あらすじ
絶頂にあったカントを襲った筆禍事件。若き哲学者フィヒテとの確執。尽きぬ好奇心の一方で忍び寄る老い…。人間カントの人生の黄昏。
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Posted by ブクログ
自らの体系に対する強い信念を持ちつつも、環境に翻弄されてきた人間味のある晩年のカント像が掴めてとても楽しく読めた。
同時に、カントの晩年に照らして中島先生の哲学者としてのあり方を振り返るような節が所々挿入されていたため、哲学者として生きる事の楽しさ/難しさがヒシヒシ伝わってくるように思われ、単純な晩年カント論に留まらぬ面白さがあった。
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カント。難解な哲学。堅物で頑固。そんな堅苦しいイメージだけしか知らず、でもなんとなく気になって手にした本。
いい意味で期待を裏切られ、カントに親近感が湧く。教科書の中のカントから、人間味溢れる高齢者カントへ。時代的に仕方ないのは分かっているけれど、やはり女性と人種に対する高慢と偏見は酷すぎる。笑ってしまうほどひどい。それは今の価値観で評価するのは、意味のないことなので、スルーしました。動物や外国について、行ったことも見たこともないのに、講義するカントはなんと面白いことか。かわいらしさすら感じました。
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◯日々年老いていって、死を意識しないことがない。そういえば学生時代に机にへばりついてプロレゴメナ、純粋理性批判、道徳形而上学原論などを読んだな、と思いながら読み進めたが、書かれた頃のカントの焦りや環境などは当時全く気にしてなかった(なんでこんなに分かりづらいのか!という思いでいっぱいだった)ので、大変興味深い内容だった。
◯カントの伝記を、晩年にフォーカスして再構成しているが、著者の年齢が近くなってきていてるからか、文章の中に反面教師的な親近感のようなものを感じた。
◯コロナによって死を意識することが多くなったこの時代に、死を前にした日々のあり方に対する示唆も感じる。
◯自分にできることをコツコツやっていこう。
Posted by ブクログ
著者の中島義道が74歳になっている
まさに晩年のカント同様、まとまった質の高い著作を書くことが困難になっているように思われた
72
カントにはドイツ人の自覚は極めて薄かった
自らの出自をスコットランドだと主張した。
ケーニヒスベルクがロシアに占領され破壊されてもほとんど反論もせず、占領したロシア将校たちにもドイツ人と同じように講義した
108
現在、実は当時もカントの主著として高く評価されている「純粋理性批判」、「実践理性批判」「判断力批判」といった3批判書はカント本人にとっては本来の主著である「形而上学」のための方法を提示した予備学に過ぎない
そしてその形而上学をカントはまさに老体に鞭打ってまとめ上げたのではあるが、すでに時間切れであり、誰も見向きもしない低レベルの作品に終わってしまった
211
人間は仕事をせずに幸福に生きることはできない
我々は談話によっては友人を深く知り得ず、彼と仕事を共にすることによって初めて深く知り得る
215
計画に従って進行し所期の大いなる目的を達する仕事によって、時間を充実させるということは、自分の人生を楽しくし、同時にしかもまた人生に飽きるようにもする唯一の確実な手段である
「君が考えたことが多ければ多いほど、君がなしたことが多ければ多いほど、それだけ長く君は生きたことになる」
時間の長さとは想起おける、すなわち過去における時間の長さに他ならない
Posted by ブクログ
哲学者の老年期とはいかなるものか、という単純な好奇心から読むには、ちょっとハードルが高かったかもしれない。
『形而上学』を書くことが自身の集大成になると分かっていながら、老いと残り時間を感じることの苦しさ。
その手前には『宗教論』で国の反感を買い、大人しくしておきなさいと言われたことに対する苛立ちや、フィヒテとの相入れなさを痛感するまでの〝時間のロス〟があった。
〝何事をか成しえて〟権威を持った人は、それを無意識的に手放せないようになってしまうというか。
頭の中が現役であると自分では思っているのかもしれないけれど、隔たりがあることを周りは分かっている状況に、出くわしたりする。
カントやそうした人を見ていると、ただただ自然と老いを受け入れられたらなぁと思うのでした。