あらすじ
「ここは夜叉神川の上流。
両側に高い崖が迫る谷、聞こえるのは川の音と、山で鳴く鳥の声だけだ。」――『川釣り』より。
「昔、亡くなったおばあちゃんが教えてくれた。魂という漢字に鬼の字が入るのは、もともと人の心に鬼が棲んでいるからだと。」――『鬼が森神社』より
全ての人間の心の中にある恐ろしい夜叉と優しい神、その恐怖と祝福とを描く短編集。
「川釣り」「青い金魚鉢」「鬼が森神社」「スノードロップ」「果ての浜」
夜叉神川の上流から下流へ、そして海へと続く全五話を収録。
野間児童文芸賞受賞後初作品
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
夜叉神川…名前だけで背すじがゾクっとする。
この夜叉神川の側に古くからある小さな神社・鬼ヶ守神社。ここに祀られているのは神様ではなく、なんと鬼。
神と鬼とは表裏一体。善と悪も裏と表で同じもの。魂という漢字に鬼の字が入っているのは、もともと人の心に鬼が棲んでいるから。
こんな怖い文章が続く短編集でちょっと覚悟して読み進めたけれど、ラストはどれも、長かった夜がようやく明け眩しい朝日が昇るように、ほっと息をつけるものばかりで安心した。
夜叉神川の側に住む子供たちの周りで起こる摩訶不思議な出来事5話。
子供の世界は大人には分からない複雑なことが多いもの。自分の気持ちを巧く表現できず、つい残酷な言葉も平気で言ってしまう。
自己防衛のためなのか他人には殊更厳しく当たる。
こんな不器用な子供たちに警笛を鳴らすように、不思議な現象に次々と誘い込まれる。
「鬼はだれの心にも棲んでいる」
そんな怖い鬼だけれど、大人になるにつれいつの間にか見て見ぬ振りが出来るようになるもの。素直に反省出来る子供の期間だから、鬼も神のごとく優しく叱ってくれるのかもしれない。