったところを正そうとする試みである。

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2021年03月14日

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