【感想・ネタバレ】脳を司る「脳」 最新研究で見えてきた、驚くべき脳のはたらきのレビュー

あらすじ

なぜ、私たちは「特別」なのか?――その答えはここにある。

心のはたらき、知性、ひらめき……
ニューロンだけではわからなかった、
「人間らしさ」を生み出す、知られざる脳の正体

脳のはたらきは、ニューロンが担っている
――この常識が覆されようとしている。
脳の中には、知られざる「すきま」があり、
そこを舞台に、様々な脳活動が繰り広げられていたのだ。
細胞外スペースに流れる脳脊髄液、
その中で拡散する神経修飾物質や細胞外電場、
そして、脳細胞の半分を占めるグリア細胞。
私たちの心や知性の源は、ここにあるかもしれない。
「神経科学の王道」に挑む、新しい脳科学が誕生!

◆おもな内容
・寝ている間に流れる「水」が脳内を掃除している
・認知症と脳を流れる水、睡眠の意外な関係
・脳の若さの秘訣は「すきま」にあった!?
・脳の「すきま」に拡散する物質が気分を決める
・ワイヤレス伝送のような脳の信号伝達があった!
・電気を流すと頭が良くなる? 神経回路がシンプルな人ほどIQが高い?
・知性やひらめきと関係する「もう一つの脳細胞」
・脳科学から考える、脳を健康に保つ方法
……など

◆目次
プロローグ 「生きている」とはどういうことか
第1章 情報伝達の基本、ニューロンのはたらき ――コンピュータのように速くて精密なメカニズム
第2章 「見えない脳のはたらき」を“視る”方法 ――脳研究はどのように発展してきたか
第3章 脳の「すきま」が気分を決める? ――細胞外スペースは脳の“モード”の調整役
第4章 脳の中を流れる「水」が掃除をしている? ――脳脊髄液と認知症の意外な関係
第5章 脳はシナプス以外でも“会話”している? ――ワイヤレスな情報伝達「細胞外電場」
第6章 頭が良いとはどういうことか? ――「知性」の進化の鍵を握るアストロサイト
エピローグ 「こころのはたらき」を解き明かす鍵 ――変化し続ける脳内環境が生み出すもの

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Posted by ブクログ

脳科学の最新研究がわかりやすくまとめられていてとてもよかった。

睡眠中の脳の活動に興味があるのでグリンファテックシステムについて丁寧に書かれてるのはよかった。まだあまり解明されていないんだなあ。

「ほとんどの全身麻酔薬はどうして効くのかわかっておらず、全身麻酔の作用機序を解明したらノーベル賞間違いなしとも言われています。」そうなのか。

超解像シャドーイメージング(SUSHI法)というのでマウスの脳スライスの細胞外スペースが可視化されるの、すごいな。

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2021年06月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

計算論的に脳の研究をしている大学院生ですが、知らなかった情報が満載でとても楽しめました!
本書では、序盤に古くからあるニューロンを中心とした研究の話題を、その後に最近注目を浴びているグリア細胞や脳脊髄液の話題に移るという構成です。この本の主題は後半のグリアや脳脊髄液だと思いますが、ニューロンに関する内容も分かりやすくまとめられていて理解が深まりました。グリア細胞については、アストロサイトの神経伝達物質の回収や数珠状突起による広範囲への投射、オリゴデンドロサイトのミエリン形成によるパルス伝達速度の向上、ミクログリアによる異物の排除など、最新の研究成果を含む興味深い内容が盛りだくさんで非常に勉強になりました。グリア細胞以外にも、脳脊髄液の循環による老廃物の排除や、広範囲調節系からの神経修飾物質の拡散による脳のモードチェンジなど、最新の研究で明らかになった内容が多分に含まれており、とても面白かったです。
これまで何冊か脳科学の本を読んできましたが、最も楽しく読めた本で、自信を持っておすすめできます。

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2024年03月20日

Posted by ブクログ

まったくの門外漢で科学全般素人レベルの知識しかないのですが、タイトルにひかれて購入しました。なんとか素人にも読めるレベルにまとめてもらっていると感じました。特に各章最後の「まとめ」が役に立ちました。私なりの理解ですが、本書の主な論点は、これまであまり着目されていなかった、脳内の「スキマ」に存在しているグリア細胞、しかもそのなかでもアストロサイトというグリア細胞の果たす役割です。素人の私でも、脳内ではニューロン細胞がシナプスをつうじて電気信号を送りあっている、というメカニズムは知っていましたが、それ以外のコミュニケーションの仕組みがあること、それは言ってみればワイヤレス通信なのか、アナログ的通信のようなメカニズムで、それにアストロサイトが重要な役割を果たしているとのことです。

