あらすじ
【ジェフ・ベゾスは、このヤバい日本人の「部下」だった】
かつて日本には、「起業の天才」がいた。
リクルート創業者、江副浩正。
インターネット時代を予見、日本型経営を叩き潰し、
自分では気が付いていない才能を目覚めさせた社員のモチベーションを武器に
彼がつくろうとしたのは、「グーグルのような会社」だった。
だが彼の名は「起業の天才」ではなく、
戦後最大の企業犯罪「リクルート事件の主犯」として人々に記憶される。
「ベンチャー不毛の地」となった日本に必要な「起業家の資質」とは何か。
リクルート事件の大打撃を乗り越え1兆8000億円の負債を自力で完済、
株式時価総額で国内10位にまで成長した「奇跡の会社」はどのようにつくられたのか。
苦境に立ち逆風に向かうすべての日本人に贈る、
歴史から葬られた「起業の天才」の真の姿。
【日本にも、こんな経営者がいた!】
・グーグルの「検索」を先取り
・独自の「クラウド・コンピューティング」
・読売新聞と「全面戦争」
・電通から広告を奪う
・日・米・欧を結ぶコンピューター・ネットワーク
・世界の「コンピューターの天才」をかき集める
【「はじめに」より抜粋】
江副さんが生きていたら、保身に汲々とする日本の経営者にこう尋ねることでしょう。
「経営者とはどういうものか、経営者ならなにをすべきか。わたしはつねに学び、考え、
そのとおりにやってきました。あなたがた、自分が経営者であると考えたことがおありですか」
――瀧本哲史(京都大学客員准教授、エンジェル投資家、2019年没)
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Posted by ブクログ
リクルート創業者の江副浩正の一生を描いた一冊。
0から価値を生み出す姿や尊さに胸が熱くなりつつ、リクルートという会社にも強く惹かれた。
以下、メモ。
自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ
欠乏感を埋めるために、懸命に学び、素直に実行したのです
自分よりも優れた者に働いてもらう方法を知る男ここに眠る
じぶんの「こうしたい」を部下に伝えると、命令と服従の関係になってしまう。
だから部下にしつこく「君はどうしたいの?」「それで?」「こういう見方もあるよね」と根気強く聞き、「さすが先生!おっしゃる通り」「君がやってよ、君の言う通りなんだから」と会話して、「評論家」だった社員を「当事者」にかえてしまう
地方出身者で家が貧しく、野望に燃える人材を獲得せよ
Posted by ブクログ
リクルート創業者江副浩正の生涯を追った1冊。
東大在学中に就職情報誌を作ったことからできた会社がいかに急成長を遂げ、いかにリクルート事件に辿り着いてしまったのか。
心理学を学んだ江副が、高度成長期の企業の中では珍しく、社員に「君は何がやりたいの?」「面白い!じゃあ君がやってよ」とやる気を起こさせる姿はまさにベンチャー企業!
グーグルの38年前に検索機能を構想していたり、インターネットの将来を予想していた先見性にも驚かされる。
まさにジェットコースターのような人生。
生まれる時代が早すぎたんだろうな。
日本にもこんな経営者がいたのに、私も含めて知らない日本人が多いと思う。
でも家庭人としては尊敬できないから⭐︎マイナス1。
Posted by ブクログ
事実は面白い!起業家やビジネスのダイナミズムをリアルに感じられることができる名著。
リクルートや江副さんに関する初めての本。
印象に残ったのは以下の部分:
・壮絶な子供時代(母が3回変わり、父は昔の男性って感じ)
・大学時代からお金を稼ぐことに秀でた才能
・どこにも就職せずリクルート立ち上げここまで大きくした
・経営を学ぶ機会も先輩も上司もいなかったのでドラッカーの本に付箋をたくさん貼って経営を実践を通して学んで行った
・最初は大学内の新聞広告からスタート
・学生向けの情報誌「企業への招待」、初号こそ苦労したがその後は企業への問い合わせが増え、有名企業がこぞって出稿
・こんな昔から「データイズマネー、データを持つものが強い」の考え方
・トヨタの出稿を取るためにトヨタ課的なものまで作って現地に人を貼り付けた
・ダイヤモンドの参入で社長に出さないでくれと直談判→結局最終的にリクルートはシェア一位を獲得
・ジェフベゾスとの交わり
・超合理主義で仕事を進める
・個人の尊重、を一つに掲げて、大学に行けない優秀な高卒生、腰かけ入社としてあまり採用されない女子大学生を優秀なら採用してた
・女帝と呼ばれのちに3代目社長となる河野栄子
・カリスマ性がないと認識していた江副さんは福利厚生に金をかけた
・カリスマ性がないと思っていたからこそ、社員のモチベーションをひきだすために「どうしたいの?」を聞いていた。コーチングアプローチに近い。不平不満の「評論家」社員を「当事者」に変えてしまう
・大沢さんの「心理学的経営」
