【感想・ネタバレ】Jポップで考える哲学 自分を問い直すための15曲のレビュー

あらすじ

なぜ「会いたくて震える」のか? 「自分らしさの檻」って何? その答えは、哲学の中にあった! Jポップの名曲の歌詞を分析した、最も分かりやすい「哲学入門」。Jポップの歌詞を哲学で読み解く! ――Jポップは、しばしば「自分」や「愛」「人生」をテーマとし、その歌詞は、シンプルであるがゆえに我々の胸に響く。一方、複雑な事象の本質を突き止め、露わにして見せようとするのが哲学ならば、両者は、密かに同じ企みを担っているとは言えまいか。Jポップの名曲を題材に誘う、いま旬の哲学入門!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

哲学的な本は苦手で全然読んだことがなかったけど、J-POPを題材にしているから、読みやすかったし、読んでいて楽しかった。
でもやはり話が難しいため、あまり詳しく内容を覚えることができなかった。
本の構成的に、先生と麻衣が対話している形なのが読みやすかったし、読んでいる私自身が思い出せないことを麻衣が解説してくれるのがありがたかった。
特に印象に残ったのは、ワンオクの"A new one for all,all for the new one" といきものがかりの「YELL」。ワンオクは普段から聴くから、いつも聞いている曲にこんなに深い意味があるんだ、ということに驚いた。いきものがかりの曲は、自分が進む道を自分自身で決めることの重要さが示されていて、進路で悩んでいる私的にはとても面白かった。
自分とは違う生き方をしている人を、尊敬できるかどうか、が畜群であるかどうかを判断すること、というところが心に残った。つまり、自分が自分の人生に攻めの姿勢でいて、その上で自分と同じように自分の人生を自分で決めている人を尊敬できる、ということだと思う。自分よりも畜群から抜けることに恐怖を持っていない人に対して、ひがむのではなく、尊敬できる、というのが大切。

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2017年09月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

<目次>
第1章  自分
第2章  恋愛
第3章  時間
第4章  死
第5章  人生

<内容>
文庫書下ろし。学生による出版コンペティション「出版甲子園」での企画が原案(2015年の第11回)。大阪大助教によるもの。先生と助手の女子大生の会話形式で、目次の5つのテーマを、それぞれ3つのJ-POP(計15曲)の歌詞から読み解いていく。セカオワ・RADからいきものがかり・ミスチル・東京事変・AIKO・宇多田ヒカルまで多彩。軽い感じで読み通せるが、言っていることは深い。ニーチェやパスカル、キルケゴールまで出てくるが、そのあたりの扱いは軽い。高校生から大学生を読者層に想定しているのではないか?高校の「倫理」の授業で使えそう。

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2021年09月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

個人的に哲学は近寄りがたい&自分には縁のない学問だと思っていたが、非常に身近なJ-POPの歌詞から哲学を考えていくスタイルは自分に合っていた。
非常にはっとさせられたのは、宇多田ヒカルの「誰かの願いが叶うころ」の考察で出てきた「共同性の暴力」である。いくら恋人同士だとしても、「私」と「他人」の関係性からは抜け出せないし、恋人の他社性を否定することは暴力的なことであるとのことだったが、過去の恋人とうまくいかなかったのはコレだわ…と大反省した(笑)
ちなみに私の場合は、恋人なんだから私が考えていること分かるよね?と期待しては勝手に落ち込む、ということを繰り返し、もういい!別れる!みたいな感じのパターンだった。今考えるとめちゃんこ子どもだし相手に申し訳なさすぎる。。。
一方で「誰かの願いが叶うころ」の「私」は相手を尊重しており幸せを願っているからこそ、動けない…のだそう。ちなみに「私」は相手が自分に関心がなくなっていることを分かっている。切ない。

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2021年04月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【きっかけ】
本屋で見つけた。中高生には難しいか。