最終章にも書かれていますが、細胞外スペース、神経修飾物質(セロトニン、ノルアドレナリン等)、拡散性伝達、脳脊髄液、細胞間質液、細胞外電場、アストロサイト、といったニューロン以外の要素にスポットライトを当てている本です。なるほど脳科学の現在位置はこういうことか、というのが本書を通じてよくわかりました。

個人的に最も印象に残ったのは最終章です。著者が、知能と知性の違いに言及し、知能とは「答えがあることに素早く正確に答える能力」、そして知性とは「答えがないことに答えを出そうとする能力」であり、後者こそが人間らしさであること、またそれを生み出しているのはデジタル的なシナプス伝達と、アナログ的な細胞外スペースでの拡散的伝達の相互作用ではないか、と締めくくっていることです。テレビのクイズ番組などを見ると、現役東大生などが登場し、答えがあるものをいかに早く正確に回答するか、という「知能」を競っているものばかりが目につきますが、はたして彼ら/彼女らの「知性」はいかほどなのでしょうか。本書を読んで、改めて「知性」の大切さに気付かされました。

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2023年05月08日

Posted by ブクログ

脳の働きはニューロンが支配しているとされてきた常識に新たな見解を提示した内容。
ニューロンを取り巻くグリア細胞(脳の中にある液体も)が実はニューロンと共に複雑な相互作用によって「ヒトの脳の働きの作り出している」とのこと。
非常におもしろい。脳の構造など素人には基本的な部分での勉強にも多いになりました

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2022年09月11日

Posted by ブクログ

ちと中断入ったりで時間かかったけど、ようやく。
もう教科書読むこともないだろうけど、教科書自体に反映されるのは一体いつなんだろうか。正解不正解を求める入試をなくせば機動的に変えられるのかも⁈

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2022年03月22日

Posted by ブクログ

化学的な作用機序の説明など、自分にはちょっと難しいところもありましたが、おおむね興味深く読むことができました。
脳の中で神経細胞ではない細胞があり、「人間は脳を○%しか使っていない」という俗説が広まったという話は知っていましたが、その細胞(グリア細胞)が電気信号を発しないことから、知的活動と直接関係ないと思われていたことが理解できました。
ちなみに、グリアとは、パテないし膠のような物質を指すということは初めてこの本で知りました。
つまりグリア細胞は、脳の「埋め草」のようなものだと思われていたということですね。

ところが、最近の研究によれば、グリア細胞にも重要な役割があるらしいと分かってきたとのこと。
これは神経(ニューロン)中心主義の人間観にも影響を与えるものでしょう。
もしかすると、「脳に電極を刺してサイバースペースにダイブする」というイメージにも修正が迫られるかもしれません。
グリア細胞の役割を解明するには、実験手法上の難点もあって、まだ判明していない部分も多いようですが、今後の研究の進展に期待したいと思います。

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2024年01月25日

Posted by ブクログ

 脳の特殊性について、重要な要素をかいつまんで紹介している。脳の複雑性のため、専門用語が少なくて読みやすいと感じる。脳の働きの中で、特に重要なのが、電気信号・間質・細胞外電場だと考える。
 脳の構造として、ニューロンが広がった樹上突起がいくつもあり、そこをアセチルコリンの放出・分解によるシナプス伝達によって、刺激を受け渡すことで、情報を理解することができる。神経細胞への刺激により、カリウム/ナトリウムのイオン濃度が変化することで、活動電位が生まれる。

 脳の働きは、電気信号によって行われており、”電気生理学”の学問が出来上がるほどである。他にも、顕微鏡技術の発達や脳障害の実例から、脳組織の役割を解き明かすことができる。

 脳の中には、すき間が存在し、間質液で満たされている。すき間は細胞外スペースと呼ばれ、神経修飾物質(広範囲調節系(アドレナリン、セロトニンなど))を拡散させている。この働きによって、私たちの活動の時間帯やこころの働きに関与している。また、睡眠中には脳脊髄液が入れ替わることで、脳内を洗浄するなどの役割を果たしていると考えられている。

 細胞外電場による伝達をエファプティックコミュニケーションと良い、シナプス伝達とは異なるワイヤレスな伝達が存在していると考えられている。低周波では、特に電流を伝えることのできる量が多いそうだ。

 また、脳内のグリア細胞(アストロ細胞)が多い人ほど、知能が高くなる傾向にあるなど未知の領域についての研究にも触れている。

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2023年06月20日

Posted by ブクログ

機械学習を作るにおいて、脳の仕組みも理解しようと思って読んだ一冊。日本人の方が書かれているので、内容が身近でわかりやすかった。ただ、個人的に知りたかったニューロン間の情報伝達の内容はごく一部だった。