・待ち時間が嫌い、同時に2-3のことをやらないと嫌
・志布志の土地を購入。石油備蓄構想があり、地価の値上がりを見込んでのこと。建前は社員のための保養所。チームビルディングの先駆け。当時500人、何やってるかわからないが発生し始めていた。顔が知れると知恵を交換し合うようになった。
・小集団に分けてそれぞれに事業責任を持たせるプロフィットセンターを導入。平成になるとその数は1600にも。社員皆経営者主義
・早稲田の入山さん取材で「リクルートには内発的動機がある。外発的動機は報酬や昇進、内発的動機はやりたい、楽しみたいとうちから出てくるもの」
・安比のリゾート開発、スキー場としてのブランド化
・都内に不動産を買おうとしてて情報がないことに気づく。徒歩十分と書いてあり実際歩いたら30分、これはじゅうぶんと読むんだよ言われるくらい不動産業は売り手優位、悪徳、情報の精度も悪かった。ここから生まれたのが住宅情報雑誌、スーモの前身
・余談:鉄道殉職者の妻の働き口のために作られたのがキヨスク
・当時の経団連会長の稲山氏から「ものづくりをしないリクルートは虚業」と言われる(その後経団連加入自体は認められる)
・1984というジョージオーウェルの小説
・情報自由化を見越しNTTの対抗馬となる企業立ち上げが始まる。稲盛さんなど錚々たる経済界の有名人が集まり江副さんも初期メンバーで会合には参画。しかしソニーの盛田さんにまだ早いと第二レイヤーの投資企業に回される
・敵の敵は味方的にNTTとの協業を開始。回線のまた貸し業。
・採用コピー、企業人より起業人
・当時から情報に価値を置いていた江副さんはすごい
・IT新規ビジネス開発のため東大工学部が必要と考えた。当時NTTや新日鐵に行く人が多い中人事部長は東大近くの寿司屋2階を3ヶ月貸し切って座敷でくどくを繰り返し、落ちそうな学生は江副さんが出てきて最後の1推し
・スティーブ・ジョブズがペプシの事業部長だったジョンスカリーを口説いた「いつまで砂糖水を売るつもりなのか、自分と一緒に世界を変えよう」
・即戦力採用のためMBA社費留学中の学生を現地で一本釣り
・AWSのようなクラウドコンピューティングのビジネスを誰よりも早く構想し、スーパーコンピュータにも多額の投資をする。paypalの何年も前に、ファイテルというベゾスが新卒入社したオンライン決済のベンチャーに出資し、と明らかに産業の第三の波を捉えていた江副さんは、第二の波(産業革命後の工業化社会)に留まる日本では明らかに異端児。情報化社会という第三の波に乗り切れなかった日本の敗北はここから始まっていた。
・情報産業と不動産にしか興味がなくなり取締役会でも政治家や高級官僚の話ばかり。1億2億のコストカットについて喧喧諤々と議論をする他の幹部を小馬鹿にする態度。
・政治家に高い酒ではなく安比で取れたサツマイモやトウモロコシを一筆添えて贈っていた。その感覚で新たに「リクルートコスモスの株」を配ってしまっていた。上場目前で自分の株は譲渡できないので、安定株主として過去に売った近しい経営者から一部買い戻しそれを政治家や秘書83人に配りこれが還流株と言って問題になった。
・経営者仲間で女性を連れて行った沖縄旅行が週刊誌にスキャンダルとして出る
・当時あまりまだインサイダーの線引きがあやふやだった。企業の人事情報が無限に入ってくるプラットフォームになったリクルートは本来神の見えざる手のところが神の視座を手に入れた状態。自社の努力で集めた情報を使って儲けて何が悪いという発想でどんどんダークサイドに堕ちていく
・朝日が記事にした。直接的に言葉は使わなくとも「未公開株」「川崎市助役」「売却益一億円」と一面に報じ他紙も追随。株を譲渡された日経新聞の会長も辞任に追い込まれた。江副さんの周りでは脅迫も起こり不穏な空気に包まれていた。
・当時の日本ではエンジェル投資家というものが存在しなかった。江副さんに助言をくれる人はいなかった
Posted by ブクログ
リクルートを創業した江副さんのストーリー。企業はどう経営するとどのような人が集まり、どのように考えればどのように傾いていくのかがわかった一冊だった。自分以外の人間を信用し、任せて、大きくしていくことで、社員ひとりひとりそれぞれが経営者のような会社を作った江副さんだったが、バブルの中不動産売買にのみこまれ、政治家と深く関係を築いていき、いつしかその隙間に人間の黒い欲望や思惑が入り込んでいって最後には自分を壊してしまった人。先見の明があり未来を見据えていたロマンある人で、さらにそれに周りの人を巻き込んで仲間を増やす、人の天才だった人。世代が違うので、生きていたらどんな人だったか、動いているところを見てみたい人だと思う。ダイエーの中内氏が崩れゆくリクルートを、江副さんの思いごと引き継ぐ場面は、とても胸に込み上げるものがあった。わたしも本気で仕事しなければと、思った。
この本の中の場面描写はどれほど正確かわからないけれど、本物のように感じる、その取材力はすさまじいものだと思う。