【内容】取り上げられた歌と歌手と哲学者
①ミスチル『名もなき詩』カント
②ゲスの極み『私以外私じゃないの』フィヒテ
③乃木坂46『君の名は希望』ヘーゲル
④AI『STORY』ブーバー
⑤西野カナ『会いたくて会いたくて』メルロ・ポンティ
⑥宇多田ヒカル『誰かの願いが叶うころ』レヴィナス
⑦バンプ『天体観測』ベルクソン
⑧Aiko『キラキラ』ヴェーユ
⑨東京事変『閃光少女』バタイユ
⑩ラッド『おしゃかしゃま』キルケゴール
⑪浜崎あゆみ『dearest』ハイデガー
⑫ワンオク『a new one for all,All for the new one』サルトル
⑬嵐『Believe』パスカル
⑭セカオワ『RPG』ヤスパース
⑮いきものがかり『YELL』ニーチェ

【感想】
齋藤孝『大人の読解力を鍛える』でもJPOPの歌詞が取り上げられていたが、こちらはより本格的。哲学が絡んでくるので抽象的で難解な部分もある。先生と女子大生・麻衣の対話形式で読みやすくはあるが。

①名もなき詩
「自分らしさ」を意識して周囲と接していると、結果的に「自分らしさの檻」の中に閉じ込められ、息苦しくなるという逆説的な現象。「自分らしさ」とは何だろうと考えるとき、その対象「自分」と主体「自分」は一体となっている。他者について考えるとき、対象とは主体は別々。自分について考えることは、それ自体がおかしい行為。テレビを見ている自分の映像をテレビで見ると、そのテレビの中ではテレビを見ている自分が延々と移り続けているという入れ子構造。

②私以外私じゃないの
「私」を考えるとき、「これが私自身だ」と確実に言えるのは、「私ではないもの」。「私」はリンゴやA君ではない。フィヒテによると、非我により「私自身」が分かっていく。「私は~ではない。~でもない」と限定していくと、「私自身」が分かってくる。

③君の名は希望
透明人間だった僕を君が照らしてくれたことにより、僕は自分の存在を自分自身で認識できた。相互承認にはほどよい距離感が必要。そのバランスが崩れると支配や相互依存になってしまう。

④ストーリー
他者のうち、恋人が最も他者性を帯びている。他者(恋人)は明確に言葉で説明できない。リンゴなどの一般的なものは言葉で説明できる(赤くて、丸いものなど)。言葉で説明できるということは、一般化できるということである。一般化できるかできないかに、他者とそれ以外のものの違いがある。私と物事の関係性は「私―もの」「私―君」の2種類に分けられる。他者、特に恋人は相互的かつ直接的な関係。

⑤会いたくて会いたくて
他者(恋人)と自分が一体になっている。その一体になっている恋人と会えなくて「震える」というのである。「震える」とは生命の危機。一体になっている恋人と別れることは、体の一部をもぎ取られることに等しい。従って、「震える」という表現には強いインパクトがあり、自分の生命を脅かすような意味合いを帯びている。ポンティによると、これは人間の癒合性。私と他者の共同性。

⑥誰かの願いが叶うころ
自分の幸せはあなたと一緒になること。あなたの幸せ(願い)は私と別れること。自分と他者の関係の限界を示している。他者との共同性を突き詰めるとそれは暴力になる。みんなの願いは同時には叶わない。

⑦天体観測
記憶の想起、過去を題材としている。日常的な記憶と非日常的な記憶。日常的な記憶は、履歴書に書かれるように情報化される(履歴書的な記憶)。対して、非日常的な記憶は、純粋記憶(ベルクソンによれば)。非日常的な純粋記憶から、日常生活に必要な分の記憶を捨象したものが日常記憶になる。非日常的な記憶(=純粋記憶)こそが、その人の本来の記憶。しかし、人は非日常的な記憶に浸っていたら、まともに日常生活を送れないというジレンマに陥る。天体観測の歌詞は、過去の自分が経験した純粋記憶を思い起こしている場面を描いている。

⑧キラキラ
未来を題材としている。目的:手段=未来:現在という関係。目的は未来のことであり、手段は現在のこと。人は目的:手段という関係の中で生きている。目的(=未来)に早く達したいがために、いろいろな行動=手段をとる。その意味で人は目的や未来に縛られている。ただ、「待つ」という行為は来るべき未来を予感しながらも、現在を直視する行為である。本歌の歌詞はそういう意味合いが読み取れる。一刻も早く未来を実現したいという欲望に囚われることない、「待つ」ことの精神的な強さ。