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2023年06月03日

Posted by ブクログ

脳研究といえばニューロンというイメージが強かったがグリア細胞、細胞外スペースなど研究領域が広がっているという話。ニューロン以外も神経伝達物質の運搬に関わっているという話や、それがヒトの気分や性格、特性、さらには知性や意識に影響している可能性はワクワクしますね。

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2023年03月03日

Posted by ブクログ

面白い。脳はニューロンだけで成り立ってると思ってたが、グリア細胞(アストロサイト)、細胞外スペースなど、さまざまな相互作用の上に機能している。

ニューロン以外のグリア細胞も神経伝達物質を運搬しているとか、細胞外スペースが20%もあり、それもどうやら伝達に関わっているなど、いろんな最新の脳のメカニズムがわかりやすく紹介されている。

「うつは炎症で起きる」というかなり面白かった本と知識として連動する部分もあった。

それは、脳は髄膜にリンパ管(脊髄リンパ)があり、それを通り首のリンパ管に合流して代謝老廃物を排泄するということ。

特別な排泄機構があるわけではなく、全身と同じリンパ系を使った排泄メカニズムであり、免疫細胞の輸送も普通に行われる。

つまり、全身で炎症が起きたらサイトカインが脳にも運ばれ、脳でも炎症が起き、鬱になる。

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2022年08月30日

Posted by ブクログ

こころや感情はどうやってうまれるのか?という可能性を感じた
ニューロンやシナプスだけではなく、それらを取り巻く細胞外領域やグリア細胞などどの相互作用によって、結果感情が生まれるのではないか

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2022年05月14日

Posted by ブクログ

医学部で習った知識からアップデートされていなくて、この本を読んで初めて知った。
細胞外スペースが寝ている時には広くなり起きている時は狭くなる。
実は、情報伝達はニューロンのシナプスだけでなく、このスペースなど細胞外の領域をホルモンみたいに伝達する機構も備えている。
この細胞外スペースが狭くなるとなんらかの情報が伝達されやすく、広くなると脳の老廃物が能動的に排泄される。
こういったニューロン以外の機能は主にアストロサイトなどのグリア細胞が担っているようで、このアストロサイトもマウスよりも人では複雑性が高く、アインシュタインはある領域で発現量が増えているとのこと。
今までニューロンがすべてだと思っていたけれど、アナログ的な作用も重要視され始めており、さらにAIと人の機能はかけ離れていくような印象になった。

あんまり詳しくは理解できていないけれど、

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2022年01月17日

Posted by ブクログ

これまでニューロンの働きや機能にフォカスされてきた脳科学だが、実はあまり注目されてこなかった脳の細胞外スペースやアストロサイト等が、こころのはたらきや知性の進化に関与しているのではないかということが、最新研究で分かってきたという、とても興味深い内容。さらに研究が進むみ、こころとは、人間らしさの根源である知性とは、何なのかが解明されていくことに少しづつ近づいているということが感じられる1冊。

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2021年08月16日

Posted by ブクログ

脳の基本構造や語句の説明など詳しく書かれていた点がまずよかったし、それに基づいて最新のグリア細胞周りの研究の動向が知れたのもよかった。ニューロンの研究が進む一方で、それ以外の部分はやっぱりブラックボックスだなと感じたし、まだまだ未開の分野だなという印象。

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2021年06月05日

Posted by ブクログ

ニューロンの仕組みや脳科学の歴史をおさらいしたところで、触れられることが少ないグリア細胞そして細胞外スペースの解説を行い、ニューロンとそれらの相互作用について考察する。細胞外スペースを拡散する神経修飾物質が気分などのモードに関係しているとかグリア細胞であるアストロサイトがシナプス伝達をの効率を変化させているなの興味深い話が満載、グリア細胞や細胞外スペースの作用を人工知能に組み入れられると面白いかも。

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2021年05月16日

Posted by ブクログ

脳の重層的な構造を暗示するかのようなタイトルに惹かれて読む。脳の謎を解き明かそうと脳が挑む、その営みの不思議さに謎は深まるばかり。
従来の脳科学が、ニューロンを主体とするネットワークとして取り組んできた研究に、脇役として重視されなかったグリア細胞などのニューロン以外の働きについて着目する。ニューロンによるシナプスでの情報伝達の働き以外に、広範囲に拡散する動きがあることを実験を通して明らかにする。
人間らしさや知性(知能とは違う)は、こうした仕組みに依拠すると推察している。分解すれば化学反応の連鎖に帰着する脳、そのダイナミックなシステムは驚異そのものである。本書で展開される論旨に追従していくには、一気に読み進めることが必要と感じた。

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2021年04月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

間質
 体の隙間に存在する網目構造と無色透明の体液
 人体最大の器官?

