【感想・ネタバレ】雑貨の終わりのレビュー

あらすじ

疫病に街がすっぽりと覆われてしまう前、店内を眺めた。専門店にあったはずの工芸品も本も服もみな雑貨になった。物と雑貨の壁は壊れ、自分が何を売っているのか、いよいよわからなくなっていく。これからどうしたら物の真贋の判断を手放さずに済むだろうか。広範な知識と経験を交えて雑貨化の過去と現在地を探る画期的な論考。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

「専門店にあったはずの工芸品も本も服も古道具も植物もみな、雑貨になった」ほぼ完全に雑貨化された世界を見つめる、雑貨屋の店主のエッセイ。前作も面白かったけど、より諦観の念が強く、乾いた視線で家族や出会った同業者、お客さんの話をする。雑貨屋店主が雑貨化に打ちのめされているなんて、武器商人が戦争を憂うみたいな話だけど、そのことに一番自覚的なのは著者本人であって、のんきに無自覚にものの本質を抜き去って「雑貨化」する同業者を白い目で見ながらも話を合わせて、苦言を呈すなんてことはしないのだ。「同業者」だからなのだろう。不勉強なもので、文中するすると出てくる文化やら思想やら音楽やら、そしてその歴史のエピソードに毎回へーっ、となる。
雑貨の巨人無印良品の話と、社会の虚構性を引き受けて隠さんとするディズニーランドの話、信仰という魂を抜かれたシェーカーズスタイルの話が好き。
資本主義に実存を食い荒らされているのは人間も雑貨たちも同じではあるが、その悲哀がこうして新たな語りを得ることが、値札のついた雑貨となったものたちにも再び顔が与えられる経緯となればよいな、と思ったりする。やっぱり雑貨が好きなので(お前も武器商人だと言われれば全くその通りだ。雑貨屋巡りなんて、ものの数秒でたくさんの雑貨を値踏みして消費し続ける営みだ)。結局のところ、誰かの手に取られ、居場所と関係性を与えられた先にしか値札の外れた価値というものはない。西荻のあの店でなくても他の店でもどこでも、似たような雑貨を見ている時に私や誰かの頭にぼんやりとでも読んだことが舞い降りてきたら、いつもよりちょっと多く関係性の糸が渡される気がする。たったそれだけだけど…。

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2021年04月14日

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