⑨閃光少女
現在を題材としている。目的と手段に囚われた日常、また、過去と未来に囚われた日常から脱却するには、蕩尽することが必要だ。今という一瞬を全力で生きることが、今という現在と向き合うことになる。いろいろな柵から逃れて、過去や未来に囚われず、現在と向き合うには、遊ぶことが有効である。遊びは目的:手段の関係に囚われず、今遊んでいることに夢中になること=過去や未来のことを忘れること=現在を生きること。

⑩おしゃかしゃま
人間が作った絶対的な権威である「神様」を否定して、「神様」をつくった人間を批判する。神様が人間をつくったであると同時に、人間が神様という概念をつくった。ここに矛盾が生じる。そして、その矛盾から目を背けようとする人間を自己欺瞞だとして批判する。「神様」が人間の創造物なら、「死後の世界」も同様ではないか。本当に死後の世界は存在するのか?肉体的な死と魂の死。宗教=神様は魂の死を絶対的な恐れだとした。しかし、神様=宗教は人間がつくった産物だと気づいたとき(キルケゴールによると絶望したとき)、人間は初めて本当の死というものを意識する。本当の死を意識することで、逆にどう生きるかということに目を向けるようになる。

⑪dearest(意味:親愛なる人、いとしい人、あなた、おまえ)
日常生活において死は覆い隠されている(公共の場所では死体はすぐに撤去されるなど)。ハイデガーによると「非本来性」。「非本来性」とは本来の生き方から目を逸らすこと。逆に、死に直面することで明らかになる自分自分の本来の生き方を「本来性」と呼び、「本来性」を自覚することを「先駆的覚悟性」と呼んだ。

⑫a new one for all,All for the new one
死を大切な人の死とその他大勢の死に分けたとき、本歌は前者のことを歌っている。大切な人が死んだあとも日常生活を送れるようになることが、その人の死を受け入れたということ。サルトルによると、その人の死を意味づけするのは、その死んだ人自身ではなく、後に残された人。「他有化」。

⑬Believe
前進しなければいけないが、どこに進めばいいのか分からない逼迫感。目先のことで精一杯で、最終的な到達点がどこか分からない不安感。自分の人生についても分からない不安。情報過多、低成長などの現代の社会状況が明確な目標を見渡せなくしている。世界の相対化。パスカルによると「広漠たる中間」。相対化された社会「広漠たる中間」の中での人間の生き方は「気晴らし」「虚しさ」「倦怠」に分けられる。パスカルによると、戦争でさえも国王が自分の不安から目を背けるための「気晴らし」らしい。「気晴らし」はあくまで「気晴らし」に過ぎないので、「虚しさ」が次にわき起こる。「虚しさ」のまま何もしないでいると「倦怠」に陥る。このスパイラル。

⑭RPG 
決断をしない人生=「方法」的かつ「世間」的に生きること。世間と同じように生きていれば、自分だけが苦しんでいるわけではないと慰められる。孤独ではないという安心感を得られる。決断するとはこれとは逆のこと。ヤスパースによれば、決断(=飛躍)が人間の人生を表現する。決断するとき、人はもはや世間に囚われていない。「無制約性」

⑮YELL
「翼はあるのに飛べずにいる」自分の人生を決断しきれない。まだ世間に囚われている状態。ニーチェによるとそのような人は「畜群」。人は「畜群」になることで、自分を助けてほしい、自分は有害ではないと示したいと思っている。こう思うのは、人が一人では生きていけない弱い存在であり、孤独を恐れているから。しかし「畜群」を演じ続けることは、他の人々から迫害を受けはしないこものの、疲労が蓄積してくる。孤独でもあってもニーチェによる「星の友情」があれば問題ない。「サヨナラはかなしい言葉じゃない それぞれの夢へと僕らを繋ぐYELL」という部分は「星の友情」の本質を表している。「畜群」というのは世間に同調し、孤独を恐れ、周りにびくびくしている存在で、皆と一緒がいいと思う存在であるが、自らそう望んでいるのなら、「畜群」ではないのでは? 「畜群」かそうでないかの分かれ目は、「自分と違う生き方をしている人を尊敬できるか」「自分を誇りに思えるか」の有無。

終わりに
哲学は散歩に似ている。

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2020年04月03日

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