【感想・ネタバレ】現代民主主義 思想と歴史のレビュー

あらすじ

日本では民主主義(デモクラシー)の使徒とみなされるルソーが、欧米では全体主義の思想家とみなされるのはなぜか。なぜ、民主主義はナポレオンやヒトラーのような独裁を生み出してしまうのか。民主主義は何に敗北してきたのか。そもそも民主主義とはいったい何なのか――。
本書は、民主主義、そして民主主義の双子ともいうべきナショナリズムをめぐる思想がどのように生まれ、変容してきたのか、原点であるフランス革命の基盤となったルソー、シィエスの思想にさかのぼり、トクヴィルやJ・S・ミルによる自由主義者からの民主主義への反論、世界大戦期ドイツのヴェーバーとカール・シュミットの思想、さらに全体主義批判を踏まえた冷戦期のアレント、ハーバーマスを経て冷戦終結後の現在に至るまで、思想家たちが生きた時代的背景とともに、一気呵成に描き出す。
民主主義とはなにか、この根源的な問いの答えは、幾多の血を流しながら民主主義が歩んできた歴史のうちにこそ見いだされる。著者渾身の民主主義思想史!!


【本書の内容】

はじめに

序章 民主主義のパラドクス

第1章 近代民主主義とナショナリズムの誕生
第1節 フランス革命とルソー、シィエスの思想
第2節 ドイツ・ナショナリズムとフィヒテの思想

第2章 自由主義者の民主主義批判とナショナリズムの発展
第1節 民主主義革命とトクヴィル、ミルの思想
第2節 ナショナリズムの統一運動と民族自決権の思想

第3章 民主主義観の転換とナショナリズムの暴走
第1節 第二帝政期ドイツとヴェーバーの思想
第2節 ワイマール期ドイツとカール・シュミットの思想
第3節 民族自決権の適用とその帰結

第4章 民主主義の再検討とナショナリズムの封じ込め
第1節 全体主義批判と民主主義論の再構築
第2節 民族自決権の受容と回帰

結び 冷戦終結後の民主主義とナショナリズム
あとがき

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Posted by ブクログ

「民主主義とナショナリズムの相互作用という観点から、フランス革命以来の現代民主主義の思想を統一的に把握し、欧州ナショナリズムの歴史の中で、現在見られる様々な現象を理解しようとする試み」と「はじめに」にあるように、近代民主主義論の先駆者であるルソーの議論や「国民」を政治の舞台の中心に置いたシィエスの議論から出発しつつ、民主主義の思想や運動がナショナリズムのそれとどのように結びつき、現実の制度や秩序に影響を及ぼしてきたかを総合的に叙述している。ただし著者の問題意識は、民主主義とナショナリズムの相互作用からなぜ強力な指導者を待望する民主主義論が誕生するのか、というところにあり、そのためヴェーバーの指導者民主政論やC・シュミットの民主主義論の分析に特に力点が置かれているように思われる。それは翻って、現代社会で「ポピュリズム」という概念によって把握されている諸事象――ただし著者はポピュリズム概念を使用しないことを明言している――の根源がどこにあるのか、という問題に対する著者なりの把握を示すことにつながっている。「「指導者」や「決断」の概念が、ドイツ・ナショナリズムの中心的経験、特に1870年の戦勝体験や1919年の敗戦・革命体験に由来することを知るならば、新型ナショナリズムの感染症が突然現れて重症化するのを予防できるのではないかと期待している」(p. 286)という一節は、2020年以来の社会情勢と重ね合わせたレトリックという意味でも、また著者の立場を示す一節という意味でも興味深い。

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2022年01月03日

Posted by ブクログ

フランス革命前のルソーから(カエサルにも触れつつ)現代日本までの民主主義あるいはナショナリズムの考察.初心者にも分かりやすくとの主旨だがかなり読みにくかったが内容は面白い.特にワイマール憲法からナチスの独裁に至るあたりが詳しく,民主主義の旗に隠れたナショナリズムに歴史上のいろんな角度から切り込んでいる.
そして今日本の「強力なリーダーシップ」「決められない政治」という政治改革の標語風潮に警鐘を鳴らしている.

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2021年04月04日

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