あらすじ
「何を考えているんだろう? この子…」ネコの心の研究を思い立った著者は,ネコが思い出をもつことや,簡単な現象について結果の予測をすることを初めて実験で明らかにする.研究のきっかけや実験方法の工夫,被験者(?)募集にまつわる苦労話など,エピソードを交えて語る.ネコ好き長年の謎に挑んだ「ニャン学ことはじめ」.
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Posted by ブクログ
ネコごころが知りたくて研究に飛び込んだ著者は、扱いの難しい相手に悪戦苦闘しながら、ネコが思い出をもつことや簡単な現象の予測をすることを初めて科学的に明らかにし…。ネコの心理学にまつわるエピソードを楽しく語る。
Posted by ブクログ
著者はEテレだったか、若手研究者の研究出ていたを紹介する番組で取り上げられた人だったと思う。
ネコにエピソード記憶はあるのか。
ネコは因果関係を推理できるか。
ネコは飼い主を認識しているか。
こういった疑問を、実験をして証明する。
その実験の手立てを考え、実行する。
時に失敗したり、思いのほか大変だったり。
そんな研究生活が、親しみやすい語り口で紹介される。
驚いたのは、人懐っこさは遺伝的に決まっているらしいこと。
オキシトシン受容体遺伝子の変異により、懐きやすいタイプと、そうでないタイプが生まれるという。
また、興味をそそられたのは、今後のネコの進化を予想した末尾のところ。
人に懐くタイプを培養した「純血種」と、人に懐きやすい遺伝子タイプを持つ野良猫が人に飼われ、ますます「イヌ」化する。
一方、人に懐きにくいタイプの野良は、ますます臆病になり、やがて人里を離れたところでしか暮らせなくなる――かもしれないというのだ。
まだまだ、ネコ研究は進んでいく。
これからどんなことがわかるのだろう?
Posted by ブクログ
ネコは、体験したことを覚えているのか? あることから他を推測することはできるのか? できそうに思えるが、それを証明するとなるとかなり難しそうだ。本書は、「ネコの心理を科学する」本。ネコの心・能力を、実験で検証していく。
ネコは思い出(学問的には「エピソード記憶」というようだ。覚えようとせずに覚えた記憶)をもっているのかを検証。おやつを食べる皿と食べ損ねる皿を用意し体験させる。体験後、もう一度食べた皿と食べ損ねた皿を用意すると、ネコはどういう行動をとるか。その行動でネコに記憶があると立証できるか?
ネコは、音から物体の存在を推理できるかを検証。箱の中に物を入れ、それを振って、その音から、予測と異なったと思われる時(入っているはずなのに音がしない、入っていないはずなのに音がする)にネコが示す対応(学問的には「期待違反法」というようだ)を見る実験。そこに有意なネコの行動が見られるか?
ネコ大好き人間によるネコの解説本も、そこは「岩波科学ライブラリー」、科学するとはどういうことかを教えてくれる本でもある。
著者は、1991年生まれ、京都大学大学院文学研究科博士課程終了。本書に掲載されている研究で京都大学総長賞受賞(2017年)。肩書とは裏腹に、ネコ好きの柔らかなタッチの文章で、本当は結構難しいことを、楽しいエピソードをまじえ、わかりやすく楽しく説明することができる。まだ若く、今後の研究とその成果を引き続き発表してくれることを期待。
ネコ大好き人間とともに、実験大好き人間におすすめ。