ニューロン(神経細胞)
 電気的活動をおこなう脳の神経細胞
 軸索=他の細胞への導線 他のニューロンの軸索とつなぐ数万個のシナプス
 
グリア細胞(神経膠細胞)
 アストロサイト(グリア細胞のひとつ)
  不活性状態 
  アクアポリン4で血管に接続 リンパ系システム=グリンファティック システム
  脳脊髄液と間液の交換
  活性化=目新しい環境でノルアドレナリン放出

頭の良い人
 体積は大きいが神経突起の密度が低く枝分かれ少ない
 無駄な接続少ない?
 脳の細胞群の半分はグリア細胞
 アインシュタインのグリア細胞は一般人の2倍

脳のバリア 血液脳関門
 アルコール、ニコチン、覚せい剤は通過
 免疫 グリア細胞(ミクログリア)の機能 
 脳脊髄液 リンパ液の代わりに老廃物伝達
 細胞内液 カリウムイオン多 ナトリウムイオン少 でアンバランス
  →膜興奮によりナトリウムイオンチャンネルが開き+になり、電位を伝達 
  シナプス前/後細胞でで電位から100種以上の化学物質で伝達 使い分けは不明
  受容体 活性化させる作動薬と抑制する阻害薬 
  
全身麻酔薬
 どうして効くのかわかっていない
 体内の水自体の動きは「標識」なしでは可視化できない

細胞外電場(ワイヤレス伝達)
 シナプス伝達以外でのアナログ伝達?
 電場がニューロンの感受性に影響 10Hzで最大
 人体1Hz以下では金属1000倍の誘電率 
 発電所や高圧伝送線の人体への影響?

生きているとは? 
 知性 答えのないことに答えを出そうとする営み
 知能 答えがあることへ答える能力
脳のすべての要素が相互作用

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2021年03月01日

Posted by ブクログ

脳の神秘はニューロン・ネットワークの中にあると思っていたが、それだけではないことが分かってきた。ニューロン・ネットワークを電子素子で構成して脳を実現するというプロジェクトがあると以前聞いたが、それだけではいけないことが分かった。ニューロン以外にも様々な要素が分かってきた。細胞外スペース、神経修飾物質、拡散性伝達、脳脊髄液、細胞間質液、細胞外電場、アストロサイト、などなど。

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2021年01月01日

Posted by ブクログ

脳科学(脳研究)の
三本柱は  ①障害的な記述
      ②電気的な測定
      ③顕微鏡技術
脳の病気も難しく 病理像
         臨床像
を見ていくが、
しばしばマテリアルな病理像がハッキリしないから、臨床像が優先される
脳を司る脳と題されているのは
脳研究を進める上で
ニューロン中心主義から
グリア細胞(アストロサイト)を含めた
生体組織的なホーリズム的な観点から脳活動を見るべきだと?!

言わんとすることは分からんでもないが
「こころのはたらき」となると
意識のハードプロブレムについても
なにか考察が欲しかった

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2024年06月24日

Posted by ブクログ

脳科学の新しい知見をわかりやすく紹介する本.細胞間の隙間やグリア細胞の機能を特に説明している.ただ解釈には若干の疑問点もある.まだ不明な点も多い脳の働きに迫る本として興味深い.

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2023年10月02日

Posted by ブクログ

これまで、ニューロンに着目した書籍は何冊も読んだが、ニューロン以外の脳内の細胞に着目したものは読んだことが無く、新しい知識となった。
具体的には、グリア細胞や間質液などに着目したものである。
ニューロンによる伝達はデジタル回路に近く、グリア細胞の一種であるアストロサイトによる伝達はアナログに近いイメージを持った。デジタル、アナログを併用しているというところに面白みを感じる。

脳科学の本を読むのは、なるべく楽して頭を良くしたいという短絡的な希望があるのだが、そういう意味ではあまり参考にならなかった。
具体的にはこうするとグリア細胞が増えるとかそういうことは記載されていないので。

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2021年02月07日

Posted by ブクログ

ノルアドレナリン、アドレナリン、ドーパミン、セロトニンの関係がよくわかった。
セロトニンを増やす方法として、定期的なリズム刺激というのは、役に立つ情報だし、そこここのライフハックでも聞く話で納得。

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2021年01月05日

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